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03.サクサクと決定される私の未来設計
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決して記憶自慢をするわけではないのですが、流石に鮮やかな緑の瞳の人を忘れる事はないと思うの。
「どなたでしょうか? 貴方の事は記憶にないの……ごめんなさい。 どうして私の事をご存じなのですか?」
「いえいえ、初めましてなのだから知らなくて当然です。 雫ちゃん。 僕は葛城正巳。 皎一君の古い友人ですよ。 よろしければ、お茶でもいかがですか?」
おっとりとした声で男は言う。
因みに彼が言う皎一と言う人は、私の保護者だ。
赤ん坊の頃、私は不死の化け物として研究機関に引き取られた。 5つの時に不死の解明にと人体実験されていた私を買い取ってくれたのが時塔皎一さんだ。 私が人らしく生きられるように色々と手を回してくれた恩人で保護者。
お茶をしている状況なのでしょうか?
悩まないではないけれど、他に選択肢はないのも事実。
「頂きます。 ところで、その、私は、どのようにお呼びするのが良いでしょうか?」
「そうですね……。 おじさま? なんでしたらパパでも構いませんよ~」
陽気にホコホコとした笑みを向けてくる。
「……では、そちらの方、えっと克己さん? と同じように教授で……」
名を問えば、そうだよ~と能天気な返事が返されてくる。
奇妙な勢いで距離感の詰めてくる2人に、逃げたくなるのも仕方がないと思うの。 心の壁とばかりに抱っこ状態から逃れようとばたつくけれど、そのまま古い和風住宅の縁側におろされる。
克己さんは細い腕の割に力持ちらしい。
そして少し落ち込んだような感じの教授と言えば、
「はぁ、まぁ……構いませんけど……ところで、どうしてコチラに?」
シュンってしていますけど、私、悪くありませんよね?
普通に考えれば、私は元居た場所に帰るべき努力をするべきなのでしょう……。
でも、
人体実験等を当たり前のようにする恐ろしい場所ではあるけれど、定期的な検診と血液提供を行えば生活が保障されていた。
皎一さんが保護者になってからは、残虐な行為は控えられたけれど、何時だって私は観察対象であり実験動物でしかなかった。
どうするのが正解なのでしょう。
『いつか独り立ちした時のために』
皎一さんはそう言って、生きていくために様々な事を身に付けさせてきたけれど、突然に放り出されてソレをどう活用すればいいかもわからない。
「……」
もしや、私って……無能……。
激しく落ち込んでしまう……。
そんな間に、葛城正巳教授はと言えば誰かに連絡を取っていた。
「皎一君? 聞きたい事があるのですが、ぇ、忙しいですか……いやいや、とりあえず1つだけ確認させてくださればソレでいいので、はいはい、君のところのおチビちゃんがパジャマ姿で家に遊びに来ているのですが、どう対応すればよいのかなと思いまして、ぇ、あ、はいはい、いえ、別に忘れていた訳ではありませんが、こういう時って普通は事前連絡を寄越しませんか? ちょ、待ってください!! ぇ、いや、そういう問題では……」
そして切られたスマホの画面をのぞき込む教授が苦笑いを向けて来た。
「しばらく、家でお預かりする事になりました。 生活に必要なものは一応揃えてありますし、生活費も振り込まれますから……えっと……大丈夫ですか? えっと、不安だったのですね」
もう大人なのに私はボロボロと涙を流していた。
教授は頭を撫でてくる。
今の私と言えば保護者に捨てられていなかった安堵で……子供のように泣きながらコクコクと頷いてしまっていた。
「あと、皎一君ですが、今は少し忙しいらしくて、雫君は大人しく隠れているようにと言っていましたよ」
「……それは……大丈夫なんでしょうか?」
「彼がそういうなら大丈夫じゃないかな? それより、お茶にしよましょうか? 何か良い茶菓子でもあったかなぁ……」
「先日、土産でいただいた羊羹を食べましょう」
そう言いながら顔を出した克己さんは、いつの間にか持ってきた春用の上着を私の肩にかけてきた。
「どなたでしょうか? 貴方の事は記憶にないの……ごめんなさい。 どうして私の事をご存じなのですか?」
「いえいえ、初めましてなのだから知らなくて当然です。 雫ちゃん。 僕は葛城正巳。 皎一君の古い友人ですよ。 よろしければ、お茶でもいかがですか?」
おっとりとした声で男は言う。
因みに彼が言う皎一と言う人は、私の保護者だ。
赤ん坊の頃、私は不死の化け物として研究機関に引き取られた。 5つの時に不死の解明にと人体実験されていた私を買い取ってくれたのが時塔皎一さんだ。 私が人らしく生きられるように色々と手を回してくれた恩人で保護者。
お茶をしている状況なのでしょうか?
悩まないではないけれど、他に選択肢はないのも事実。
「頂きます。 ところで、その、私は、どのようにお呼びするのが良いでしょうか?」
「そうですね……。 おじさま? なんでしたらパパでも構いませんよ~」
陽気にホコホコとした笑みを向けてくる。
「……では、そちらの方、えっと克己さん? と同じように教授で……」
名を問えば、そうだよ~と能天気な返事が返されてくる。
奇妙な勢いで距離感の詰めてくる2人に、逃げたくなるのも仕方がないと思うの。 心の壁とばかりに抱っこ状態から逃れようとばたつくけれど、そのまま古い和風住宅の縁側におろされる。
克己さんは細い腕の割に力持ちらしい。
そして少し落ち込んだような感じの教授と言えば、
「はぁ、まぁ……構いませんけど……ところで、どうしてコチラに?」
シュンってしていますけど、私、悪くありませんよね?
普通に考えれば、私は元居た場所に帰るべき努力をするべきなのでしょう……。
でも、
人体実験等を当たり前のようにする恐ろしい場所ではあるけれど、定期的な検診と血液提供を行えば生活が保障されていた。
皎一さんが保護者になってからは、残虐な行為は控えられたけれど、何時だって私は観察対象であり実験動物でしかなかった。
どうするのが正解なのでしょう。
『いつか独り立ちした時のために』
皎一さんはそう言って、生きていくために様々な事を身に付けさせてきたけれど、突然に放り出されてソレをどう活用すればいいかもわからない。
「……」
もしや、私って……無能……。
激しく落ち込んでしまう……。
そんな間に、葛城正巳教授はと言えば誰かに連絡を取っていた。
「皎一君? 聞きたい事があるのですが、ぇ、忙しいですか……いやいや、とりあえず1つだけ確認させてくださればソレでいいので、はいはい、君のところのおチビちゃんがパジャマ姿で家に遊びに来ているのですが、どう対応すればよいのかなと思いまして、ぇ、あ、はいはい、いえ、別に忘れていた訳ではありませんが、こういう時って普通は事前連絡を寄越しませんか? ちょ、待ってください!! ぇ、いや、そういう問題では……」
そして切られたスマホの画面をのぞき込む教授が苦笑いを向けて来た。
「しばらく、家でお預かりする事になりました。 生活に必要なものは一応揃えてありますし、生活費も振り込まれますから……えっと……大丈夫ですか? えっと、不安だったのですね」
もう大人なのに私はボロボロと涙を流していた。
教授は頭を撫でてくる。
今の私と言えば保護者に捨てられていなかった安堵で……子供のように泣きながらコクコクと頷いてしまっていた。
「あと、皎一君ですが、今は少し忙しいらしくて、雫君は大人しく隠れているようにと言っていましたよ」
「……それは……大丈夫なんでしょうか?」
「彼がそういうなら大丈夫じゃないかな? それより、お茶にしよましょうか? 何か良い茶菓子でもあったかなぁ……」
「先日、土産でいただいた羊羹を食べましょう」
そう言いながら顔を出した克己さんは、いつの間にか持ってきた春用の上着を私の肩にかけてきた。
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