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3章 セイジョセキ
18.親子 08
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オルコット公爵と私、背後に控える魔法機関の3人の長は国王の眼前で、王子の罵倒を受け止め続ける。 私とすれば長い年月アリアメアと共にいる彼を、ロノスの付き合いで見ていた。
アリアメアが聖女だから!! で、与えられた教育から逃げていたように、彼もまた癇癪を起し教師達に怒鳴りつけ、時には暴力をふるい教育から逃げていた。
『お前、父上や母上に、今日の事を伝えたら分かっているんだろうな?』
脅迫ばかりが上手い、頭の弱い王子にどれほど怒鳴られてもショックを受けようがないと言うものだ。 だが、私が平気だからと言って、誰もが平気なわけではない。
「陛下……」
底冷えする声で怒鳴り続ける王子ではなく国王に向かい公爵が眼光激しく睨みつけ、言葉を続けた。
「この子も聖女ではない。 そういうなら構いません。 私はこの子と共に領地に戻るだけです。 さぁ、帰りましょうエリアル」
3人の魔法機関の長から、私の魔力量の報告を受けているだろう王は慌てた。
王妃としての見た目にこだわりたい気持ちは強いのは、天使か化け物かと問われ能力を問わず天使のような赤子の方をと答えた馬鹿だ。 見栄を張りたいのかなんなのか分からないが、だからと言ってそんなバカげた事で、国を救うことを放棄する者が王なら、3人の長がいうように王も王子も傀儡として存在するだけの方が良いだろう。
そう思えば、むかついた3人の長の企ても、真っ当な意見なのでは? と、思えるのだから不思議である。
「ま、待ってくれ!!」
必死になって国王は呼び止める。
「あなたっ!!」
王妃の悲鳴に似た叱責が続いた。
「まさか、本気で息子にアレと結婚しろと言うのではありませんよね?! アレではあまりにも王子が、わが子が不憫ですわ。 そもそも、聖女との婚姻は、王家に強い血を求める必要性があるからですわよね。 なら、別にその化け物ではなくとも、他国から魔力の強い姫君を迎えればよろしいのではありませんの?!」
「そうです。 父上、そもそも化け物に人の子が産めるとは思えません!!」
縋るような王子の声。
繰り返される化け物と言う言葉。 人としての姿を保ちながら化け物と言われる状況を作った。 魔力だけが必要なら、脱ぎたての外皮を使えばいいと、長達に言ったのだけれど、聖女は人の心を持つことが重要なのだと、ロノスのようなことを言っていた。
『ただ、術式に膨大な魔力を注げばよいと言う訳ではないのです』
『それは? どういうことなの?』
『私共は、この国の秘密を知っておりますが、それを語る資格はございません。 陛下の許可をいただいたのちに、儀式の間にお連れし、この国の真実をお話しましょう』
そう神官長が神妙そうに述べるだけだった。
顔の4分の1を隠し、4分の3に母の面影を見せつけ、なおかつ表情が十分に表せる程度を見せつけた。身体に関しては皮膚の6割程度を薄い魔力結晶で覆っている。 変に興味をもたれても面倒臭いから。
「違う、違うのだ……」
ぼそぼそと告げる国王の顔色は悪くぷるぷると震えていた。 だが、国王の声は余りにも小さくて、化け物と叫び続ける王子の声に遮られていた。
「そなたのような化け物が子を産み。 女としての役目を果たせるとは到底思えんな。 そもそも、そういう気がおきん!! 子供だと言っても、私の言っている意味ぐらい理解できるだろう? 自分は聖女ではなく化け物でした。 そう謝れば、今なら許してやる」
王子の怒鳴り声を遮る者はおらず、声は大きく、早口で、品性を失っていく。 それを見ていれば感情をあらわにするのもバカバカしい。 格下と思っている者が罵って来ても煩いとは思っても簡単に傷つくことは無い。
それこそ岩のように無表情に叫んでいる王子を見続ければ、王子の言葉が一瞬とまった。 じっと見つめてくる視線を、虚無のような目で見つめていれば……公爵が私の目を塞いだ。
「不躾ですよ。 謝罪を」
「はっ、岩を見て不躾と言われるとは思いもしなかった」
大笑いをし、周囲に笑え!! と、強制まで始めた。
「そのものに謝罪をするくらいなら、家畜に頭を下げる方がマシだ」
ずっと我慢をしていたが、この時思った……。 馬の口元に頭をもっていって髪を食わせてやろうと……。 良い考えだ。 きっと楽しいに違いない。
なんて考えるほどに私の瞳は虚無となる。
「私は聖女としての人生を望んでいる訳ではありません。 王家に嫁ぐ事を望んでいる訳ではありません。 帰りましょう……父様」
アリアメアが聖女だから!! で、与えられた教育から逃げていたように、彼もまた癇癪を起し教師達に怒鳴りつけ、時には暴力をふるい教育から逃げていた。
『お前、父上や母上に、今日の事を伝えたら分かっているんだろうな?』
脅迫ばかりが上手い、頭の弱い王子にどれほど怒鳴られてもショックを受けようがないと言うものだ。 だが、私が平気だからと言って、誰もが平気なわけではない。
「陛下……」
底冷えする声で怒鳴り続ける王子ではなく国王に向かい公爵が眼光激しく睨みつけ、言葉を続けた。
「この子も聖女ではない。 そういうなら構いません。 私はこの子と共に領地に戻るだけです。 さぁ、帰りましょうエリアル」
3人の魔法機関の長から、私の魔力量の報告を受けているだろう王は慌てた。
王妃としての見た目にこだわりたい気持ちは強いのは、天使か化け物かと問われ能力を問わず天使のような赤子の方をと答えた馬鹿だ。 見栄を張りたいのかなんなのか分からないが、だからと言ってそんなバカげた事で、国を救うことを放棄する者が王なら、3人の長がいうように王も王子も傀儡として存在するだけの方が良いだろう。
そう思えば、むかついた3人の長の企ても、真っ当な意見なのでは? と、思えるのだから不思議である。
「ま、待ってくれ!!」
必死になって国王は呼び止める。
「あなたっ!!」
王妃の悲鳴に似た叱責が続いた。
「まさか、本気で息子にアレと結婚しろと言うのではありませんよね?! アレではあまりにも王子が、わが子が不憫ですわ。 そもそも、聖女との婚姻は、王家に強い血を求める必要性があるからですわよね。 なら、別にその化け物ではなくとも、他国から魔力の強い姫君を迎えればよろしいのではありませんの?!」
「そうです。 父上、そもそも化け物に人の子が産めるとは思えません!!」
縋るような王子の声。
繰り返される化け物と言う言葉。 人としての姿を保ちながら化け物と言われる状況を作った。 魔力だけが必要なら、脱ぎたての外皮を使えばいいと、長達に言ったのだけれど、聖女は人の心を持つことが重要なのだと、ロノスのようなことを言っていた。
『ただ、術式に膨大な魔力を注げばよいと言う訳ではないのです』
『それは? どういうことなの?』
『私共は、この国の秘密を知っておりますが、それを語る資格はございません。 陛下の許可をいただいたのちに、儀式の間にお連れし、この国の真実をお話しましょう』
そう神官長が神妙そうに述べるだけだった。
顔の4分の1を隠し、4分の3に母の面影を見せつけ、なおかつ表情が十分に表せる程度を見せつけた。身体に関しては皮膚の6割程度を薄い魔力結晶で覆っている。 変に興味をもたれても面倒臭いから。
「違う、違うのだ……」
ぼそぼそと告げる国王の顔色は悪くぷるぷると震えていた。 だが、国王の声は余りにも小さくて、化け物と叫び続ける王子の声に遮られていた。
「そなたのような化け物が子を産み。 女としての役目を果たせるとは到底思えんな。 そもそも、そういう気がおきん!! 子供だと言っても、私の言っている意味ぐらい理解できるだろう? 自分は聖女ではなく化け物でした。 そう謝れば、今なら許してやる」
王子の怒鳴り声を遮る者はおらず、声は大きく、早口で、品性を失っていく。 それを見ていれば感情をあらわにするのもバカバカしい。 格下と思っている者が罵って来ても煩いとは思っても簡単に傷つくことは無い。
それこそ岩のように無表情に叫んでいる王子を見続ければ、王子の言葉が一瞬とまった。 じっと見つめてくる視線を、虚無のような目で見つめていれば……公爵が私の目を塞いだ。
「不躾ですよ。 謝罪を」
「はっ、岩を見て不躾と言われるとは思いもしなかった」
大笑いをし、周囲に笑え!! と、強制まで始めた。
「そのものに謝罪をするくらいなら、家畜に頭を下げる方がマシだ」
ずっと我慢をしていたが、この時思った……。 馬の口元に頭をもっていって髪を食わせてやろうと……。 良い考えだ。 きっと楽しいに違いない。
なんて考えるほどに私の瞳は虚無となる。
「私は聖女としての人生を望んでいる訳ではありません。 王家に嫁ぐ事を望んでいる訳ではありません。 帰りましょう……父様」
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