生命の樹

迷い人

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05.無邪気に、純粋に、その行為は行われる 後

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 ちゅぷりと音を立て、熱を持った俺の欲望が忍の温かなヌメリを帯びた口内に含まれ……俺は驚きと、久々に感じる快楽の伴う刺激に俺は情けなくも声を漏らしそうになっていた。

「くっ……」

 そんな情けなさは、また忍を喜ばせるのかと思ったが……、忍はどこか必死で……亀頭を口内で含み、口づけるように滑らかで柔らかい唾液に濡れた淫靡な唇が触れ、先走りが溢れる窪みを舌先でちろちろと舐めていた。

 その必死さに愛らしさを覚え、熱っぽい上体を起こし、背もたれに身を任せた。

 唾液に濡れた口内からぬるりとした感触と熱とそして圧力をかけ忍は弄んで来る。 その行為全てが熱で動きが緩慢となっている俺をからかい楽しんでいるかのようだった。 

 だが、実際には、愛らしくも整った顔立ちは、怒張した欲を口内に支配され辛そうに顔を歪め、吐き出そうと、頭を上げようとしている。

「ぁっ……」

 こんなところで……と言う思いと、今ならまだ引き返せると言う思い。 心の中の天秤は激しくゆれ、そして……俺は熱を持って動かすのにも気だるく不自由な身体を、無理に動かし忍の頭を押さえつけた。

 予想もしていなかったのだろう。 忍は、ごふっと辛そうに咳きこみ、大きな瞳は涙ぐみ、眉間を寄せ、苦しそうに表情を歪ませる。

 その瞬間……愉悦を覚えた。

 美しく整った顔が歪み……それは、人らしく、感情的で、不確かで、どこか不思議で人ならざる何かを連想し、時折恐怖を覚える忍に対して、親しみや愛おしさすら感じたのだ。

 胸の何処かでカチッと音を立てて何かがずれたようなそんな気がした。

 頭を押さえつけられたと言う行為は忍にとって想定外だったのだろう。 不満だったのだろう。 身体を支えるために触れていた太腿が爪先で引っかかれ、熱を持ち血がにじみ出す。

 押さえつけられ口内の奥壁では、薄く柔らかく温かなぬるりとした感触と舌が与える刺激が与えられていた。 俺は、眉間を寄せ……不意な痛みと、快楽的な刺激に追い立てられるのを耐えていた。

 耐えなければいけなかった。
 誇示すべきプライド。
 捨ててしまえば楽なのだと、心の何処かで訴えた。

 ぬるい快楽に、いっそ自分のペースで犯してしまえと、心の片隅で訴えるが……そうすれば楽になると言う思いとは裏腹に、身体は熱と……傷つけられるたびに追う傷の痛みに痺れ、思うように動かせない。

 不満……。

 だが、忍だって不満を抱えているのだろう。 だが、俺は気だるい中にもそんな忍を可愛らしいと口元がゆるむのだ。

 口内から肉棒を吐き出す事を拒否され、口内がおかされ、息苦しさに涙ぐみ俺を睨みつける忍のそれは、人らしく、何より与えられる優越感によって……忍がいっそう可愛らしく思えたのだ。

 今日あったばかりなのに……。
 何処の誰……いや、何者かもわからないのに……。

 与えられる快楽によって、そんな疑問は霧のように霧散してしまうのだ。

 それでも……男として、年長者としての意地、忍に弄ばれ、翻弄される俺を楽しげに笑ってきた可愛らしくも嫌味交じりの笑みを、俺は真似た。

 忍の視線が不貞腐れていた。

 それでも、不器用に快楽を与え続けて来る。

「悪かった」

 忍の口から不本意に零れ落ちているのだろう唾液を指先で拭い、頬を撫で、逃がさぬように髪を乱雑に撫でる。

「子供扱いしないでよね!」

「だが……身体が自由に動かない。 子供扱いされたくないなら……これを何とかしろ」

 そう言えばアッサリと無視された。

 無視されるから……俺の太腿に置かれた忍の手を取り、俺の指と忍の指を絡め合いなが怒張し収まる事の無い肉棒へと促し触れさせる。 

「子供扱いされるのは嫌なんだろう?」

 俺の誘導に、主導権を奪われた事に複雑な思いでもあったのだろう。 どこか苛立たしげに、口内に含み、冷たく滑らかな手を使い不器用ながらも射精を促す動きを始めたのだ。

 たどたどしくも必死に……。

 頬をすぼめ口内に含んだ欲望を包み込み、じわじわと溢れ出る唾液を肉棒に絡めゆっくりと舌先でなぞり、しごき始めた。

 じゅぶ、ぐじゅっ……。

 口内と、手で余裕のない、力の加減が変わらないのだろう与えて来る刺激は何処まで未熟、じれったくて、物足りなくて、体中の熱が上がり、痺れるような感覚を覚える。

 何時の間にか拒絶する気など皆無になっていた。 気だるい身体は未だ力を入れるのは難しく、それでも……欲望を吐き出さなければもどかしすぎた。

 じゅ、じゅるっ、ずじゅ……。

 圧力を加え、唾液を絡め、舌先で刺激し、緩慢な動きながら徐々に慣れてきている……そんな風に思えたのは……与えられる刺激のもどかしさが、甘い拷問のように煽ってきたから。

 ずじゅ、ずぶっ、じゅる……。

 唾液を絡め柔らかな温もり、圧力をかけてしごいてくる手のひら、リズムを取るかのように動き追い立ててくる。

忍も俺の表情を見るだけの余裕が出て来たのか……チラチラと挑戦的に挑発的に様子を伺い、口内で唾液と共に擦り、絡め、しゃぶり、吸い上げ、顔と手を上下させ淫靡な音を響かせる。

 はぁ……。

 不意に訪れる強い快感。
 甘い吐息が零れるのを耐えた。
 眉間に力が入り大きく深呼吸をする。

 それを見ていたらしい忍は、規則正しくも強弱をつけた刺激を与え、そして様子を見るのだ。 一切の躊躇なく、情熱的に、淫靡な水音が響かせる奉仕は未熟ながら必死で、ときおり苦しそうに表情を歪ませる様子に……髪を撫で頬を撫で、愛おしいのだと訴えれば……唇の端から唾液をこぼしながらも、その手に懐き、心と欲望が破裂寸前まで陥れられた。

「~~~っくぅ!!」

 破裂寸前まで行きながら……快楽を解放させてもらえない……そんな追いたて、追い詰め、焦らすそんな姦淫は数分の間続き、ややあって、その口内から、唇から解放され、射精は許されることなくぶるんと揺れ射精の予兆に震えた。

「……な、にがしたい……もう良いだろう」

 平静を保つには辛いが、頭の何処かで引き返せる……と、自分に訴える。 もう一度風呂に入って……欲望から目を反らし、現実的な処理方法を連想すれば溜息が、繰り返された深呼吸に混ざった。

 忍の唇が唾液に濡れ、不満を拗ねたように零した。

「無理に、させておいて……」

「それは、悪かった。 だが、大体は忍の意志だろう?」

 一筆取ってはいないが……後で文句を言われたくないと言う冷静な思いも何処かに残っていた。

 忍の悪戯な笑みが俺を見つめ……恋心がある訳でもないのに、どこまでも快楽を押し進めようとする忍に……忍の笑みに、満足そうな瞳に、時折恐怖を覚えることはないとは言わないが、何かを疑うよりも……時々見せて来る初心な様子を思い出せば、疑うような相手ではないのだと必死に思い込もうとした。

 そんな複雑な俺の思い等全く関係ないとでも言うように、忍は躊躇なく履いていたショートパンツのボタンを外しチャックを下ろし、ショーツを一緒に指をかけ、一気に引き下ろした。

「ぇっ」

 止めるより早く……忍は俺の下腹部をまたぐ。 口先だけの紳士は未だ興奮を抑える事なく……腰を落とされれば、にゅるりと柔らかく濡れた感触に触れれば、欲望が震え、濡れた肉華を擦った。

「んっ……」

 堪えるような忍の甘い声は、どこか恐怖を帯びていて……忍の尻を抱きしめ抱き寄せ濡れた未熟な肉華に触れた。 指先で肉芽を刺激し、溢れる愛液を指に絡め、肉華を弄る。

「あ、ぁっ、やっ……ダメ」

 それはダメなのだと……思い切ったように、大きく息を飲み……膣内に肉棒を一気に飲みこんだ。

「はっ、ぁあっ」

 苦痛の混ざ忍のる声色と、表情、その呼吸が辛そうに乱れ、その必死さに歪みに、再び愉悦を覚えた……。

 熱を持った柔らかな肉で包み込みながらも忍は必死のように見えた。 性を搾り取ろうとするかのように肉棒を締め付ける。 締め付ける自らの膣内に快楽を覚えながら、忍の手は俺の身体の上で悶えるように撫でていた。

 時折り長い爪が肌に触れ引っかかれ、赤い血が線を描く。
 快楽が苦しいかのように身体に縋りつき、首筋に歯を当てて来た。

 息を乱れ苦しがる忍を抱きしめれば、胸の上で辛そうに悶え、俺を傷つけ……赤い線がつくたび、血が滲むたび、熱を持ちソレは奇妙な快楽へとつながり、視界が明滅する。

「ぁっ、ぁっ」

 俺達二人は何時の間にか陶酔が入り混じっていた。 忍の腰が落とされきれば、忍を抱き寄せかきむしりたくなるほどの快楽が俺の神経を燃やす。 身体を預けられた下腹部に感じる忍の重さは殆ど感じ取る事は出来ない……ただ、今は、喜びに吐息を漏らした。

 腰が上げられ、そして落とされ、淫靡な肉がにゅちゃりと名残惜しそうに肉棒を咥えては突き放す。 それは快楽を伴う拷問のように、脳が焼かれるように痺れた。

 徐々に快楽を煽るように、奪うような刺激に、肉棒に絡む血管が破裂するのではないかという危険な快楽を与え、忍の甘い吐息は火のように熱く情熱的で、そして……欲望のままに腰を振り、それは長い交わりの果てに射精を促された。

 快楽が、熱が、愛おしさが、愉悦が、あらゆる感情が入り混じり多幸感に満たされる。

 俺達は……いや、俺は……まるでこの行為が何らかの儀式であったかのように……ゆっくりと……夢の中に落ちていった。
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