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13.友達……未満
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今日の私は、葛城正巳教授と、克己助教授と共に朝から大学に来ていた。 一緒に来れば車を運転せずに済み楽なのだけど、それだと家の事が出来なくなるため初日、二日目以降は、車二台で来て私だけ先に帰る事にしている。
何をしているのかと言えば、パソコンの使い方指導。
最近はスマホで論文を書く人も多いと言うが、就職後に支障が出るとかどうとかで
【在学中にパソコンを使えるようにしろ!!】
等と言うお達しが出たらしい。 結果として、教授や助教授がパソコン指導まで行う事になり、通達から1月も経過せずに本業に影響が出始めているそうだ。
そこで、幼い頃から
『身に着けられる技術は、将来のために学んでおきなさい』
そう厳しく育てられた私が指導係を任されたと言う訳。
大学生でもないのにね。
なんだか納得いかないわ……。
とは言え、3日も指導に通えば、生徒達が何処で躓くか分かると言うものである。 そして、大抵は1度で覚えてくれないので、ワード、エクセル、パワーポイントの使い方を私なりにファイルに纏めたと言う訳なのです。
正直、大学のネットサーバーを使わせてもらいWiki状の説明サイトをつくれば、もっと便利で速いと思うのだけど、幾らパパ教授や克己の身内と言う事であっても、セキュリティ上の問題から了承を得る事は出来なかった。
もっと臨機応変に対応するべきじゃないかしら? なんて事は思っているだけで言わない。
教授室に引きこもり、説明ファイルだけでは足りない説明の補足を行いながら、ついでとばかりにテーブルに放置された課題レポートを覗き込む。
「論文って、被らないように書く物だと思っていた」
私が訪ねれば、
「それは論文ではなく、課題レポートですよ」
駐車場の地図前で必死に私を助けようとしてくれた上田達也が答えてくれる。
毎日のように通っていれば、私だって親しく話をする人の一人や二人、三人や四人ぐらい出来ると言うもの。 とは言え、克己狙いの生徒や、ナンパ目的の生徒の鬱陶しさが消えた訳ではないのが鬱陶しい。
ふぅん……。
人のレポートの下書きを勝手に手にして読み始める。
「ちょ、やめてよ!!」
冷蔵庫にサオリと書かれたペットボトルを手にしたシュッとした立ち姿が綺麗な女性が慌てて手を伸ばしてきた。
「ダメ?」
「ダメ! ダ~メ!! 拗ねてもダメ!!」
「読まれて不味い内容なら、パパ教授や克己にだって提出出来ないでしょう?」
ねぇ~。
逃げる下書きの紙を追いかければ、踊るように紙を逃がすサオリ。 クスクス笑っているから起こっている訳ではない。
「それはまだ思索の段階だから。 完成したら見せてあげる」
「思索なのはわかっているわ。 だってサオリが課題論文をどう思ったのか書いてないもの」
「もう!! 読んじゃダメだってばぁ!!」
「雫さん。 僕の論文なら好きなだけ読んでくれて構いませんから。 質問があればどうぞ」
おずおずとしながら声をかけて来た青年、上田達也が言うから私は考え込んだ。
「異類婚と言うと、雪女や鶴の恩返しと男性が妻に迎えると言う場合が多いと思っていたけど、女性が嫁ぐと言う場合も少なくは無いのね」
「人外に嫁ぐと言うパターンも確かにありますが、日本における異類婚の始まりと言えば、やはり天皇家ではないでしょうか?」
上田の言葉にサオリが加わる。
「でもさ、妖に嫁ぐとなれば、社会的に抹消される訳だし。 単純に情報として残らない場合が多いだろうからね」
葛城ゼミはいくつか存在する民俗学のゼミ中でも、比較的オタク傾向が強い。 パパ教授や克己の周囲では、時折怪奇現象が発生すると言う噂があるせいだろう。 会話に次々人が加わってくる。
噂が……。
壁の上から見つめる目とか気にしては負けだ。
「はいはい、ソロソロ昼休憩をしてはどうかな? 買い出しが必要な子もいるだろう? 必要が無いなら口ではなく手を動かしなさいな。 評価いいのかなぁ?」
お喋りに熱が入りそうなところに、お茶目な口調で介入したのは教授の学会用資料をまとめていた克己だった。
「そ、そうですね……」
昼食の調達にと教授室からわらわらと人が出て行った。
何をしているのかと言えば、パソコンの使い方指導。
最近はスマホで論文を書く人も多いと言うが、就職後に支障が出るとかどうとかで
【在学中にパソコンを使えるようにしろ!!】
等と言うお達しが出たらしい。 結果として、教授や助教授がパソコン指導まで行う事になり、通達から1月も経過せずに本業に影響が出始めているそうだ。
そこで、幼い頃から
『身に着けられる技術は、将来のために学んでおきなさい』
そう厳しく育てられた私が指導係を任されたと言う訳。
大学生でもないのにね。
なんだか納得いかないわ……。
とは言え、3日も指導に通えば、生徒達が何処で躓くか分かると言うものである。 そして、大抵は1度で覚えてくれないので、ワード、エクセル、パワーポイントの使い方を私なりにファイルに纏めたと言う訳なのです。
正直、大学のネットサーバーを使わせてもらいWiki状の説明サイトをつくれば、もっと便利で速いと思うのだけど、幾らパパ教授や克己の身内と言う事であっても、セキュリティ上の問題から了承を得る事は出来なかった。
もっと臨機応変に対応するべきじゃないかしら? なんて事は思っているだけで言わない。
教授室に引きこもり、説明ファイルだけでは足りない説明の補足を行いながら、ついでとばかりにテーブルに放置された課題レポートを覗き込む。
「論文って、被らないように書く物だと思っていた」
私が訪ねれば、
「それは論文ではなく、課題レポートですよ」
駐車場の地図前で必死に私を助けようとしてくれた上田達也が答えてくれる。
毎日のように通っていれば、私だって親しく話をする人の一人や二人、三人や四人ぐらい出来ると言うもの。 とは言え、克己狙いの生徒や、ナンパ目的の生徒の鬱陶しさが消えた訳ではないのが鬱陶しい。
ふぅん……。
人のレポートの下書きを勝手に手にして読み始める。
「ちょ、やめてよ!!」
冷蔵庫にサオリと書かれたペットボトルを手にしたシュッとした立ち姿が綺麗な女性が慌てて手を伸ばしてきた。
「ダメ?」
「ダメ! ダ~メ!! 拗ねてもダメ!!」
「読まれて不味い内容なら、パパ教授や克己にだって提出出来ないでしょう?」
ねぇ~。
逃げる下書きの紙を追いかければ、踊るように紙を逃がすサオリ。 クスクス笑っているから起こっている訳ではない。
「それはまだ思索の段階だから。 完成したら見せてあげる」
「思索なのはわかっているわ。 だってサオリが課題論文をどう思ったのか書いてないもの」
「もう!! 読んじゃダメだってばぁ!!」
「雫さん。 僕の論文なら好きなだけ読んでくれて構いませんから。 質問があればどうぞ」
おずおずとしながら声をかけて来た青年、上田達也が言うから私は考え込んだ。
「異類婚と言うと、雪女や鶴の恩返しと男性が妻に迎えると言う場合が多いと思っていたけど、女性が嫁ぐと言う場合も少なくは無いのね」
「人外に嫁ぐと言うパターンも確かにありますが、日本における異類婚の始まりと言えば、やはり天皇家ではないでしょうか?」
上田の言葉にサオリが加わる。
「でもさ、妖に嫁ぐとなれば、社会的に抹消される訳だし。 単純に情報として残らない場合が多いだろうからね」
葛城ゼミはいくつか存在する民俗学のゼミ中でも、比較的オタク傾向が強い。 パパ教授や克己の周囲では、時折怪奇現象が発生すると言う噂があるせいだろう。 会話に次々人が加わってくる。
噂が……。
壁の上から見つめる目とか気にしては負けだ。
「はいはい、ソロソロ昼休憩をしてはどうかな? 買い出しが必要な子もいるだろう? 必要が無いなら口ではなく手を動かしなさいな。 評価いいのかなぁ?」
お喋りに熱が入りそうなところに、お茶目な口調で介入したのは教授の学会用資料をまとめていた克己だった。
「そ、そうですね……」
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