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19.悪魔公は期待に笑う

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「どういう!!」

 男が……クルト・クヴァンツが慌て娘に声をかけたが、既に意識は遠ざかった後だった。

 倒れこんだ娘の身体は、疲労でグッタリとしていた。 どういう……ことだ? 混乱した。 いや、自分は誰と契りを交わしたんだ? 婚姻よりも強い、運命を共有する解除不可能な契約を。

 今更ながら拘束を解いた。
 疲れ切った身体を、汗と愛液と精液に濡れた身体を拭う。
 何処の誰か知らなくとも、誰かに任せる気などなれなかった。



 皮膚を覆う黒曜石のような鱗、それは幼い頃からあったが、年と共に広がりを見せ、今となっては、

 公爵は悪魔だ。
 夜な夜な人を食っている。
 やがてドラゴンに変化する。

 彼を知らない人間は恐怖と共に語り、彼を知る人間は小馬鹿にしながら見掛け倒しの化け物がと語る。

 人と顔を合わせるのも億劫に思う反面の孤独。

『その孤独は永遠のものだろう』

 クルト・クヴァンツは思っていた。 友人であるレイバ辺境伯も、兄である現国王も、彼を良く知る者達は、クルトは孤独に1人で生きていくのだと決めつけていた。 だからこその押し付けであり、だからこその了承だった。

 想像した以上に情が沸いていた。
 行為に伴う愛おしさなど虚構だと言われれば反論できない。
 それでも、愛おしくて、愛おしくて、過去の男を思えば嫉妬した。

 フレイではない。

 ソレを聞いて、意識を失った娘が気の毒に思えた。
 ソレを聞いて、申し訳ないと思った。
 ソレを聞いて、歓喜した……。

 俺だけの……存在。

 意識のない名も知らぬ娘に口づける。

「私の全てを持って償い、甘やかそう……」

 手離す気等欠片もない。
 そんな簡単な術ではない。
 解除できない術であることを心から喜んでいた。

 その日、クルトは心から喜び、そして笑い、使用人達を恐怖させた。
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