1 / 82
01.序章
しおりを挟む
「レティシア、私は君の事は愛せない。 愛せる訳がない。 君だって分かっているだろう? 君は誰にも愛されないと言う事を……。 だが、国王も王妃も君との婚約を解消する事は決して許さないだろう。 なぜだ!! なぜ、お前は、存在しているんだ!!」
何か特別な事があった訳ではない。
王妃教育の僅かな休憩時間、王宮内に隠れ住む精霊と共にお茶をしようと庭園を散歩している時の事だった。 目の前から歩いてくるジュリアン殿下は愛らしい侍女と楽しそうに語らい微笑みあっていた。 そっと、道をそれようとした背に向かって叫ばれた言葉だった。
王宮に訪れたのは8年前。
婚約者である王子ジュリアン・ガーランドは、この8年笑顔一つ私に向けた事はない。
出会いの時、18歳だった彼は私の姿を見て、吐いた……。 化け物と罵った。 なぜ、このような者と婚約しなければならないのだと嘆いた。 そして26歳になった今も彼は、私を嫌悪し、軽蔑し、憎悪すらしている。
でなければ、わざわざ、別れもしないのに愛せない等と告げる必要等ないのだ。 彼の言葉に偽りはなく、真実である事を私は知っている。
そして、私が誰から愛されるはずも無い事もまた知っている。 私は……無言のままお辞儀をし、その場を走り去る。 私の背後から聞こえるのは、
「殿下、あれは何ですの……気持ち悪い。 王宮に化け物がいるなんて、恐ろしい……殿下」
縋りつく侍女は、自分が触れた男の腕が震えている事を知り慌てて手を離した。
嫌悪、軽蔑……怯えの混ざった声だった。
「やめてくれ!! 何も言うな、アレを思い出すだけで、僕は気が狂いそうになる!! 早く、早く……」
死んでくれればいいのに……。
彼等は、私を自分達と同じように心ある存在だと理解してくれることは無い。
何か特別な事があった訳ではない。
王妃教育の僅かな休憩時間、王宮内に隠れ住む精霊と共にお茶をしようと庭園を散歩している時の事だった。 目の前から歩いてくるジュリアン殿下は愛らしい侍女と楽しそうに語らい微笑みあっていた。 そっと、道をそれようとした背に向かって叫ばれた言葉だった。
王宮に訪れたのは8年前。
婚約者である王子ジュリアン・ガーランドは、この8年笑顔一つ私に向けた事はない。
出会いの時、18歳だった彼は私の姿を見て、吐いた……。 化け物と罵った。 なぜ、このような者と婚約しなければならないのだと嘆いた。 そして26歳になった今も彼は、私を嫌悪し、軽蔑し、憎悪すらしている。
でなければ、わざわざ、別れもしないのに愛せない等と告げる必要等ないのだ。 彼の言葉に偽りはなく、真実である事を私は知っている。
そして、私が誰から愛されるはずも無い事もまた知っている。 私は……無言のままお辞儀をし、その場を走り去る。 私の背後から聞こえるのは、
「殿下、あれは何ですの……気持ち悪い。 王宮に化け物がいるなんて、恐ろしい……殿下」
縋りつく侍女は、自分が触れた男の腕が震えている事を知り慌てて手を離した。
嫌悪、軽蔑……怯えの混ざった声だった。
「やめてくれ!! 何も言うな、アレを思い出すだけで、僕は気が狂いそうになる!! 早く、早く……」
死んでくれればいいのに……。
彼等は、私を自分達と同じように心ある存在だと理解してくれることは無い。
6
お気に入りに追加
416
あなたにおすすめの小説

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

団長サマの幼馴染が聖女の座をよこせというので譲ってあげました
毒島醜女
ファンタジー
※某ちゃんねる風創作
『魔力掲示板』
特定の魔法陣を描けば老若男女、貧富の差関係なくアクセスできる掲示板。ビジネスの情報交換、政治の議論、それだけでなく世間話のようなフランクなものまで存在する。
平民レベルの微力な魔力でも打ち込めるものから、貴族クラスの魔力を有するものしか開けないものから多種多様である。勿論そういった身分に関わらずに交流できる掲示板もある。
今日もまた、掲示板は悲喜こもごもに賑わっていた――

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~
夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。
「聖女なんてやってられないわよ!」
勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。
そのまま意識を失う。
意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。
そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。
そしてさらには、チート級の力を手に入れる。
目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。
その言葉に、マリアは大歓喜。
(国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!)
そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。
外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。
一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる