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08.父と私と、精神の図書館 01

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 誓約の翌日。

 初めての夜間外出と、想定とは違う結果に終わった誓約。 あと色々と騒々しい出来事で疲れきっていた私は寝坊をした。

 起きたのは昼食の少し前。

 起こされた。

 扉の向こうでそわそわと落ち着きの無い声色で、私がまだ起きないのか? と騒いでいる父の声と、鉄壁のガードで部屋前を封鎖する青年のやり取りで私は目を覚ますことになった。

「僕のおチビちゃんは、まだ目を覚まさないのかい?」

「お疲れですので、お引き取り下さい」

「だが、僕は色々と相談を受けていてね」

「人生躓きだらけの若様が、何方の相談をお受けするのですか?」

「彼等は今日の午後には返事が欲しいと言っていてね、ソレに応える事が出来ないようでは、僕は彼等を失望させ……幼い頃のように……女に泣きつく事しかできない無能者と言われてしまうんだよぉおおおおおおお。 僕はそう言われるのが、とても嫌だし、情けなくて、泣きたくなってしまうんだ」

 床に四つん這いになって落ち込む父が脳内で想像できた。

 父が私に何をさせようとしているかと言うと、精神の図書館でお悩み解決をしてほしいと言っているのだ。 知識のひけらかしは、面倒な人を呼び込むと言う事は理解できないらしい。

「お嬢様に面倒をおかけするぐらいなら、その正しい評価を受け入れてはいかがですか?」

「僕の看病を受け、目を覚ますと同時に結婚して欲しいとプロポーズするような可愛らしい子だったのに。 どうして、そんな冷たい子になってしまったんだい」

「顔だけの男との関わりを黒歴史にしないのは、奥様のような豪胆で実力のある方だけですよ」

「ランバール……流石にソレでは父様が可哀そうだわ」

「マ~イ、ハッニー!!」

 私に抱き着いてこようとする父を片手で顔面を掴むように封じたランバールは、私をその背に隠した。

 使用人にこんな扱いを受けても怒らないところは父の良いところだと思う……。 そんな事を考えながら、私は遠くを眺めた。

「お嬢様こそ甘やかしすぎです。 やはり幼い子供でも顔に騙されてしまうのでしょうか? お嬢様には、もっと男を見る目を養って頂きたいと言うのに、こんな顔だけ男に好意的な発言を行うとは……」

「いえ、ランバール。 一応、ソレは私の父様よ」

 ランバールは、皇妃ルイーズ様に生贄として持ち込まれたオークランド国の民で、肉体的に優れている。 肉体的に偏っている生物なせいか、少しばかり情緒や繊細さにかける。

「う~ん、とりあえずランヴぁ―ルは言い過ぎ。 あと、父様は鬱陶し過ぎ。 安眠妨害です」

「……でも……ねぇ。 昔僕を馬鹿にしていた彼等の悩みをズバッと解決して、見直されたいと思う訳なんだよねぇ」

 照れ照れ。

私の父は、自分の発言の情けなさを理解しているのだろうか?

「お嬢様の貴重な時間を、旦那様の自己満足のために浪費させないで下さい」

 どこまでも厳しい(?)ランバールだった。
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