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10.期待をしていなかったと言えばウソになる

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 許可証を貰った私は、宮殿図書館の入場許可証を首から下げ図書館をフラフラと彷徨いながら、読みたい本や資料を探しに回る。

 宮殿図書館は、精神の図書館ほど広くない。 とは言え、膨大な書物や資料を抱えるソコは広く、何より背の低い私にとっては置ければよいとばかりに高い所に並べられた本は、なかなか強敵だった。

 手が届かない……。

 無駄だと分かっていても1度はチャレンジしてみる。

 背伸びして、
 ジャンプして、

 うん、諦めた……脚立を持ち歩こう。 でも、出来るなら付き人の立ち入りを許して欲しい等と思ってしまう。 本を探すだけで時間が過ぎていく……。

 これなら、精神の図書館の方が楽なのでは? なんて思ってきて……帰ろう……。 と、私は脚立を抱きしめながらポテポテと歩く。

「なんだか、切なくなっていくのは気のせいかしら? 脚立にタイヤをつけられないかしら?」

 俯きながら人の殆どいない通路を歩いていれば、両手で抱える脚立の重さがふいに消えた。

「脚立が動いてしまっては、脚立として使えないんじゃないか?」

 ぇ?

 聞き覚えのある声に顔を上げて声の主を見上げれば、シグルド殿下で……、私はまた単純にも運命を感じてしまう訳で……。

 だ、ダメよ。 余り調子の良いことを考えてショックを受けるのは私なの。 それに、良く考えて!! ここで、調子に乗ったりしては父様のようじゃない!!

「そ、そう……ですねっ……」

 思わず、声が裏返ってしまう。

「み、みみみっ、道を塞いでしまい申し訳ありませんでした」

 そうして逃げるように去って行こうとしたが、掴まれた脚立は離してもらえず、むしろ持ち上げられて、私はじたばたと足掻く訳だ。 足掻いて拒否して、それでも離してもらえないと分かり、初めて私は振り返る。

「な、なんですか?」

 数日前には随分と素っ気ない言葉をかけてきた相手、私は虐められないかとビクビクしてしまう。

「宮殿で子供を見るのは珍しいから、その、こんなところで何をしているのかと思って」

「本を探しているんですけど?」

 なぜ、この人は当たり前の事を聞くのだろう??

「えっと、殿下は本を読みに来ている訳ではないのですか?」

 口元を隠すように、視線が逸らされた。

「俺は……その、隠れている?」

 何故、聞く……。

「知識はあった方が良いと、その、思うのですが……」

 神殿で見せつけられた無知は酷かった。 彼を思う皇妃の仲介だったから良かったものの、訳も分からず神殿で誓約を交わしてしまっては、命を失う事だってあるのだから、もう少し知識を持った方が良いのでは? と、マジで心配してしまう訳だ。

「ここの本は退屈なものが多い」

「本に慣れない方にとってはそうかもしれませんね。 まずは本に馴染むため、興味があるものから手を出すのが良いと思いますよ。 何か、ご興味がある事は?」

 問えば、少しだけ戸惑っており私は首を傾げる。

「どうかなされたのですか?」

「興味と言うか、疑問はある。 本はその答えをくれるだろうか?」

「そうですね……とりあえず、私に聞いて見ると言うのはどうですか?」

 言えば顔をしかめた。
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