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03.
24.撤収作業
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「さぁ、片付けよう」
「このままにしておいてはダメでしょうか?」
名残惜しそうにマティルは言う。
「ダメだ」
「どうして、ここはもう使われていないんでしょう?」
「使われていないし、日頃は番人もいない。 だから簡単に人が入る事ができる」
マティルはピクッと反応した。
子供のような日々を送っていたが、商売人としての血がながれ、物心ついた時から商売人であれと厳しく育てられてきたマティルだ。
彼女が学んできたものの中の1つに青田買いと言うものがあった。 まだ頭角を現していない職人達を支援して、その才能を開花させて、その人の作り出すものを独占すると言うものだ。 その行為は、良い職人を作り出し、良い商品が作られ、職人の価値を上げ、何よりも儲かる。 まぁ、ソレがブラームの1か月不在期間を作ったのだから因果なものであろう。
バウマンの芸術に関する素質は、売り方次第で金になる。 と、マティルは商売人として思っている。 ただし、それには新しい流行を作り出さなければいけない。
金換算が電流のように脳裏を駆け巡った。
現在は、全般的に華美を避けたものが貴族の品性として考えられている。 その流行を無視しているのは、バウマンがファーストダンスを求めた他国に一度嫁いだシュカ王女だけ。
「ぁ……」
「どうした?」
「いえ、何でもございません」
なぜ、シュカ王女にダンスを申し込んだのか……、今ようやく理解したのだ。
私って……馬鹿だわ……。 別に嫉妬を露わに責めた事はなかったけれど、彼を理解する事もなく勝手に責めていた事に罪悪感を覚え苦笑する。
「バウマン様」
不意に声をかけられ、布地をブラームの手を借りて撤収しているバウマンは視線をマティルへと向けた。
「なんでしょうか?」
「頂いた品、大切にしますわ」
「ぇ、ありがとうございます」
急な事に頭の中は?でいっぱいになっており、感謝の言葉は反射的なもので感情は籠っていなかった。
「良かったな」
ブラームに言われて初めて、バウマンは単純に喜んで良い事なのかと実感し、そして必死に自分の感情を表す言葉を考え出した。
「はい、私が大切にされているようでとても嬉しいです」
顔が見えない距離にいても、バウマンの声には喜びが表現されており……部屋の向こうにいるマティルは赤面すると同時に自分を責めていた。
そして、ブラームの心の中には、甘酸っぱい2人の感情にあてられ、木枯らしが吹いていた。
る~るるる~~。
「ブラーム様!! その……誰か、お手伝いを呼んでもらえないものでしょうか?」
カップの棚を見上げながらマティルが言えば、
「ぇ? ぁ……、いや、まぁ、無理だ。 懲罰は懲罰房から撤収を終えるまでが懲罰生活だ。 手伝いは呼べない。 だが、番人に手伝わせよう。 後、馬車も準備した方がいいな。 俺は一度戻って、馬車と木箱を準備して、バウマンの部屋を準備するよう命じてくる。 大人しく撤収の準備をしていろよ」
「待ってください。 本当に私が金級の寮に入るんですか?!」
「あぁ、その方が静かで良いだろう」
「それはそうですが、贔屓だと言われませんか?」
「言われんよ。 お前の騎士能力は公表されていない。 なら、俺の訓練に付き合わせる事は拷問に近い。 それに、見習い騎士と言う体裁で世話役につかせたとしたなら、懲罰の延長としか考えられないだろう。 贔屓が事実だったとしても、世間が贔屓だと思わなければソレでいいさ」
そう言って、ブラームは笑って見せた。
「このままにしておいてはダメでしょうか?」
名残惜しそうにマティルは言う。
「ダメだ」
「どうして、ここはもう使われていないんでしょう?」
「使われていないし、日頃は番人もいない。 だから簡単に人が入る事ができる」
マティルはピクッと反応した。
子供のような日々を送っていたが、商売人としての血がながれ、物心ついた時から商売人であれと厳しく育てられてきたマティルだ。
彼女が学んできたものの中の1つに青田買いと言うものがあった。 まだ頭角を現していない職人達を支援して、その才能を開花させて、その人の作り出すものを独占すると言うものだ。 その行為は、良い職人を作り出し、良い商品が作られ、職人の価値を上げ、何よりも儲かる。 まぁ、ソレがブラームの1か月不在期間を作ったのだから因果なものであろう。
バウマンの芸術に関する素質は、売り方次第で金になる。 と、マティルは商売人として思っている。 ただし、それには新しい流行を作り出さなければいけない。
金換算が電流のように脳裏を駆け巡った。
現在は、全般的に華美を避けたものが貴族の品性として考えられている。 その流行を無視しているのは、バウマンがファーストダンスを求めた他国に一度嫁いだシュカ王女だけ。
「ぁ……」
「どうした?」
「いえ、何でもございません」
なぜ、シュカ王女にダンスを申し込んだのか……、今ようやく理解したのだ。
私って……馬鹿だわ……。 別に嫉妬を露わに責めた事はなかったけれど、彼を理解する事もなく勝手に責めていた事に罪悪感を覚え苦笑する。
「バウマン様」
不意に声をかけられ、布地をブラームの手を借りて撤収しているバウマンは視線をマティルへと向けた。
「なんでしょうか?」
「頂いた品、大切にしますわ」
「ぇ、ありがとうございます」
急な事に頭の中は?でいっぱいになっており、感謝の言葉は反射的なもので感情は籠っていなかった。
「良かったな」
ブラームに言われて初めて、バウマンは単純に喜んで良い事なのかと実感し、そして必死に自分の感情を表す言葉を考え出した。
「はい、私が大切にされているようでとても嬉しいです」
顔が見えない距離にいても、バウマンの声には喜びが表現されており……部屋の向こうにいるマティルは赤面すると同時に自分を責めていた。
そして、ブラームの心の中には、甘酸っぱい2人の感情にあてられ、木枯らしが吹いていた。
る~るるる~~。
「ブラーム様!! その……誰か、お手伝いを呼んでもらえないものでしょうか?」
カップの棚を見上げながらマティルが言えば、
「ぇ? ぁ……、いや、まぁ、無理だ。 懲罰は懲罰房から撤収を終えるまでが懲罰生活だ。 手伝いは呼べない。 だが、番人に手伝わせよう。 後、馬車も準備した方がいいな。 俺は一度戻って、馬車と木箱を準備して、バウマンの部屋を準備するよう命じてくる。 大人しく撤収の準備をしていろよ」
「待ってください。 本当に私が金級の寮に入るんですか?!」
「あぁ、その方が静かで良いだろう」
「それはそうですが、贔屓だと言われませんか?」
「言われんよ。 お前の騎士能力は公表されていない。 なら、俺の訓練に付き合わせる事は拷問に近い。 それに、見習い騎士と言う体裁で世話役につかせたとしたなら、懲罰の延長としか考えられないだろう。 贔屓が事実だったとしても、世間が贔屓だと思わなければソレでいいさ」
そう言って、ブラームは笑って見せた。
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