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24.妖に飲みにケーションは効果抜群らしい 01
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教授室から人が去った後、親良は皎一さんに連絡を入れた。
私は私で、パパ教授にお伺いを立てる。
皎一さんに付き添い&お使いで、パパ教授と親良は顔なじみらしく
『そうかぁ、連絡なく訪れるとは珍しいね。 雫ちゃんには面倒をかけてしまいますが、ユックリしていってくださいと伝えて下さい』
「えっと、それだけでなくて……その、妖同伴なんですが……どうしましょう?」
教授室に住む妖は妖カラスの出現で気配を感じなくなったけれど、葛城の家に住まう蛇はそこそこな力を持つ妖らしい。 縄張りは問題ないのでしょうか? と思った訳です。
『問題ありませんよ。 彼女は別の場所に本体がある妖ですし、私は妖を寄せる体質を持っている事もありかなり寛容な方ですから。 是非2人とも家の方にお招きしてください」
なるほど、あの妖蛇は女性なのか……。
なんて、少しずれた所に感心してしまうのでした。
沙織さんと上田の件は……また後日でいいよね……と少し引き気味に私は通話を終えた。 私の通話は終わったけれど親良は未だ通話中で、
「私も、皎一さんと話をしたいなぁ~!!」
と、横から言えば、アッチ行ってなさいとばかりに頭に手を置き押しのけた親良は、私に苦笑いを向けていた。 今は妖カラスが、カラスの姿になった事を報告しているようだ。
「ケチねぇ~」
私は妖カラスに同意を求めれば、バサリと広げられた翼で頭が撫でられ……なんだか笑ってしまった。
変な妖。
結局、親良は通話を変わってくれなかった。
「酷い」
「仕方ないでしょう。 雫ちゃんの所在は秘密なんですから」
「通話くらい良いでしょう……」
「雫ちゃんの音声を捕らえた瞬間、追跡を開始する何かがある危険性だってあるんですから」
「便利になるって不便な事なのね」
私が溜息交じりに言えば、妖カラスがクックククと変な笑い方をしていた。
そして、通話を終えた数分後、私は親良の激しい拒絶にあう事になる。
「嫌です!! ダメです!! 無理です!!」
親良が激しく言い放つ。
「言い過ぎ、本当失礼な人ね。 私が信用できないとでもいうの?」
「こればかりは信用問題とは関係ありません。 いえ、むしろ全く信用してません」
「失礼ね……どうして駄目なのよ……」
「幼い頃からずっと貴方を守り見て来た俺だからこそ、怖いんですよ……!!」
「大げさですよ」
とは言え、一方的に無視する事にすれば、彼だってどうこうできるものではない。 と、思っていましたが、
「こうなれば、力づくで対処させて頂くしかありません」
そして、ジリジリと近寄ってくる親良。
ヒョイっと身軽な動きで、私の手の中から光物を奪う妖カラスこと、晃君。
何を奪われたかと言うと車のカギ。
「ちょっ、晃君はどっちの味方なの!!」
「雫」
間を置かず返事をする割に、動きに迷いが無いのはどういう事だったのでしょうか?
「なら、どうして裏切るんですか?!」
「ソレはソレ、コレはコレ」
羽根を使って横に置いてポーズをされた。
「よくやってくれました……運転の練習で横に乗せられた時を思えば、任せる訳ないでしょう!!」
マジ怒りされてしまった……。
「でも、3か月間車生活を送ってきましたから!! それに親良、無免許なのではありませんか?!」
「ふっふふふ、ぬかりありませんよ。 ポケットに入れてありますからね」
付け入りどころがなく私は小さく舌打ちをし、後はまぁ……大人しく運転席側の後部座席に乗り込むことにした。
「道は分かるのですか?」
「分かりますよ。 葛城教授は……ボス以上に人使いが荒いですから」
あはっはははははと親良が乾いた笑いをこぼしていた。
親良はフザケタ様子で、冗談っぽく言ったのだけど、私は少し落ち込んでしまう訳なのです。
自分の知らない所で、色んな人が繋がりを持っていたと言う事を。 なんだか……今までの私って身体を解体されなくても、実験動物のように飼われていたんだなぁ……なんて自虐的な事を思ってしまい、すぐに気を取り戻して不満を伝えた。
「知りませんでした」
運転席の後ろに乗り込んだ私は、運転席の親良を手に持った晃君の嘴でつつこうとした。 私は絶対的な拒絶と共に、羽根でペシペシと軽く頭を叩かれる。
「俺は男にキスをする趣味はない!!」
「……晃君って雄なんだ……」
「……いや、気になっていたんだが……。 雫は俺が誰か分かっていないのか?」
真剣に、真摯的に、切実に問いかけられてしまう。
「えっと……」
考え込んでみたものの、今まで知り合ったカラス達の区別は数匹しかついておらず、逆にその数匹であれば分からない訳がないし、それ以外であれば全く分からない。
「ごめんなさい」
スンと分かりやすく落ち込む妖カラスを、何となく申し訳なく思ってしまい抱き締める。
「まぁ、ボスが言うには、雫ちゃんは晃の赴任時期からこっちの記憶がないらしいから」
「それってほぼ全部覚えていないって事だろう?!」
「ソレだけ大きなショックがあったと言う事ですよ。 思い出してほしければ人間の姿を取れるように練習してくださいと言う事でしたよ」
「……」
落ち込んでいる妖カラスの首元を撫でていると、モヤリとその身体が崩れそうになって、
「運転中は危ないですから大人しくしてください」
そして、再びカラスの姿になった。
ようするに私が記憶喪失している数か月は、ずっと眠っていた訳ではなく、この妖カラスとの間になんらかの関係性を築いてきた。 と、言う事は把握したのでした。
「ごめんなさい」
そう言って抱きしめると、落ち込んだ妖カラスは落ち込んだまま。 代わりに親良がこう言った。
「これから仲良くすればいいでしょう」
「よろしくね。 晃君」
「あぁ、よろしく」
「それでだけど親良、食料の買い出しをしたいので寄り道お願いします」
「雫ちゃん、情緒」
親良が苦笑しながらも方向指示器が右折を示した。
私は私で、パパ教授にお伺いを立てる。
皎一さんに付き添い&お使いで、パパ教授と親良は顔なじみらしく
『そうかぁ、連絡なく訪れるとは珍しいね。 雫ちゃんには面倒をかけてしまいますが、ユックリしていってくださいと伝えて下さい』
「えっと、それだけでなくて……その、妖同伴なんですが……どうしましょう?」
教授室に住む妖は妖カラスの出現で気配を感じなくなったけれど、葛城の家に住まう蛇はそこそこな力を持つ妖らしい。 縄張りは問題ないのでしょうか? と思った訳です。
『問題ありませんよ。 彼女は別の場所に本体がある妖ですし、私は妖を寄せる体質を持っている事もありかなり寛容な方ですから。 是非2人とも家の方にお招きしてください」
なるほど、あの妖蛇は女性なのか……。
なんて、少しずれた所に感心してしまうのでした。
沙織さんと上田の件は……また後日でいいよね……と少し引き気味に私は通話を終えた。 私の通話は終わったけれど親良は未だ通話中で、
「私も、皎一さんと話をしたいなぁ~!!」
と、横から言えば、アッチ行ってなさいとばかりに頭に手を置き押しのけた親良は、私に苦笑いを向けていた。 今は妖カラスが、カラスの姿になった事を報告しているようだ。
「ケチねぇ~」
私は妖カラスに同意を求めれば、バサリと広げられた翼で頭が撫でられ……なんだか笑ってしまった。
変な妖。
結局、親良は通話を変わってくれなかった。
「酷い」
「仕方ないでしょう。 雫ちゃんの所在は秘密なんですから」
「通話くらい良いでしょう……」
「雫ちゃんの音声を捕らえた瞬間、追跡を開始する何かがある危険性だってあるんですから」
「便利になるって不便な事なのね」
私が溜息交じりに言えば、妖カラスがクックククと変な笑い方をしていた。
そして、通話を終えた数分後、私は親良の激しい拒絶にあう事になる。
「嫌です!! ダメです!! 無理です!!」
親良が激しく言い放つ。
「言い過ぎ、本当失礼な人ね。 私が信用できないとでもいうの?」
「こればかりは信用問題とは関係ありません。 いえ、むしろ全く信用してません」
「失礼ね……どうして駄目なのよ……」
「幼い頃からずっと貴方を守り見て来た俺だからこそ、怖いんですよ……!!」
「大げさですよ」
とは言え、一方的に無視する事にすれば、彼だってどうこうできるものではない。 と、思っていましたが、
「こうなれば、力づくで対処させて頂くしかありません」
そして、ジリジリと近寄ってくる親良。
ヒョイっと身軽な動きで、私の手の中から光物を奪う妖カラスこと、晃君。
何を奪われたかと言うと車のカギ。
「ちょっ、晃君はどっちの味方なの!!」
「雫」
間を置かず返事をする割に、動きに迷いが無いのはどういう事だったのでしょうか?
「なら、どうして裏切るんですか?!」
「ソレはソレ、コレはコレ」
羽根を使って横に置いてポーズをされた。
「よくやってくれました……運転の練習で横に乗せられた時を思えば、任せる訳ないでしょう!!」
マジ怒りされてしまった……。
「でも、3か月間車生活を送ってきましたから!! それに親良、無免許なのではありませんか?!」
「ふっふふふ、ぬかりありませんよ。 ポケットに入れてありますからね」
付け入りどころがなく私は小さく舌打ちをし、後はまぁ……大人しく運転席側の後部座席に乗り込むことにした。
「道は分かるのですか?」
「分かりますよ。 葛城教授は……ボス以上に人使いが荒いですから」
あはっはははははと親良が乾いた笑いをこぼしていた。
親良はフザケタ様子で、冗談っぽく言ったのだけど、私は少し落ち込んでしまう訳なのです。
自分の知らない所で、色んな人が繋がりを持っていたと言う事を。 なんだか……今までの私って身体を解体されなくても、実験動物のように飼われていたんだなぁ……なんて自虐的な事を思ってしまい、すぐに気を取り戻して不満を伝えた。
「知りませんでした」
運転席の後ろに乗り込んだ私は、運転席の親良を手に持った晃君の嘴でつつこうとした。 私は絶対的な拒絶と共に、羽根でペシペシと軽く頭を叩かれる。
「俺は男にキスをする趣味はない!!」
「……晃君って雄なんだ……」
「……いや、気になっていたんだが……。 雫は俺が誰か分かっていないのか?」
真剣に、真摯的に、切実に問いかけられてしまう。
「えっと……」
考え込んでみたものの、今まで知り合ったカラス達の区別は数匹しかついておらず、逆にその数匹であれば分からない訳がないし、それ以外であれば全く分からない。
「ごめんなさい」
スンと分かりやすく落ち込む妖カラスを、何となく申し訳なく思ってしまい抱き締める。
「まぁ、ボスが言うには、雫ちゃんは晃の赴任時期からこっちの記憶がないらしいから」
「それってほぼ全部覚えていないって事だろう?!」
「ソレだけ大きなショックがあったと言う事ですよ。 思い出してほしければ人間の姿を取れるように練習してくださいと言う事でしたよ」
「……」
落ち込んでいる妖カラスの首元を撫でていると、モヤリとその身体が崩れそうになって、
「運転中は危ないですから大人しくしてください」
そして、再びカラスの姿になった。
ようするに私が記憶喪失している数か月は、ずっと眠っていた訳ではなく、この妖カラスとの間になんらかの関係性を築いてきた。 と、言う事は把握したのでした。
「ごめんなさい」
そう言って抱きしめると、落ち込んだ妖カラスは落ち込んだまま。 代わりに親良がこう言った。
「これから仲良くすればいいでしょう」
「よろしくね。 晃君」
「あぁ、よろしく」
「それでだけど親良、食料の買い出しをしたいので寄り道お願いします」
「雫ちゃん、情緒」
親良が苦笑しながらも方向指示器が右折を示した。
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