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04.客人? 居候? 家政婦ですか?!

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「まぁ、少しばかり散らかってはいるが、楽にしてください」

 少しばかり散らかって……。

 葛城家は一般住宅と言うには広すぎる。

 屋敷と呼ぶほどの豪華さはないものの、古民家住宅をベースに増築と改築を繰り返した迷路めいた巨大な家を、現代風に改良を加えた感じ……なのだけど……広いとは到底感じさせない。

 目に届く範囲には古い文献、書籍、手紙、写真に絵画、怪しいミイラまでもが散らばっているのですから……どれだけ広い家でも狭いのではないでしょうか?

 片付けをしない人の多くは、何処に何があるか理解している!! と言うのがお決まりですけど、絶対に理解していませんよね? 絶対に何処に何があるか分かっていませんよね!!

 お世話になる身である以上、強く言えないものの……心の中で私は幾度となく突っ込みを繰り返す。

「随分広い家ですね」

 それでも、ちょっとした嫌味を口走るぐらいは……許されるかしら?

「民宿を行っていた建物を購入したんです。 職業柄荷物は増え続けますし、来客も多いですからねぇ~」

 コチラの意図を介してくれない教授。

 あれ?

 首筋がチリチリとした……。
 まるで誰かに見られているような、そんな感じ。

「あの、お二人の他に人は?」

「時折、学生達がバイトで来てくれますが、今日は誰もいませんよ」

「そうですか……」

 小さな、小さな視線が幾つも見ていて……こういうの苦手だなぁ……って、思う訳。

 そして連れていかれた先は台所。

 なぜ、客人……いえ、お世話になる以上は客人ではなく居候なのですが、それでも……なぜ台所なの?! まともな人間関係を構築していなかった私が知らないだけで、これが当たり前なのかしら?

「綺麗に使われているんですね」

 とりあえず、褒めて置く事にした。

「2人とも料理が出来ないから、週に2度人に来てもらっているんだよ」

 克己は言いながらヤカンに湯を沸かす。

「適当に座って」

 広い家屋内で、部屋も沢山あるのに台所でお茶かぁ……と、考えてしまうのはお茶の時間を特別だと考えているからで……。

「なぜ、良いお茶に熱湯を注ぐの!! 茶葉が勿体ないわ!!」

 そう怒れば、教授が嬉しそうに笑った。

「あぁ、皎一君も良くそう言って怒ったなぁ~」

「なら、美味しいお茶の淹れ方を覚えましょうよ!!」

 そう言いながら、私は初めて来た家でお茶を入れ、お高い羊羹を1センチ幅に切ってテーブルに出す頃には、どこからともなく少し豪華なアルバムが持ち込まれていた。

 2人はそれぞれ1冊を広げていた。

 お茶を出しながら、横からアルバムを覗き込めば、そこにあるのは私の写真……。

 記憶にない彼等、私を知る彼等。 ストーカーなの?

 きっと怪訝な顔をしてしまったのね。 2人は苦笑して説明してくれた。

「私に子供が出来た。 そう言って自慢してきたんですよ。 皎一君がね」

 保護者だけど……皎一さんに写真を撮られた覚えはない。 それでも、私の視線の先に誰がいるかは分かる親良だ。 親良とは油断すると誘拐されて人体実験に使われる私を憂いてつけられたボディガードのような人。

 親良が写真にとり、皎一さんに報告し、その写真は何故か2人の元に届いていたと言う事かしら? そして、ソレに纏わる話も2人は良く知っていて……、私を救ってくれた皎一さんが、素っ気ない態度でいながらドレだけ大切にしてくれていたのかを知った。

 なんか……恥ずかしいような、申し訳ないような……。

「なら……少しでも、優しくしてくれればよかったのに、でないと分からない」

 愛情があったなんて……。

 でも、十分に優しかった。 知ってる……。

 地位と財産を放棄しながらも、実験動物のように扱われていた私を救ってくれたのですから、優しかったのだ。 私が……もっと、普通の家庭のようなものを望んでいて、皎一さんの優しさに気づかなかっただけで……。

「大学を卒業してからも、私達は年に数回は会っていてね。 そのたびに、私の子がねと彼は良く自慢話をしながら、いざという時にはココで君を預かってほしいと言われていたんだよ」

 そう語る教授は、お茶をした後に私のために準備されていた部屋へと案内してくれていた。 



 そして……私は葛城教授と助教授の元で世話になる……いえ、生活の世話をする事になるのだった。

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