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3章 セイジョセキ
11.親子 01
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王宮魔導士の元へと向かう前日。
私は、今日も鐘塔の上から町を眺める。 精霊除けが功をそうして人から魔力を奪えなくなった魔人の亀裂は増え続けていた。
「お姉ちゃ~ん!!」
少し前の私と変わらない背丈の幼女が私に呼びかけてきた。
両手につないだ両親の手、父親と繋いだ手を離しその小さな手を振ってきた。 自分も少し前までこうだったと思えば、両親の手を取る小さな子供をカワイイなんて素直に思えない。
私はあんな風に笑えない。
私だってあんな風に笑いたかった。
拗ねて背中を向けて、気づかぬふりをしたかった。
人として……。
呪いの言葉。
恩義と情を……。
私がしてあげているだけで、私の方は恩も情もない。
嫌味はおやめなさい。 顔が歪んで醜いですよ。
もっと善意的に人を見られないのですか?醜悪です。
それは人としてどうなのでしょうか? 心無い人ですね。
力がありながら、見て見ぬふりをするのか? 悪辣な。
軽薄な言葉はおやめなさい。 中身が無く馬鹿っぽいですよ。
ロノスが好ましいと思う態度を取らない限り、そのような言葉が並べ続けられていた私は、好意など欠片もないと言うのに微笑み手を振り返す。
早くどこかに行け。
「お姉ちゃ~ん、お姉ちゃ~ん!!」
永遠と呼び続ける。
うるさい……。
「お姉ちゃ~ん! 降りてきてよ~!!」
嫌だ、そこには亀裂がある……。
それでも、習性づけられた行動。 人として人に好かれるようにと言う行動を反射的にとってしまう。 ふわりと降りれば、意識体の纏う微弱ながらも剥き出しの甘い微かな芳香漂う魔力に、大地の亀裂から風に揺らめく雑草のように触手が顔を出し揺らめいた。
私は少し高い、幼女の背よりも高い位置、少し離れた場所で止まった。
「コレ、お姉ちゃんにあげる!! あのね。 パパとママに聞いたの。 お姉ちゃんがしばらくの間居なくなるって、だからね、私、お姉ちゃんに贈り物がしたいってママに相談したの。 これ、あげる!!」
それは小さな銅製の髪飾り。
いびつで単純な花が幾つも重なった図案を、銅板にそのまま写し取り、切り取り、端を削り、ふくらみを持たせ、色を付け、ニスを塗り、髪留めにしたものだった。 花の図案、色付けを幼女がし、後は親が髪留めに仕上げたのだろう。
嬉しそうにニコニコと差し出してくるが……。 5歳児の絵だ。 親は、子供の作るものは補正が掛かって、プロの商品以上の価値を見出すと言うが、私と言う他人にとっては……微妙だった。
「チシャ、聖女様はそこにいるのか?」
「うん!! そこでぷかぷか浮いているよ」
「娘が一生懸命作ったものです。 貰ってやってください」
へらへらと緩んでいた。 別に心を読まずともわかる。
俺の娘は才能があるだけでなく、思いやりがあって優しい子だろう? 自慢なんだぜ!! と、表情全てが語っていた。 そして控え目な様子で母親は見えない私に向かって言う。
「受け取ってやってくださいませんか?」
私は、私は自分で生きていけるように、商売として売れるアクセサリーを売っていました!! そう叫びたくなる……こういうのって大人げないって言うんだよね。 でも、私はまだ10歳だし……。
「こういうのは好みってのがありますよね。 聖女様はどのようなものが好みですか?」
何時までも受け取られないソレに、母親はフォローする。
「何言ってんだ。 うちの娘が作ったものだ最高に決まっているだろう。 なぁ、聖女様だってそう思うだろう? さぁ、受け取ってくれ」
何処までも愛される幼女への嫉妬。
アクセサリーを得ても困ると言う思い。
私は幽霊だから……
私は、今日も鐘塔の上から町を眺める。 精霊除けが功をそうして人から魔力を奪えなくなった魔人の亀裂は増え続けていた。
「お姉ちゃ~ん!!」
少し前の私と変わらない背丈の幼女が私に呼びかけてきた。
両手につないだ両親の手、父親と繋いだ手を離しその小さな手を振ってきた。 自分も少し前までこうだったと思えば、両親の手を取る小さな子供をカワイイなんて素直に思えない。
私はあんな風に笑えない。
私だってあんな風に笑いたかった。
拗ねて背中を向けて、気づかぬふりをしたかった。
人として……。
呪いの言葉。
恩義と情を……。
私がしてあげているだけで、私の方は恩も情もない。
嫌味はおやめなさい。 顔が歪んで醜いですよ。
もっと善意的に人を見られないのですか?醜悪です。
それは人としてどうなのでしょうか? 心無い人ですね。
力がありながら、見て見ぬふりをするのか? 悪辣な。
軽薄な言葉はおやめなさい。 中身が無く馬鹿っぽいですよ。
ロノスが好ましいと思う態度を取らない限り、そのような言葉が並べ続けられていた私は、好意など欠片もないと言うのに微笑み手を振り返す。
早くどこかに行け。
「お姉ちゃ~ん、お姉ちゃ~ん!!」
永遠と呼び続ける。
うるさい……。
「お姉ちゃ~ん! 降りてきてよ~!!」
嫌だ、そこには亀裂がある……。
それでも、習性づけられた行動。 人として人に好かれるようにと言う行動を反射的にとってしまう。 ふわりと降りれば、意識体の纏う微弱ながらも剥き出しの甘い微かな芳香漂う魔力に、大地の亀裂から風に揺らめく雑草のように触手が顔を出し揺らめいた。
私は少し高い、幼女の背よりも高い位置、少し離れた場所で止まった。
「コレ、お姉ちゃんにあげる!! あのね。 パパとママに聞いたの。 お姉ちゃんがしばらくの間居なくなるって、だからね、私、お姉ちゃんに贈り物がしたいってママに相談したの。 これ、あげる!!」
それは小さな銅製の髪飾り。
いびつで単純な花が幾つも重なった図案を、銅板にそのまま写し取り、切り取り、端を削り、ふくらみを持たせ、色を付け、ニスを塗り、髪留めにしたものだった。 花の図案、色付けを幼女がし、後は親が髪留めに仕上げたのだろう。
嬉しそうにニコニコと差し出してくるが……。 5歳児の絵だ。 親は、子供の作るものは補正が掛かって、プロの商品以上の価値を見出すと言うが、私と言う他人にとっては……微妙だった。
「チシャ、聖女様はそこにいるのか?」
「うん!! そこでぷかぷか浮いているよ」
「娘が一生懸命作ったものです。 貰ってやってください」
へらへらと緩んでいた。 別に心を読まずともわかる。
俺の娘は才能があるだけでなく、思いやりがあって優しい子だろう? 自慢なんだぜ!! と、表情全てが語っていた。 そして控え目な様子で母親は見えない私に向かって言う。
「受け取ってやってくださいませんか?」
私は、私は自分で生きていけるように、商売として売れるアクセサリーを売っていました!! そう叫びたくなる……こういうのって大人げないって言うんだよね。 でも、私はまだ10歳だし……。
「こういうのは好みってのがありますよね。 聖女様はどのようなものが好みですか?」
何時までも受け取られないソレに、母親はフォローする。
「何言ってんだ。 うちの娘が作ったものだ最高に決まっているだろう。 なぁ、聖女様だってそう思うだろう? さぁ、受け取ってくれ」
何処までも愛される幼女への嫉妬。
アクセサリーを得ても困ると言う思い。
私は幽霊だから……
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