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05.
32.甘い言葉と苦い経験
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私達は人生経験が足りない。
少し仲良くされたら、気を許してしまう。
ソレは愛情に飢えている。
なのに、私達は寄り添いあう器用さを持ち合わせていない。
秘密のお茶会ごっこの日。
ブラーム様の衣装が完成したと届けられた。
「なぁに、突然に色気づいて……見てみたいわ」
「勘弁してくれ」
「なぁに? 意識しているの?」
「アンタのような面倒な相手を意識する訳ないだろう?」
ブラーム様は肩を竦め苦笑していた。
「ほら、着てきなさいよ」
「身内のお茶会でお披露目なんて、バウマンの初めての作品が可哀そうだ」
「あら、私達に最初に見せるなんて、栄誉以外の何物でもないわ」
引く様子のないシュカ王女にブラーム様は肩を竦め、バウマン様へと視線を向けた。
「悪いが、シュカは諦めない。 良いか?」
「光栄です」
そんなやり取りの後、実際にバウマン様制のデザイン衣装を着たブラーム様を見た結果。
「今ある、デザインを持ってきなさい!!」
拒絶不可と言わんばかりの勢いで、シュカ王女が命じた。
大量のデザインが書かれた紙の箱が秘密基地に持ち込まれ、複数のデザインが選ばれ買い取られた。
王族専用の制服として1つのデザインが選ばれ、ソレをベースとして各殿下に似合うように変化を入れるようにと言う注文がなされた。
「本当に私のデザインなんかがよろしいのですか?」
バウマン様が、戸惑いの混ざった表情で問いかければ、王太子殿下は微笑みながら応える。
「そんな風に言うものではありません。 学園は、生徒の才能を活かすためのところです。 価値のあるものは、相応の評価を行うのは当然の事でしょう。 後、ブラーム用のデザイン、コレを私のものに修正を入れてもらえませんか?」
「なら、私はコレ!!」
ゾフィ王女がシュカ王女のデザインの中から、セクシーなものを選びブラーム様に差し出そうとすれば横合いからシュカ王女が奪った。
「ゾフィには、まだ早いわよ。 このデザインは胸が無いと無理でしょう」
「胸付きで服を作ればいいだけでしょう!!」
「服に胸をつけても、全体のバランスが悪いだけでしょうが」
何処まで本気で言っているのか、とても突っ込み辛いやり取りを、シュカ王女とゾフィ王女が初めてしまう。
「なんとかならないの? 貴方のデザインでしょう!!」
ゾフィ王女がバウマン様に話しを振るから、私は静かに祈った……。
婚約者殿に幸あれ……。
「えっと、胸の部分を何とかすればいいのですよね」
バウマン様が乙女心を無視して言うから、ゾフィ王女が怒り出してしまう。 まぁ、私でも起こるけど……。
「何とかって、何とかって、私の胸を大きくしてくれるって言うの?! 大きくできるの?! なら、大きくしてよ。 さぁ、大きくしなさい。 できるんでしょう!!」
ゾフィ王女に詰め寄られたバウマン様は、ゾフィ王女の頭越しに救いを求めて、そして全員が首を横にふり……バウマン様は言葉を選んだ。
「ソレは無理です……」
「私の胸は、無理だと、将来性がないって……うううっく……」
泣きつかれたバウマン様は、お手上げとでもいうように両手を挙げた。 バウマン様の視線がブラーム様に助けを求めているけれど、ブラーム様の背後は既に私の占有済だ。
「ま、まだ酔われているんですか?!」
「酔ってないわよ!!」
ひぃいいいいいって感じになっているバウマン様に、私はクスクスと他人事のようにブラーム様を盾に笑っていれば、恨めしそうなバウマン様と視線があった。
だから、私は音に出さず『頑張って』と応援しておく。
「えっと、胸の部分を可愛くしようかと」
「どうせ、私の胸はカワイイわよ!!」
なんて言っているうちに、バウマン様は胸の部分にレースを幾つも重ねる花束風のデザインを描き上げていた。
「ど、どうです?!」
「カワイイポイントがもっと欲しいわ」
「では、スカートをマント風にして、中に同布で作ったカボチャパンツを見せつけ、長手袋と膝下のブーツで露出を減らすのはどうでしょうか?」
「……独特ねぇ……悪くないわ。 動きやすそうだし。 うん、動きやすいのはいいわ」
と言う事で、攻撃は回避されたらしい。
シュカ王女は、自分をモデルに作られたデザインを幾つか選んだ結果、殿下達がバウマンに提示した学はベール侯爵家の年間予算を超えていた。
「良かったな」
ブラーム様が微笑みながら言った言葉に、バウマン様は微笑みで返す事は無く、むしろ恐怖が入り混じった表情をしていた。
「どうした? 顔色が悪い」
「いえ……」
ブラーム様が私へと視線を向け。
バウマン様は王太子殿下に申し出た。
「お金は……必要ありません……」
「それは、いけません。 価値には金銭が提供されて当然です。 ソレをしなければ、王族の不名誉になります。 そして、金銭を受け取り、ソレをどう活用するか君は学園にいる間に学ぶべきです」
「……ぁっ……」
「ここに居る間、君は守られている」
甘い言葉と、苦い経験は、対になっている事をバウマンは知る事になる。
少し仲良くされたら、気を許してしまう。
ソレは愛情に飢えている。
なのに、私達は寄り添いあう器用さを持ち合わせていない。
秘密のお茶会ごっこの日。
ブラーム様の衣装が完成したと届けられた。
「なぁに、突然に色気づいて……見てみたいわ」
「勘弁してくれ」
「なぁに? 意識しているの?」
「アンタのような面倒な相手を意識する訳ないだろう?」
ブラーム様は肩を竦め苦笑していた。
「ほら、着てきなさいよ」
「身内のお茶会でお披露目なんて、バウマンの初めての作品が可哀そうだ」
「あら、私達に最初に見せるなんて、栄誉以外の何物でもないわ」
引く様子のないシュカ王女にブラーム様は肩を竦め、バウマン様へと視線を向けた。
「悪いが、シュカは諦めない。 良いか?」
「光栄です」
そんなやり取りの後、実際にバウマン様制のデザイン衣装を着たブラーム様を見た結果。
「今ある、デザインを持ってきなさい!!」
拒絶不可と言わんばかりの勢いで、シュカ王女が命じた。
大量のデザインが書かれた紙の箱が秘密基地に持ち込まれ、複数のデザインが選ばれ買い取られた。
王族専用の制服として1つのデザインが選ばれ、ソレをベースとして各殿下に似合うように変化を入れるようにと言う注文がなされた。
「本当に私のデザインなんかがよろしいのですか?」
バウマン様が、戸惑いの混ざった表情で問いかければ、王太子殿下は微笑みながら応える。
「そんな風に言うものではありません。 学園は、生徒の才能を活かすためのところです。 価値のあるものは、相応の評価を行うのは当然の事でしょう。 後、ブラーム用のデザイン、コレを私のものに修正を入れてもらえませんか?」
「なら、私はコレ!!」
ゾフィ王女がシュカ王女のデザインの中から、セクシーなものを選びブラーム様に差し出そうとすれば横合いからシュカ王女が奪った。
「ゾフィには、まだ早いわよ。 このデザインは胸が無いと無理でしょう」
「胸付きで服を作ればいいだけでしょう!!」
「服に胸をつけても、全体のバランスが悪いだけでしょうが」
何処まで本気で言っているのか、とても突っ込み辛いやり取りを、シュカ王女とゾフィ王女が初めてしまう。
「なんとかならないの? 貴方のデザインでしょう!!」
ゾフィ王女がバウマン様に話しを振るから、私は静かに祈った……。
婚約者殿に幸あれ……。
「えっと、胸の部分を何とかすればいいのですよね」
バウマン様が乙女心を無視して言うから、ゾフィ王女が怒り出してしまう。 まぁ、私でも起こるけど……。
「何とかって、何とかって、私の胸を大きくしてくれるって言うの?! 大きくできるの?! なら、大きくしてよ。 さぁ、大きくしなさい。 できるんでしょう!!」
ゾフィ王女に詰め寄られたバウマン様は、ゾフィ王女の頭越しに救いを求めて、そして全員が首を横にふり……バウマン様は言葉を選んだ。
「ソレは無理です……」
「私の胸は、無理だと、将来性がないって……うううっく……」
泣きつかれたバウマン様は、お手上げとでもいうように両手を挙げた。 バウマン様の視線がブラーム様に助けを求めているけれど、ブラーム様の背後は既に私の占有済だ。
「ま、まだ酔われているんですか?!」
「酔ってないわよ!!」
ひぃいいいいいって感じになっているバウマン様に、私はクスクスと他人事のようにブラーム様を盾に笑っていれば、恨めしそうなバウマン様と視線があった。
だから、私は音に出さず『頑張って』と応援しておく。
「えっと、胸の部分を可愛くしようかと」
「どうせ、私の胸はカワイイわよ!!」
なんて言っているうちに、バウマン様は胸の部分にレースを幾つも重ねる花束風のデザインを描き上げていた。
「ど、どうです?!」
「カワイイポイントがもっと欲しいわ」
「では、スカートをマント風にして、中に同布で作ったカボチャパンツを見せつけ、長手袋と膝下のブーツで露出を減らすのはどうでしょうか?」
「……独特ねぇ……悪くないわ。 動きやすそうだし。 うん、動きやすいのはいいわ」
と言う事で、攻撃は回避されたらしい。
シュカ王女は、自分をモデルに作られたデザインを幾つか選んだ結果、殿下達がバウマンに提示した学はベール侯爵家の年間予算を超えていた。
「良かったな」
ブラーム様が微笑みながら言った言葉に、バウマン様は微笑みで返す事は無く、むしろ恐怖が入り混じった表情をしていた。
「どうした? 顔色が悪い」
「いえ……」
ブラーム様が私へと視線を向け。
バウマン様は王太子殿下に申し出た。
「お金は……必要ありません……」
「それは、いけません。 価値には金銭が提供されて当然です。 ソレをしなければ、王族の不名誉になります。 そして、金銭を受け取り、ソレをどう活用するか君は学園にいる間に学ぶべきです」
「……ぁっ……」
「ここに居る間、君は守られている」
甘い言葉と、苦い経験は、対になっている事をバウマンは知る事になる。
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