15 / 75
02
14.秘密のお茶会 02
しおりを挟む
本棚と、本棚の隙間、広い壁にかけられた壁にある大きな大樹の絵は、扉そのものとなっていた。 ソレを開いて壁の裏側に出る。 誰の目にも届かない壁の裏側は、金銀装飾がなされた壁とは違い、粗雑な灰色の壁に、蔓が這い、地面には雑草が生い茂っている。
ふと、蔦の根本を掘れば芋でも取れるのでは? なんて、考えてしまったけれど……今は本能のままに動くのはやめておこう。
カワイイって思われたいし……。
「こんな場所を行くのか?」
雑草が生い茂り、道とは思えませんよね? 小動物とかもフラフラしていますし……今日は目につきませんけど。
困惑と不安? そうではなく不満? そんな表情のシグルド殿下に私は微笑みを向ける。
「そうですよ。 冒険のようで楽しくありませんか? それとも、殿下はこういうのは……お嫌いですか?」
なら、無理強いは出来ないし。
「……どうだろう? 初めての体験だからな」
シグルド殿下の視線は閉鎖された通路を巡り、そして私に笑いかける。
「そうだな、嫌いじゃないかもしれない」
「そう、良かったわ」
私達は草をかき分け、先へと進む。 進んだ先にあるのは、扉となっている絵と同じ景色。 大樹と、大樹を眺める色あせたガゼボ。 人が出入りしている様子が無いにも関わらず、そこは手入れが行われているかのように綺麗に整備され、壁を這う薔薇の蔓は色とりどりの花を咲かせていた。
まぁ……事前に手入れしたんですけどね。
魔法万歳。
「さぁ、軽食にしましょう」
他愛無い会話、大量のシャキシャキ野菜とチーズのサンドイッチ。 あと、殿下のためにローストビーフと呼ばれる調理法で作られた肉と、ベリーを使ったソース。 温かなお茶、ドライフルーツのパウンドケーキ。
「これだけあれば、昼飯の代わりになる。 少し、仕事を離れてユックリできる」
そう微笑まれた。
「お、お茶のお代わりはいかがですか?」
噛んだ……。
「どうした?」
「いえ、殿下の個人的な時間を頂けるのが、嬉しいと言いますか……」
照れ照れしてしまう。
「こんなことが嬉しいものなのか?」
「えぇ、まぁ……」
「……ぁ、でも、なぁ……余り何時もと違わないだろう?」
いや、違うから!! って、言うか、違わせたいから!! なんて思うが、口を開けば国の繁栄のために、今出来る事は? どう国が変わってきたかとか、そんな感じな訳で……そうだね、何時もと違いませんね。 と、私は心の中で涙を流すのだった。
「そういえば、第二皇妃の生家を知っているか?」
「はい、ゼーマン公爵家ですよね?」
「あぁ、そうだ。 先日、公爵がやって来て、俺の計画を応援したいと言ってきたんだ」
「それは、素晴らしいですわ!!」
第二皇妃ラブな皇帝陛下は、政治的婚姻を結んだ第一皇妃ルイーズ様が生んだ子であるシグルド殿下が成果を上げる事を良くは思っていない。 むしろ貴族からの支持を高めていくシグルド殿下を疎ましく思い邪魔をしているぐらいだ。
ただ陛下の邪魔があっても、十分な成果を出した今となっては貴族達は、シグルド殿下を望んでいる者が多く、微妙なバランス関係になっている。 女性にモテようと、モテまいと、殿下は少し鍛えた方が良いのかもしれませんね……身を守るために。
ではなく……。
敵対関係と言って良い第二皇妃の生家ゼーマン公爵家がシグルド殿下の応援をすれば、国全体が改革へと大きく動き出すだろう。 だから私は、訪れるだろうシグルド殿下の成功を喜んだ。
「あぁ、資材に金、人材も提供してくれると約束を取り付けた。 きっと、今まで以上に忙しくなるはずだ。 これからも今まで通り変わる事なく俺を助けてくれ、俺の参謀殿」
「はい、お任せください」
私は、恭しく頭を下げる。
日々の積み重ね。
それは、神の前の誓約よりも余程意味がある。
シグルド殿下もきっとそう思って下さっているはずだと……私は信じている。
ふと、蔦の根本を掘れば芋でも取れるのでは? なんて、考えてしまったけれど……今は本能のままに動くのはやめておこう。
カワイイって思われたいし……。
「こんな場所を行くのか?」
雑草が生い茂り、道とは思えませんよね? 小動物とかもフラフラしていますし……今日は目につきませんけど。
困惑と不安? そうではなく不満? そんな表情のシグルド殿下に私は微笑みを向ける。
「そうですよ。 冒険のようで楽しくありませんか? それとも、殿下はこういうのは……お嫌いですか?」
なら、無理強いは出来ないし。
「……どうだろう? 初めての体験だからな」
シグルド殿下の視線は閉鎖された通路を巡り、そして私に笑いかける。
「そうだな、嫌いじゃないかもしれない」
「そう、良かったわ」
私達は草をかき分け、先へと進む。 進んだ先にあるのは、扉となっている絵と同じ景色。 大樹と、大樹を眺める色あせたガゼボ。 人が出入りしている様子が無いにも関わらず、そこは手入れが行われているかのように綺麗に整備され、壁を這う薔薇の蔓は色とりどりの花を咲かせていた。
まぁ……事前に手入れしたんですけどね。
魔法万歳。
「さぁ、軽食にしましょう」
他愛無い会話、大量のシャキシャキ野菜とチーズのサンドイッチ。 あと、殿下のためにローストビーフと呼ばれる調理法で作られた肉と、ベリーを使ったソース。 温かなお茶、ドライフルーツのパウンドケーキ。
「これだけあれば、昼飯の代わりになる。 少し、仕事を離れてユックリできる」
そう微笑まれた。
「お、お茶のお代わりはいかがですか?」
噛んだ……。
「どうした?」
「いえ、殿下の個人的な時間を頂けるのが、嬉しいと言いますか……」
照れ照れしてしまう。
「こんなことが嬉しいものなのか?」
「えぇ、まぁ……」
「……ぁ、でも、なぁ……余り何時もと違わないだろう?」
いや、違うから!! って、言うか、違わせたいから!! なんて思うが、口を開けば国の繁栄のために、今出来る事は? どう国が変わってきたかとか、そんな感じな訳で……そうだね、何時もと違いませんね。 と、私は心の中で涙を流すのだった。
「そういえば、第二皇妃の生家を知っているか?」
「はい、ゼーマン公爵家ですよね?」
「あぁ、そうだ。 先日、公爵がやって来て、俺の計画を応援したいと言ってきたんだ」
「それは、素晴らしいですわ!!」
第二皇妃ラブな皇帝陛下は、政治的婚姻を結んだ第一皇妃ルイーズ様が生んだ子であるシグルド殿下が成果を上げる事を良くは思っていない。 むしろ貴族からの支持を高めていくシグルド殿下を疎ましく思い邪魔をしているぐらいだ。
ただ陛下の邪魔があっても、十分な成果を出した今となっては貴族達は、シグルド殿下を望んでいる者が多く、微妙なバランス関係になっている。 女性にモテようと、モテまいと、殿下は少し鍛えた方が良いのかもしれませんね……身を守るために。
ではなく……。
敵対関係と言って良い第二皇妃の生家ゼーマン公爵家がシグルド殿下の応援をすれば、国全体が改革へと大きく動き出すだろう。 だから私は、訪れるだろうシグルド殿下の成功を喜んだ。
「あぁ、資材に金、人材も提供してくれると約束を取り付けた。 きっと、今まで以上に忙しくなるはずだ。 これからも今まで通り変わる事なく俺を助けてくれ、俺の参謀殿」
「はい、お任せください」
私は、恭しく頭を下げる。
日々の積み重ね。
それは、神の前の誓約よりも余程意味がある。
シグルド殿下もきっとそう思って下さっているはずだと……私は信じている。
0
お気に入りに追加
457
あなたにおすすめの小説
人形な美貌の王女様はイケメン騎士団長の花嫁になりたい
青空一夏
恋愛
美貌の王女は騎士団長のハミルトンにずっと恋をしていた。
ところが、父王から60歳を超える皇帝のもとに嫁がされた。
嫁がなければ戦争になると言われたミレはハミルトンに帰ってきたら妻にしてほしいと頼むのだった。
王女がハミルトンのところにもどるためにたてた作戦とは‥‥
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
伯爵は年下の妻に振り回される 記憶喪失の奥様は今日も元気に旦那様の心を抉る
新高
恋愛
※第15回恋愛小説大賞で奨励賞をいただきました!ありがとうございます!
※※2023/10/16書籍化しますーー!!!!!応援してくださったみなさま、ありがとうございます!!
契約結婚三年目の若き伯爵夫人であるフェリシアはある日記憶喪失となってしまう。失った記憶はちょうどこの三年分。記憶は失ったものの、性格は逆に明るく快活ーーぶっちゃけ大雑把になり、軽率に契約結婚相手の伯爵の心を抉りつつ、流石に申し訳ないとお詫びの品を探し出せばそれがとんだ騒ぎとなり、結果的に契約が取れて仲睦まじい夫婦となるまでの、そんな二人のドタバタ劇。
※本編完結しました。コネタを随時更新していきます。
※R要素の話には「※」マークを付けています。
※勢いとテンション高めのコメディーなのでふわっとした感じで読んでいただけたら嬉しいです。
※他サイト様でも公開しています
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた
狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている
いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった
そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた
しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた
当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった
この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる