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13.身勝手で狂暴な婚約者殿 02
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「私、あそこまで酷くありませんわ」
「極端な例え話ですよ。 逆にほら、彼方の方のように美しく食事をされる方と、ご一緒している場面を考えて下さい。 気分が良いとは思いませんか?」
「それは……そうですわね」
その後も、ダメ出しと、褒め倒しともいえる言葉が交互に繰り広げられる。
今でも既に敵が多いのに、なぜこの人は敵を増やしたがるのかと頭が痛くなってくると言うものだ。
「あぁ、あの方の食べ方はとても美しい。 そして、彼方の方は微笑み方の印象がいい。 見習うなら、あのような方々にしてください。 あの方々のように食事をしてくださるなら、私もマティルとの食事を楽しいと思える事でしょう」
なんだかカチンっと来た。
心配しているのに、責めるような事を言われたから?
私との食事が楽しくないから無視すると言われているようだったから?
とにかく瞬間的にむかついた……訳なんです。
「では、その方々に同席を願われてはいかがですか?」
「何を馬鹿な事を……不貞を進めるのは止めてください。 下品ですよ」
溜息交じりに言いながらバウマン様は言葉を続ける。
「私はね。 あのような方々とお友達になってみてはいかがですか? と言っているのです。 マティルにとって損になるようには思えませんよ」
「……機会があれば……お誘いしてみますわ」
一応、声のかけやすい子爵令嬢や、男爵令嬢を示しているあたり、嫌味だと苛立った。 もういい……。
「授業の準備がありますから、失礼してもよろしいでしょうか?」
「そうですか……」
そしてようやく冷え切った肉たっぷりのビーフシチューに手をつけるバウマン様。
温かな食事を冷たくなってから食べるのも、行儀が悪いのではないかしら? と、思いはしましたが、豪快でありながら美しい所作で目の前の料理を食べていく姿を見れば、指摘の使用も無く……私が苛立ちと共に口にしたのは
「バウマン様、意味もなく敵を作りになるのはおやめになってはいかがですか?」
「敵を作るつもりなどありません。 何れの方も気にかけなければいけない相手には思えませんので」
「王族以外は眼中にないってよ」
「流石、没落侯爵家様は違うねぇ~」
なんて感じのボソボソ声が響き連鎖していくから、私はホラっとバウマン様へと視線を向けた。
「無価値なサルに何を思われていても気にならないので、私はコレでいいのですよ」
「いい加減にしろ!! 好き放題言いやがって!!」
「あぁ、お前だって、王族の方々に無価値だと評価されたじゃないか!!」
「外見ばかりを気にする中身空っぽの奴が、俺達を評価するなんてなぁ。 侯爵家の名を落とした無能者が」
「婚約者の家に寄生している虫以下の奴が、偉そうな口をきけないようにしてやろうか?!」
なんて話になってきて、私はギョッとする訳です。
「バウマン様……、ブラーム様はシバラクご不在なのですよ。 それに、敵ばかり作られては、私も困ります」
「それは、そうですね……。 では、害のないようにしてきます」
上位貴族が何故、上位貴族なのか?
ソレは血統によるギフトが高確率で引き継がれるため。
侯爵家以上の者が静観を決める中、バウマン様は暴力でもってその場を制した。
「余り暴力は好きでは無いのですが……」
バウマン様がボソリと言えば、喧嘩相手である令息達の婚約者が責め立てた。
「良く、そんな事が言えますわねぇ!!」
「あぁ、どうして意味を理解していただけないのでしょうか? 暴力が好きではない私は、暴力的な事を殆ど行った事がないのです。 コレの意味するところを理解していただけませんか?」
そう言いながら婚約者の手を借りて、上体を起こした令息の身体をもう一度横にするように、上半身を踏みつければ鈍い音が響いた。
「はぁ? っつ、いってぇえ」
「私、手加減と言うものを理解できていないのですよ……」
余程でない限りは、今後バウマン様の暴力を恐れて人は避けていくでしょう。 でも、避ける事が出来る人は良いのでしょうが……出来ない私としては……その暴力が自分に向かうのでは? と、怯えずにいられない訳なのです。
「極端な例え話ですよ。 逆にほら、彼方の方のように美しく食事をされる方と、ご一緒している場面を考えて下さい。 気分が良いとは思いませんか?」
「それは……そうですわね」
その後も、ダメ出しと、褒め倒しともいえる言葉が交互に繰り広げられる。
今でも既に敵が多いのに、なぜこの人は敵を増やしたがるのかと頭が痛くなってくると言うものだ。
「あぁ、あの方の食べ方はとても美しい。 そして、彼方の方は微笑み方の印象がいい。 見習うなら、あのような方々にしてください。 あの方々のように食事をしてくださるなら、私もマティルとの食事を楽しいと思える事でしょう」
なんだかカチンっと来た。
心配しているのに、責めるような事を言われたから?
私との食事が楽しくないから無視すると言われているようだったから?
とにかく瞬間的にむかついた……訳なんです。
「では、その方々に同席を願われてはいかがですか?」
「何を馬鹿な事を……不貞を進めるのは止めてください。 下品ですよ」
溜息交じりに言いながらバウマン様は言葉を続ける。
「私はね。 あのような方々とお友達になってみてはいかがですか? と言っているのです。 マティルにとって損になるようには思えませんよ」
「……機会があれば……お誘いしてみますわ」
一応、声のかけやすい子爵令嬢や、男爵令嬢を示しているあたり、嫌味だと苛立った。 もういい……。
「授業の準備がありますから、失礼してもよろしいでしょうか?」
「そうですか……」
そしてようやく冷え切った肉たっぷりのビーフシチューに手をつけるバウマン様。
温かな食事を冷たくなってから食べるのも、行儀が悪いのではないかしら? と、思いはしましたが、豪快でありながら美しい所作で目の前の料理を食べていく姿を見れば、指摘の使用も無く……私が苛立ちと共に口にしたのは
「バウマン様、意味もなく敵を作りになるのはおやめになってはいかがですか?」
「敵を作るつもりなどありません。 何れの方も気にかけなければいけない相手には思えませんので」
「王族以外は眼中にないってよ」
「流石、没落侯爵家様は違うねぇ~」
なんて感じのボソボソ声が響き連鎖していくから、私はホラっとバウマン様へと視線を向けた。
「無価値なサルに何を思われていても気にならないので、私はコレでいいのですよ」
「いい加減にしろ!! 好き放題言いやがって!!」
「あぁ、お前だって、王族の方々に無価値だと評価されたじゃないか!!」
「外見ばかりを気にする中身空っぽの奴が、俺達を評価するなんてなぁ。 侯爵家の名を落とした無能者が」
「婚約者の家に寄生している虫以下の奴が、偉そうな口をきけないようにしてやろうか?!」
なんて話になってきて、私はギョッとする訳です。
「バウマン様……、ブラーム様はシバラクご不在なのですよ。 それに、敵ばかり作られては、私も困ります」
「それは、そうですね……。 では、害のないようにしてきます」
上位貴族が何故、上位貴族なのか?
ソレは血統によるギフトが高確率で引き継がれるため。
侯爵家以上の者が静観を決める中、バウマン様は暴力でもってその場を制した。
「余り暴力は好きでは無いのですが……」
バウマン様がボソリと言えば、喧嘩相手である令息達の婚約者が責め立てた。
「良く、そんな事が言えますわねぇ!!」
「あぁ、どうして意味を理解していただけないのでしょうか? 暴力が好きではない私は、暴力的な事を殆ど行った事がないのです。 コレの意味するところを理解していただけませんか?」
そう言いながら婚約者の手を借りて、上体を起こした令息の身体をもう一度横にするように、上半身を踏みつければ鈍い音が響いた。
「はぁ? っつ、いってぇえ」
「私、手加減と言うものを理解できていないのですよ……」
余程でない限りは、今後バウマン様の暴力を恐れて人は避けていくでしょう。 でも、避ける事が出来る人は良いのでしょうが……出来ない私としては……その暴力が自分に向かうのでは? と、怯えずにいられない訳なのです。
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