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20.神隠し 03
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刑事さんたちの来訪に、私達は緊張する。
仕方ありませんよね……。
なんとなく、責められている気分になってしまうのですから。
「いやいや、ちょっとばかり事情をね……」
どこか弱腰な2人組の刑事さんが言うには、最後に行方不明となった少女を見たのは何時か? 不審人物を見なかったのか? と言うものだった。
「僕は2週間前でしょうか?」
上田は苦虫をかみつぶしたかのような顔をしてみせた。 緊張している生徒達に反して、親良は完全に視線をそらし窓の外を見ている。
私はと言えば緊張が移ったような気分で、妖カラスを抱きしめていた。
そして妖カラスは物凄く大人しい……妖って、なんだろう?? と、思うくらいに大人しい……もしや、ヌイグルミと入れ替わって? と、持ち上げてみれば、首をかしげて、
「くわっ?」
と、返された。
ギャップが大きすぎるのだが……。
『もしも~し』
親良との間に声を中継したくらいなのだから、本人との会話も可能だろうと接触を行う事にした。
『なんだ』
外見と低い男性の声のギャップが……混乱しそう……。
『呼んでみただけです』
『そうか……』
妖カラスは気になるけれど、今は刑事さんの方が問題でしょう。
「私は3日前ですね」
そう返したのは沙織
「その時、どんな会話を?」
なんて刑事さんが言えば、横で不貞腐れているミケが唇を尖らせながら言う。
「あんなことをしている子、問題になるのも当然じゃない。 だから、放っておけと言ったのに」
「それはどういう?」
元々、コンビニで食べ物や飲み物、生活雑貨、文具等をたかっていた少女だったが、最近では金銭を直接要求するようになっていた。
『え~~、コンビニの商品ってダサいでしょう? ソレで学校でイジメられたらお姉さん責任をとってくれるんですかぁ?』
そう言われたとミケがペラペラと話す。
何時もなら誰かが傷つくと判断できるミケの忌憚ない意見は、沙織によって制止されるが今回ばかりは止める様子は無かった。
「どういう意味なんですか?」
「だからぁ~。 可哀そうな私がいじめられないようにお金をだしなさいよ。 って、奴。 確かに薄汚い恰好をしていたけど、そんなんでいじめられても沙織のせいじゃないでしょう?」
「でも、回りの気遣いで止められるなら……」
「気遣いするのは、親と教師と役所じゃない。 通りすがりの人間になんの責任があるって言うの」
「お互い助け合いの気持ちを持つ事も大切じゃないかね?」
刑事が言えば、イラっとした様子でミケが噛みつくように言う。
「で、そうやって助けてあげようとした結果、こうやってオマワリサンに疑われているんじゃ、良い事なしじゃない」
「いや、別に疑っている訳じゃなくてね。 何か知らないかなぁ~って聞いて回っているだけだよ。 君は何か身に覚えは?」
「えっ……と、最近は、金銭を無心されるようになっていて、遠方のコンビニを使うようにしてたんで……」
「そうですか。 ご意見ありがとうございます。 また、何かあったらご協力ください」
そう言って刑事は引き下がって行き、全員が肩から力を抜いた。
「お茶を入れ直しますねぇ~」
緊張感で部屋がピリピリしていた。
上田も沙織さんも視線をそらしながらも、余り顔色が良くない。 普通に考えるなら、顔見知りの子が行方不明になって心配と考えるべきなのでしょうが……。 少女を心配しているのとは何か違うような。
『心配しているのは、自分の事だろう』
そう、頭の中に声が響いた。
『自分? ですか?』
『縁のある行方不明の少女が心配だと言うなら、心配を表に出す事ができる。 むしろ、出す事が自然だ。 だが、瞳の動き、身体に入っている力。 唇を舐める様子。 この場合心配しているのは自分達って事だ』
『そう、なの……』
だからと言って、そこを深く質問していいのかどうか? 聞くなら、多分、関わりの少ないミケなんだろう。 そう思っていた矢先に……震えながら沙織が悲痛な声を上げた。
「どうしよう!!」
沙織さんの動揺っぷりは、異常とも思えた。 それは多分、妖相手に騒ぎを抑えようと全面に出て堂々と立ちふさがった事とのギャップがあるから。
「どうかされたのですか?」
ミルク多めの紅茶を差し出せば、それを一気に飲み干し拳を強く握りながら唇を嚙んでいた。
「……あの子は、写真を持っているの……」
沙織の顔色は青白く、そして……妖カラスを前にしたとき以上に震えていた。 内容はきっと聞かない方が良いんだろうなぁ~と言う事は想像できた。
「レポートに必要だったのよ……」
沙織が言うには、今はもう閉館した個人コレクションを展示した小さな美術館に勝手に侵入してしまったところを、録画されてしまったと言う話だった。
「でも、何も盗っていないんでしょう?」
「私は盗っていないけど、誰かが取っていたなら……」
確かにソレでは、沙織さんのせいになりかねない。
「僕だって……」
上田もボソリと呟いたが、その内容は語ろうとはしなかった。
「沙織は悪くないんだから、あの時、謝っていれば!!」
ミケが言えば、静かに沙織が反論した。
「だって、私が入った時には目的だったものがなかったのよ……」
「どうせ、家族の人は価値が分かっていないんだし、許してくれたわよ」
「そうやって私の行動で盗む価値があると分かれば、どう対応するか分からないでしょう!!」
ミケと沙織が激しく言いあっていて、何時もなら間に入り止める上田は静かに俯いている。
「えっと、ようするに、その子はそういう人の秘密をネタにお金を脅し取っていたと言う訳なのですか?」
「そう、100円から1000円。 それ以上取らないし、獲物は何人もいるから毎日じゃない。 それも避けようと思えば少女が出没する場所を避ければいい。 だから何となく、許してしまうと言うか、今だけ我慢すればいいよねって……そんな感じに皆なっているんだと思う」
その少女の質の悪いところは、上手く警察に知られたら不味い証拠を作り出す事らしい。 大学内にも多くの人間が被害にあっているだろうと言う話だった。
私は、反射的に親良を見る。
「まずは弁護士に相談でしょうね。 次にするのは被害者の会を作るため被害者の名前と被害状況の確認。 ですが……その子が行方不明になってしまっている以上、その子の非常識さは無罪となってしまう可能性があるどころか、その中に犯人がいると考えられかねない所が問題ですよね」
そう言えば教授室の中は静まり返った。
「なら観点を変えて、誘拐が連続して行われているかどうかを調べてはどうだ?」
そう語ったのは妖カラスだった。
仕方ありませんよね……。
なんとなく、責められている気分になってしまうのですから。
「いやいや、ちょっとばかり事情をね……」
どこか弱腰な2人組の刑事さんが言うには、最後に行方不明となった少女を見たのは何時か? 不審人物を見なかったのか? と言うものだった。
「僕は2週間前でしょうか?」
上田は苦虫をかみつぶしたかのような顔をしてみせた。 緊張している生徒達に反して、親良は完全に視線をそらし窓の外を見ている。
私はと言えば緊張が移ったような気分で、妖カラスを抱きしめていた。
そして妖カラスは物凄く大人しい……妖って、なんだろう?? と、思うくらいに大人しい……もしや、ヌイグルミと入れ替わって? と、持ち上げてみれば、首をかしげて、
「くわっ?」
と、返された。
ギャップが大きすぎるのだが……。
『もしも~し』
親良との間に声を中継したくらいなのだから、本人との会話も可能だろうと接触を行う事にした。
『なんだ』
外見と低い男性の声のギャップが……混乱しそう……。
『呼んでみただけです』
『そうか……』
妖カラスは気になるけれど、今は刑事さんの方が問題でしょう。
「私は3日前ですね」
そう返したのは沙織
「その時、どんな会話を?」
なんて刑事さんが言えば、横で不貞腐れているミケが唇を尖らせながら言う。
「あんなことをしている子、問題になるのも当然じゃない。 だから、放っておけと言ったのに」
「それはどういう?」
元々、コンビニで食べ物や飲み物、生活雑貨、文具等をたかっていた少女だったが、最近では金銭を直接要求するようになっていた。
『え~~、コンビニの商品ってダサいでしょう? ソレで学校でイジメられたらお姉さん責任をとってくれるんですかぁ?』
そう言われたとミケがペラペラと話す。
何時もなら誰かが傷つくと判断できるミケの忌憚ない意見は、沙織によって制止されるが今回ばかりは止める様子は無かった。
「どういう意味なんですか?」
「だからぁ~。 可哀そうな私がいじめられないようにお金をだしなさいよ。 って、奴。 確かに薄汚い恰好をしていたけど、そんなんでいじめられても沙織のせいじゃないでしょう?」
「でも、回りの気遣いで止められるなら……」
「気遣いするのは、親と教師と役所じゃない。 通りすがりの人間になんの責任があるって言うの」
「お互い助け合いの気持ちを持つ事も大切じゃないかね?」
刑事が言えば、イラっとした様子でミケが噛みつくように言う。
「で、そうやって助けてあげようとした結果、こうやってオマワリサンに疑われているんじゃ、良い事なしじゃない」
「いや、別に疑っている訳じゃなくてね。 何か知らないかなぁ~って聞いて回っているだけだよ。 君は何か身に覚えは?」
「えっ……と、最近は、金銭を無心されるようになっていて、遠方のコンビニを使うようにしてたんで……」
「そうですか。 ご意見ありがとうございます。 また、何かあったらご協力ください」
そう言って刑事は引き下がって行き、全員が肩から力を抜いた。
「お茶を入れ直しますねぇ~」
緊張感で部屋がピリピリしていた。
上田も沙織さんも視線をそらしながらも、余り顔色が良くない。 普通に考えるなら、顔見知りの子が行方不明になって心配と考えるべきなのでしょうが……。 少女を心配しているのとは何か違うような。
『心配しているのは、自分の事だろう』
そう、頭の中に声が響いた。
『自分? ですか?』
『縁のある行方不明の少女が心配だと言うなら、心配を表に出す事ができる。 むしろ、出す事が自然だ。 だが、瞳の動き、身体に入っている力。 唇を舐める様子。 この場合心配しているのは自分達って事だ』
『そう、なの……』
だからと言って、そこを深く質問していいのかどうか? 聞くなら、多分、関わりの少ないミケなんだろう。 そう思っていた矢先に……震えながら沙織が悲痛な声を上げた。
「どうしよう!!」
沙織さんの動揺っぷりは、異常とも思えた。 それは多分、妖相手に騒ぎを抑えようと全面に出て堂々と立ちふさがった事とのギャップがあるから。
「どうかされたのですか?」
ミルク多めの紅茶を差し出せば、それを一気に飲み干し拳を強く握りながら唇を嚙んでいた。
「……あの子は、写真を持っているの……」
沙織の顔色は青白く、そして……妖カラスを前にしたとき以上に震えていた。 内容はきっと聞かない方が良いんだろうなぁ~と言う事は想像できた。
「レポートに必要だったのよ……」
沙織が言うには、今はもう閉館した個人コレクションを展示した小さな美術館に勝手に侵入してしまったところを、録画されてしまったと言う話だった。
「でも、何も盗っていないんでしょう?」
「私は盗っていないけど、誰かが取っていたなら……」
確かにソレでは、沙織さんのせいになりかねない。
「僕だって……」
上田もボソリと呟いたが、その内容は語ろうとはしなかった。
「沙織は悪くないんだから、あの時、謝っていれば!!」
ミケが言えば、静かに沙織が反論した。
「だって、私が入った時には目的だったものがなかったのよ……」
「どうせ、家族の人は価値が分かっていないんだし、許してくれたわよ」
「そうやって私の行動で盗む価値があると分かれば、どう対応するか分からないでしょう!!」
ミケと沙織が激しく言いあっていて、何時もなら間に入り止める上田は静かに俯いている。
「えっと、ようするに、その子はそういう人の秘密をネタにお金を脅し取っていたと言う訳なのですか?」
「そう、100円から1000円。 それ以上取らないし、獲物は何人もいるから毎日じゃない。 それも避けようと思えば少女が出没する場所を避ければいい。 だから何となく、許してしまうと言うか、今だけ我慢すればいいよねって……そんな感じに皆なっているんだと思う」
その少女の質の悪いところは、上手く警察に知られたら不味い証拠を作り出す事らしい。 大学内にも多くの人間が被害にあっているだろうと言う話だった。
私は、反射的に親良を見る。
「まずは弁護士に相談でしょうね。 次にするのは被害者の会を作るため被害者の名前と被害状況の確認。 ですが……その子が行方不明になってしまっている以上、その子の非常識さは無罪となってしまう可能性があるどころか、その中に犯人がいると考えられかねない所が問題ですよね」
そう言えば教授室の中は静まり返った。
「なら観点を変えて、誘拐が連続して行われているかどうかを調べてはどうだ?」
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