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14.秘密のお茶会 02

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 本棚と、本棚の隙間、広い壁にかけられた壁にある大きな大樹の絵は、扉そのものとなっていた。 ソレを開いて壁の裏側に出る。 誰の目にも届かない壁の裏側は、金銀装飾がなされた壁とは違い、粗雑な灰色の壁に、蔓が這い、地面には雑草が生い茂っている。

 ふと、蔦の根本を掘れば芋でも取れるのでは? なんて、考えてしまったけれど……今は本能のままに動くのはやめておこう。

 カワイイって思われたいし……。

「こんな場所を行くのか?」

 雑草が生い茂り、道とは思えませんよね? 小動物とかもフラフラしていますし……今日は目につきませんけど。

 困惑と不安? そうではなく不満? そんな表情のシグルド殿下に私は微笑みを向ける。

「そうですよ。 冒険のようで楽しくありませんか? それとも、殿下はこういうのは……お嫌いですか?」

 なら、無理強いは出来ないし。

「……どうだろう? 初めての体験だからな」

 シグルド殿下の視線は閉鎖された通路を巡り、そして私に笑いかける。

「そうだな、嫌いじゃないかもしれない」

「そう、良かったわ」

 私達は草をかき分け、先へと進む。 進んだ先にあるのは、扉となっている絵と同じ景色。 大樹と、大樹を眺める色あせたガゼボ。 人が出入りしている様子が無いにも関わらず、そこは手入れが行われているかのように綺麗に整備され、壁を這う薔薇の蔓は色とりどりの花を咲かせていた。

 まぁ……事前に手入れしたんですけどね。

 魔法万歳。

「さぁ、軽食にしましょう」

 他愛無い会話、大量のシャキシャキ野菜とチーズのサンドイッチ。 あと、殿下のためにローストビーフと呼ばれる調理法で作られた肉と、ベリーを使ったソース。 温かなお茶、ドライフルーツのパウンドケーキ。

「これだけあれば、昼飯の代わりになる。 少し、仕事を離れてユックリできる」

 そう微笑まれた。

「お、お茶のお代わりはいかがですか?」

 噛んだ……。

「どうした?」

「いえ、殿下の個人的な時間を頂けるのが、嬉しいと言いますか……」

 照れ照れしてしまう。

「こんなことが嬉しいものなのか?」

「えぇ、まぁ……」

「……ぁ、でも、なぁ……余り何時もと違わないだろう?」

 いや、違うから!! って、言うか、違わせたいから!! なんて思うが、口を開けば国の繁栄のために、今出来る事は? どう国が変わってきたかとか、そんな感じな訳で……そうだね、何時もと違いませんね。 と、私は心の中で涙を流すのだった。

「そういえば、第二皇妃の生家を知っているか?」

「はい、ゼーマン公爵家ですよね?」

「あぁ、そうだ。 先日、公爵がやって来て、俺の計画を応援したいと言ってきたんだ」

「それは、素晴らしいですわ!!」

 第二皇妃ラブな皇帝陛下は、政治的婚姻を結んだ第一皇妃ルイーズ様が生んだ子であるシグルド殿下が成果を上げる事を良くは思っていない。 むしろ貴族からの支持を高めていくシグルド殿下を疎ましく思い邪魔をしているぐらいだ。

 ただ陛下の邪魔があっても、十分な成果を出した今となっては貴族達は、シグルド殿下を望んでいる者が多く、微妙なバランス関係になっている。 女性にモテようと、モテまいと、殿下は少し鍛えた方が良いのかもしれませんね……身を守るために。

 ではなく……。

 敵対関係と言って良い第二皇妃の生家ゼーマン公爵家がシグルド殿下の応援をすれば、国全体が改革へと大きく動き出すだろう。 だから私は、訪れるだろうシグルド殿下の成功を喜んだ。

「あぁ、資材に金、人材も提供してくれると約束を取り付けた。 きっと、今まで以上に忙しくなるはずだ。 これからも今まで通り変わる事なく俺を助けてくれ、俺の参謀殿」

「はい、お任せください」

 私は、恭しく頭を下げる。



 日々の積み重ね。
 それは、神の前の誓約よりも余程意味がある。
 シグルド殿下もきっとそう思って下さっているはずだと……私は信じている。
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