【R18】利用される日々は終わりにします【完結】

迷い人

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25.記憶　03

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「早く、今日の予定を言え！！」

　不機嫌が顔に張り付いていると言った表情のまま、豪華な朝食を食べるなよ。

「食べ物に謝れ」

　あぁ、つい口に出てしまった。

「はぁ？」

「いえ、すみません……。　今日は何時も通り、午後から貴族との面会を予定しております。　今日面会の貴族の調査書はコチラになります」

　書類の束をテーブルの上にそっと置く。

「いつも通り？」

「……えっと、ぼけたのですか？」

「オマエじゃあるまい、ぼけるか。　いつも、俺は午前中何をしていた？」

「やっぱりぼけていますよね？　貴族達に指示を出すための調査を行うと言っていた事をお忘れですか？」

「……いや、忘れて等……あぁ、そうだ、覚えている……」

　不機嫌そうに眉間を寄せて、イライラとした様子で足を揺らせば、シグルド様を見張るためにいるはずの侍女が隣室へと逃げだした。　彼を見張るために長年仕えている侍女や護衛騎士が怯え、そして動きがぎこちない。

　彼等の様子がおかしくなったのも1年前か……以前はもっと高圧的でしたよねぇ？　今は、そう、まるでケガを負っているかのように……いや、ケガをしているのか……鋼の鎧に穴があいている……。

「それで、昼食はどうなさいます？　体調を崩された日から、お部屋で召し上がっておいでのようですが」

「今更なぜそんな事を聞く」

「は、い？　いえ、ここ3か月ほどは図書館に向かわれる日は、昼食は必要ないとおっしゃっていましたから」

「そう、だったか？」

　イライラとした様子で顔を歪め、頭を押さえているシグルド。

「そうですよ。　それより、未だ体調が戻らないなら医師を呼びますが？」

「あぁ、そうだ……奴等の顔を見ながら食う飯は不味いから……避けていたんだろう」

「気の持ちようって奴でしょう。　以前のように薬がもられている訳でもないんでしょう？」

「奴等は薬をもる罪を、理解していないらしいぞ」

　聞こえるように言いながら、スープの入っている器を侍女に投げつければ、真新しい制服がスープで変色した。

「おや、なんだい、また彼等は懲りずに薬を飲ませようとしたのかい？」

「あぁ……」

　まぁ1日中、殺気立たれては、そうしたくなる気持ちもわかるけど、しちゃだめだよね。　一歩手前でとどまらないとだ。

「馬鹿な人達だなぁ～。　ソレにしても君は相変わらず馬鹿力だね。　食器で鎧を貫通させるなんて」

　侍女達が着ている制服の予備はあっても、鎧の予備はないのだろう。　フォークやナイフで穴が開いている。

「気晴らしでもしてきてはどうだい？　行きつけの良い店があるんだろう？」

「いや」

「そうなのかい？」

　と、これ見よがしに聞いて見るが、シグルド殿下がどこかで食事をしていたと言う情報はない。

「良かったら、女性に人気の良い店を教える……ぇ？　どうしたんだい？」

　少しばかり命がけでシグルド殿下をカラカオウとしただけなのに、傷ついたかのような表情をされたから驚き、それ以上続けられなかった。

「いや、どうかしたのか？」

「凄い顔になっているよ」

「余計なお世話だ」

「そうではなく……いや、いいよ。　うん、とりあえず午前中は自由だ好きなように使うといい。　私は用事があるから失礼するよ。　また午後に会おう」

　結局、機嫌が直る様子の無かったシグルドの側から、クロードはいそいそと離れていく。

　痴情のもつれで恋した女性をウッカリ殺してしまい、そのストレスで記憶を消してしまったとか……あり得る……。　調べなければ！！

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