2 / 82
1章 聖女誕生
02.祝福の歌、狂気の叫び
しおりを挟む『しょうちゃん。ぼくね。
なんかね…。』
そのとき僕は珍しく
落ち込んでいたんだ。
小学一年生になって
しょうちゃんと
2人きりの時間も減って…。
かっこいいしょうちゃんの
周りにはいつも女子がいて
僕は近寄れなくって。
やっとしょうちゃんの隣に
座ったとき、なんか糸が
切れたように力が抜けて
背中に頭をもたせかけた。
「どうしたの?たっくん?」
『しょうちゃんおんなのこに
もてもてだね…。』
「おれはおんなのこなんて
いらない。っていうか…。
たっくんいがいはいらない。」
『ほんと…?』
僕は目をぱちくりさせて
しょうちゃんを見た。
「あたりまえでしょ?」
こちらに向き直り怒ったように
呆れたように言う。
『あたり、まえ?』
そだよ!としょうちゃんは
えらく憤慨している。
「おれはたっくんひとすじ!
しってるだろ?」
『う、うん…。』
僕は顔を赤くして俯いた。
「たっくん!ほら!ちからを
あげるよ。」
そう言うとしょうちゃんは
僕の両手を握りしめ
目をじっと見つめる。
『ふぁ………。熱……い………。』
手からは熱い何かが流れ込んで
僕の頭はふうっ、と白くなった。
気がつくとぼぉっと光るふたつの
小さな瞳が僕を見上げていた。
僕はとても大きい木で…
ずっと待っていた。
『来てくれたんだね…。』
その小さな瞳は1匹の鹿だった。
両前足を僕の幹につけると
そこからあたたかい想いが
流れ込んでくる。
「木の妖精さん…。俺の気を
わけてあげる。だいぶ弱って
生気がなくなってる。」
『鹿さん…。ありがとう。』
「俺はずっと探していたよ。
あなたを。」
『僕はずっと待っていたよ…
あなたを。』
「ほら。元気出てきたでしょ?」
『ん…。あたたかい…。 鹿さん
ありがとう。来てくれて。』
「木の妖精さん。ありがとう。
いてくれて。」
「たっくん…げんき………。
でたでしょ?」
『しょうちゃんありがと…。
やっぱりいつもしょうちゃんは
きてくれる。』
「いくさ。だってたっくんが
たいせつだから。
ずっといっしょにいたいから。」
『これまでもこれからも
ずっとずっと…。』
「おれはたっくんにちからを
あげる。いつもいつのひも。
だからたっくんはしんじてて。
おれだけを。」
『しょうちゃんだけをみてる。』
「そ!それでよし!じゃあ
かえろう!かえってなにして
あそぶ?」
『おえかきは?』
「いいね!」
僕達は自然と手を繋ぎ
唖然としている女子たちを後目に
微笑みあって校門に向かった。
なんかね…。』
そのとき僕は珍しく
落ち込んでいたんだ。
小学一年生になって
しょうちゃんと
2人きりの時間も減って…。
かっこいいしょうちゃんの
周りにはいつも女子がいて
僕は近寄れなくって。
やっとしょうちゃんの隣に
座ったとき、なんか糸が
切れたように力が抜けて
背中に頭をもたせかけた。
「どうしたの?たっくん?」
『しょうちゃんおんなのこに
もてもてだね…。』
「おれはおんなのこなんて
いらない。っていうか…。
たっくんいがいはいらない。」
『ほんと…?』
僕は目をぱちくりさせて
しょうちゃんを見た。
「あたりまえでしょ?」
こちらに向き直り怒ったように
呆れたように言う。
『あたり、まえ?』
そだよ!としょうちゃんは
えらく憤慨している。
「おれはたっくんひとすじ!
しってるだろ?」
『う、うん…。』
僕は顔を赤くして俯いた。
「たっくん!ほら!ちからを
あげるよ。」
そう言うとしょうちゃんは
僕の両手を握りしめ
目をじっと見つめる。
『ふぁ………。熱……い………。』
手からは熱い何かが流れ込んで
僕の頭はふうっ、と白くなった。
気がつくとぼぉっと光るふたつの
小さな瞳が僕を見上げていた。
僕はとても大きい木で…
ずっと待っていた。
『来てくれたんだね…。』
その小さな瞳は1匹の鹿だった。
両前足を僕の幹につけると
そこからあたたかい想いが
流れ込んでくる。
「木の妖精さん…。俺の気を
わけてあげる。だいぶ弱って
生気がなくなってる。」
『鹿さん…。ありがとう。』
「俺はずっと探していたよ。
あなたを。」
『僕はずっと待っていたよ…
あなたを。』
「ほら。元気出てきたでしょ?」
『ん…。あたたかい…。 鹿さん
ありがとう。来てくれて。』
「木の妖精さん。ありがとう。
いてくれて。」
「たっくん…げんき………。
でたでしょ?」
『しょうちゃんありがと…。
やっぱりいつもしょうちゃんは
きてくれる。』
「いくさ。だってたっくんが
たいせつだから。
ずっといっしょにいたいから。」
『これまでもこれからも
ずっとずっと…。』
「おれはたっくんにちからを
あげる。いつもいつのひも。
だからたっくんはしんじてて。
おれだけを。」
『しょうちゃんだけをみてる。』
「そ!それでよし!じゃあ
かえろう!かえってなにして
あそぶ?」
『おえかきは?』
「いいね!」
僕達は自然と手を繋ぎ
唖然としている女子たちを後目に
微笑みあって校門に向かった。
8
お気に入りに追加
416
あなたにおすすめの小説

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~
夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。
「聖女なんてやってられないわよ!」
勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。
そのまま意識を失う。
意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。
そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。
そしてさらには、チート級の力を手に入れる。
目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。
その言葉に、マリアは大歓喜。
(国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!)
そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。
外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。
一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。
このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
マーベル子爵とサブル侯爵の手から逃げていたイリヤは、なぜか悪女とか毒婦とか呼ばれるようになっていた。そのため、なかなか仕事も決まらない。運よく見つけた求人は家庭教師であるが、仕事先は王城である。
嬉々として王城を訪れると、本当の仕事は聖女の母親役とのこと。一か月前に聖女召喚の儀で召喚された聖女は、生後半年の赤ん坊であり、宰相クライブの養女となっていた。
イリヤは聖女マリアンヌの母親になるためクライブと(契約)結婚をしたが、結婚したその日の夜、彼はイリヤの身体を求めてきて――。
娘の聖女マリアンヌを立派な淑女に育てあげる使命に燃えている契約母イリヤと、そんな彼女が気になっている毒舌宰相クライブのちょっとずれている(契約)結婚、そして聖女マリアンヌの成長の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる