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4章 化け物聖女
24.飛んで火にいる夏の虫
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結局、聖女と言う存在に代理を立てる事は無かった。 既にアリアメアによって民は裏切られている。 まぁ、それは公爵と陛下が悪いのだけど……。
同じように代理聖女を立て、万が一にも直接救いを代理聖女に申し出てくる者が現れれば神官魔法が使えたとしても魔力そのものの供給が出来る訳ではないのでバレかねない。 公爵が言ったように誘拐しようと言う者も出るかもしれない。
偽物と分かれば、三度目の聖女を民は信用するだろうか? と、言う事になった。
だからと言って、オープンの場は控えたいと言うのは、統一見解。 今の私は公爵の庇護下にあるけれど、王家の庇護下にはない。
態度が悪かったと言えばその通りだけれど、化け物と言われ頭を下げながら道具としてお使い下さいと言う気に等なれるはずもない。
結果として、
その力を王家に捧げぬ不心得者。
王子を、未来の王を悩ませる問題児。
あのような化け物が聖女であるはずがない。
救いではなく民を惑わそうとしている。
ならば化け物を退治しても何が悪いと言う者も既にいるらしく、公爵が貴族の元に個人的に出向いて話し合いをしている……と言う事だった。
『だから、守れるところにいて下さいね』
そう公爵は言うのだ。
とは言え、コレはなんだか違うと思う。
現在、私達はミカゲ先生と公爵の3人でご飯を食べに行った帰り、馬車で公爵家に帰ろうとしたところで襲われた。 で、今、私は公爵の背中にいる。 こう両腕の力で首にしがみつきブンブン振り回されている。
よくこの状況で戦える者だなと感心するが、
「私を背中用の防具として使って暗殺をしようとお考えですね!!」
「そんな事しませんから!! 大人しく黙ってつかまっていてください!!」
いや、ブンブンされるのが楽しくてちょっとテンションが上がる。 あと、一応防御魔法は使っていると言うか、やっぱり魔法は苦手で、防御魔法で作った風の盾のはずが、人間がめり込んで動けなくなっていた。
どういうこと?
「この状況で何を遊んでいるんですか!!」
そういうのはミカゲ先生。
公爵はそこそこ強いらしく、5人ほどの暴漢を鞘でぶん殴っている。 骨までいっている音がするがきっと気にしたら負け。 ミカゲ先生は部厚い書籍を武器に戦っていた。 緊迫感なくて、私もブンブン振り回されるのが少し楽しくて、思わずきゃっきゃしながら振り回されていたら。 最後はちょっと強くて手のかかる相手だったらしく……。
「よ~し、高いたか~い!!」
なんて、凄い勢いで空中に放り投げられた。
「うぉい!!」
ビックリしたが、精霊ギルドから調査用としてついてきていた精霊が空中で私を受け止めてくれたから、そのまま空中で事が収まる事を見守った。
「エリアルさまぁ~」
公爵に呼ばれれば、やっぱり何故か、様と呼ばれるのは腹が立つから、私は精霊の手から離れてフォローも無く落下した。 慌てた顔で公爵が受け止めれば、かなりの衝撃だったのか蹲る。
「ちょ、マジ、心臓に悪いからやめて」
「私が死ぬわけないでしょう。 父様がいるんだから」
「うん、そうだね」
ヘラリと血まみれで笑うのがちょっと怖い。 一応、血は返り血でケガはない。
「親子でイチャイチャしているのはほどほどに手伝って頂けませんか?」
冷ややかな視線は、公爵へとむけられた。
「どうしたの先生!」
「ここの3人がやり過ぎて9割死にそうだから6割ぐらいに抑えてもらえませんか?」
それは……全回復させずに3割回復に抑えろと?
「加減が難しそう」
何しろ、回復系の力を使えば、100の回復を300ぐらい回復しちゃうほど、魔法を使うの下手だから。
「えぇ、知っていますよ。 だから良い練習になるかなと思いまして」
「動かなければ、もっと上手に切る事が出来ます。 できるようになるまで練習すれば良いじゃないですか」
正直、引いた。 怖い人達だと思った。 多分きっと震えていたと思う……。
「あぁ、申し訳ありません。 血がこんなに流れては怖いですよね。 なるべく切らずに折るように気を付けたのですが」
公爵が言えば、ミカゲ先生がフォローにならないフォローをする。
「ですが、血も慣れておいた方がいいでしょう。 王族とかかわると言う事は、それこそ汚れの中に身を置くと言う事だから」
「大丈夫、大丈夫ですよ。 私の聖女。 私が貴方を守ります。 だから、怯えないで……」
そうして公爵は、返り血に濡れながら私を抱きしめる。 怖いのは血? 襲ってきた人? それとも私を大切だと言う大人達? 私は、たぶん、初めて人を怖いと思った。 なぜ、彼等ばかりが怖いのかは分からないまま、私は……生きた人間を魔力制御訓練に使った。
なんだか、とても、疲れた……。
同じように代理聖女を立て、万が一にも直接救いを代理聖女に申し出てくる者が現れれば神官魔法が使えたとしても魔力そのものの供給が出来る訳ではないのでバレかねない。 公爵が言ったように誘拐しようと言う者も出るかもしれない。
偽物と分かれば、三度目の聖女を民は信用するだろうか? と、言う事になった。
だからと言って、オープンの場は控えたいと言うのは、統一見解。 今の私は公爵の庇護下にあるけれど、王家の庇護下にはない。
態度が悪かったと言えばその通りだけれど、化け物と言われ頭を下げながら道具としてお使い下さいと言う気に等なれるはずもない。
結果として、
その力を王家に捧げぬ不心得者。
王子を、未来の王を悩ませる問題児。
あのような化け物が聖女であるはずがない。
救いではなく民を惑わそうとしている。
ならば化け物を退治しても何が悪いと言う者も既にいるらしく、公爵が貴族の元に個人的に出向いて話し合いをしている……と言う事だった。
『だから、守れるところにいて下さいね』
そう公爵は言うのだ。
とは言え、コレはなんだか違うと思う。
現在、私達はミカゲ先生と公爵の3人でご飯を食べに行った帰り、馬車で公爵家に帰ろうとしたところで襲われた。 で、今、私は公爵の背中にいる。 こう両腕の力で首にしがみつきブンブン振り回されている。
よくこの状況で戦える者だなと感心するが、
「私を背中用の防具として使って暗殺をしようとお考えですね!!」
「そんな事しませんから!! 大人しく黙ってつかまっていてください!!」
いや、ブンブンされるのが楽しくてちょっとテンションが上がる。 あと、一応防御魔法は使っていると言うか、やっぱり魔法は苦手で、防御魔法で作った風の盾のはずが、人間がめり込んで動けなくなっていた。
どういうこと?
「この状況で何を遊んでいるんですか!!」
そういうのはミカゲ先生。
公爵はそこそこ強いらしく、5人ほどの暴漢を鞘でぶん殴っている。 骨までいっている音がするがきっと気にしたら負け。 ミカゲ先生は部厚い書籍を武器に戦っていた。 緊迫感なくて、私もブンブン振り回されるのが少し楽しくて、思わずきゃっきゃしながら振り回されていたら。 最後はちょっと強くて手のかかる相手だったらしく……。
「よ~し、高いたか~い!!」
なんて、凄い勢いで空中に放り投げられた。
「うぉい!!」
ビックリしたが、精霊ギルドから調査用としてついてきていた精霊が空中で私を受け止めてくれたから、そのまま空中で事が収まる事を見守った。
「エリアルさまぁ~」
公爵に呼ばれれば、やっぱり何故か、様と呼ばれるのは腹が立つから、私は精霊の手から離れてフォローも無く落下した。 慌てた顔で公爵が受け止めれば、かなりの衝撃だったのか蹲る。
「ちょ、マジ、心臓に悪いからやめて」
「私が死ぬわけないでしょう。 父様がいるんだから」
「うん、そうだね」
ヘラリと血まみれで笑うのがちょっと怖い。 一応、血は返り血でケガはない。
「親子でイチャイチャしているのはほどほどに手伝って頂けませんか?」
冷ややかな視線は、公爵へとむけられた。
「どうしたの先生!」
「ここの3人がやり過ぎて9割死にそうだから6割ぐらいに抑えてもらえませんか?」
それは……全回復させずに3割回復に抑えろと?
「加減が難しそう」
何しろ、回復系の力を使えば、100の回復を300ぐらい回復しちゃうほど、魔法を使うの下手だから。
「えぇ、知っていますよ。 だから良い練習になるかなと思いまして」
「動かなければ、もっと上手に切る事が出来ます。 できるようになるまで練習すれば良いじゃないですか」
正直、引いた。 怖い人達だと思った。 多分きっと震えていたと思う……。
「あぁ、申し訳ありません。 血がこんなに流れては怖いですよね。 なるべく切らずに折るように気を付けたのですが」
公爵が言えば、ミカゲ先生がフォローにならないフォローをする。
「ですが、血も慣れておいた方がいいでしょう。 王族とかかわると言う事は、それこそ汚れの中に身を置くと言う事だから」
「大丈夫、大丈夫ですよ。 私の聖女。 私が貴方を守ります。 だから、怯えないで……」
そうして公爵は、返り血に濡れながら私を抱きしめる。 怖いのは血? 襲ってきた人? それとも私を大切だと言う大人達? 私は、たぶん、初めて人を怖いと思った。 なぜ、彼等ばかりが怖いのかは分からないまま、私は……生きた人間を魔力制御訓練に使った。
なんだか、とても、疲れた……。
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