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三章『世界旅行編』
第二十五話『タラサ.ウェルテックス』
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目の前のブサイクな竜、体の大きさはこのキャラック船の何十倍もある。
僕の魔法や能力では仕留めるどころか、傷すらも付けれないだろう。
「あっ、思い出した。こいつ『タラサ.ウェルテックス』だ。個体数が少なく、ここら辺の海に出現する魔物だ。写真や目撃情報がほとんど無いから太古の魔物かと思ったけど……フフっ、僕ってラッキー、出会えちゃった」
ハッピーではあるが、この状況……取り敢えず船を壊されるのは困る。
荷物あるし、ホアイダあるし、移動手段だし。
「仕方ない、攻略を見つけるとこから始めるか」
ローブを羽根に変え、宙を舞う。
そして竜――タラサの居る方へ行き、船から遠ざけるように誘導する。
「ホアイダ!右に先行しろ!船を操縦するんだ!」
「マレフィクス!貴方はどうするのですか!!」
「直ぐに戻る!黙って操縦して逃げろ!」
「絶対!戻って来て下さい!信じますから!死なないで下さい!」
ホアイダに船を任せ、順調にタラサと船を離す。
船は離れて行き、タラサは船より早いスピードで僕の方へ勢い良く向かってくる。
「ここら辺で良いか……能力番号15『岩を降らす能力』」
今回はかなり大きな岩を振らせた。
一個一個が船くらい大きい岩が、タラサの硬そうな体に激突する。
「うがァァァァァァ!!」
効いているようだ。
皮膚が剥がれ、赤めの肉が見え始める。
しかし、タラサも黙って岩を受け続けず、僕に向けて口から毒のようなものを吐いた。
その毒は、弾丸のように素早く、かなり広い範囲に広がる。
「バカモネギ野郎め」
しかし、僕は降らせてる岩を盾にし、毒を上手く防いだ。
だが、タラサは切り替えるように、降ってくる岩を尻尾で弾き返してきた。
――なんてパワーの持ち主だ。
野球選手がソフトボールを打ち返すのとは訳が違うのに、同じように岩を打ち返してくる。
「避けれちゃうぜ」
岩が打ち返される速さはかなり早いが、奴は一回づつしか岩を打ち返せない。
避けるのは簡単だ。
そう思って油断してると、奴が弾き返してきた岩が降ってる途中の岩にぶつかり、岩の破片が飛んできた。
――まぐれじゃない、こいつは狙ってやったのだ。
その確信がついたのは、タラサが二度三度同じことをしてきたからだ。
「げっ!!」
とうとう、岩の破片は僕の腕や腹に命中してしまう。
下手したら腕が吹っ飛んでもおかしくなかった。
「ハハッ、ソフトボールは飽きたかい?良いだろう」
能力を解除し、能力番号3『手から釣り糸を出す能力』を発動させる。
「がぐぁ!」
タラサが再び毒を吐いてきたが、下に潜るように空中で身をは捻って避ける。
そして、手から出た釣り糸をタラサの目に引っ掛け、糸を引っ張りながら華麗にタラサの死角に回る。
「永遠の暗闇に……行ってらっしゃい」
――能力番号17『指を銃に変える能力』。
両指全てを使い、指をロケランに変える。
ロケランを一発二発と、丁寧にタラサの両目目掛けて放つ。
ロケット弾が、いとも簡単にタラサの両目に当たる。
「うぎゃがァァァァァァァ!!」
悲鳴が上がり、痛みに耐えれなくなったタラサは海へと潜る。
渦を巻きながら、荒波を起こし、僕を海へと近寄らせないように暴れている。
タラサは、両目が切れたからほとんど見えていないだろう。
しかし、奴には鼻がある。
本に書いていたが、タラサはサメ並に鼻が良い。
僕の位置を把握するのに問題ないはずだ。
「君のフィールドで死にたいらしいね」
――能力番号19『衣類を生物に変える能力』。
ズボンを人魚のような尾びれに変え、ローブだった翼を二匹の小さなイルカに変える。
イルカに引っ張ってもらいつつ、自分でも泳ぐことで、泳ぎのスピードは二倍だ。
渦から逃れた場所まで来ると、イルカの口から釣り糸を出し、タラサの皮膚に引っ掛ける。
良く見ると、タラサには小さな腕があり、亀の甲羅に似たものも背中に付いている。
この小さな腕、体の何倍も細い。
まずはこの腕を切断することを、試みてみよう。
タラサの腕に釣り糸を巻き付けると、二匹のイルカに糸を逆方向に精一杯引っ張ってもらう。
更に、二匹のイルカを力のあるマグロに変え、引っ張ってもらう力を強くする。
勿論だが、これだけでは切れない。
――能力番号1『爪を尖らせる能力』。
自身の爪を尖らせ、タラサの腕を何回も何回も引っ掻き、突き刺し、傷付ける。
「んん!?」
しかし、タラサに吹き飛ばされ、腕から離れてしまう。
だが、僕は執念深いのだ。
ここからでも、必ず腕を切る。
再び、指をロケランに変え、タラサの腕に向けてロケット弾を放つ。
ロケット弾の衝撃で、タラサの腕は引きちぎれる。
「うがあああぁァァァ!!」
タラサは痛み、もがき、苦しみ、暴れる。
そして、僕に真っ直ぐと向かって来た。
正直、スピードでは逃げきれない。
それでも僕は、沈んでいくタラサのちぎれた腕に向かって全力で泳ぐ。
――間に合え!
もうタラサが突っ込んできて、食いちぎられるという近さで、タラサの腕の所まで辿り着いた。
しかし、僕の勝ちだ。
――能力番号1『爪を尖らせる能力』。
この能力、爪を尖らせるのは自分の爪だけだと一度も言ってない。
タラサの爪はかなり尖っている……この爪を尖れば巨人用の剣と呼べるだろう。
タラサの爪は急激に伸び、そして鋭く尖る。
その爪は、突っ込んで来たタラサの顔を縦に貫いた。
「ぎゅっ……うがぎゃあああああぁぁぁァ!!」
「ぶはっ!?ちっ、まだ死なねぇのか」
爪がタラサの顔を貫いた瞬間、タラサは海の水ごと僕を上空に吹き飛ばした。
海から出れたが、タラサが僕を避けて海の中に逃げようとしてしまってるのは、かなりまずい状況だ。
逃すわけにはいかない。
「能力番号5『相手から恐怖を無くす能力』」
今この瞬間から、タラサの恐怖は一切無くなった。
僕への恐怖も、痛みの恐怖も、死への恐怖も無い。
つまり、今の奴が海へ逃げる理由は無くなった。
奴から見たら、僕はただの餌だ。
「がるるルルルルル!」
「それで良い!」
服を羽根に変え、向かってくるタラサ目掛けてロケランを構える。
しかし、タラサは口で何かを咥え、それを投げてきた。
「かっ!カジキだと!?」
タラサが投げてきたのは、上顎が剣のように長く鋭く伸びている体長4mのカジキだった。
僕は慌てて、下に避けるが、それこそ奴の罠だった。
カジキマグロの下には、既にタラサの顔があり、大きな口を開けて僕を待っていた。
「結構賢いんだね」
タラサは僕の腹を、鋭く尖った歯で……噛んだ。
* * *
痛い気がする。
挟まれている感覚はあるが、体の痛みは無い。
楽しかったし、後悔はないから……死ぬなら苦しまないで死にたい。
「ありゃ?」
恐る恐る目を開けると、僕の体は無事だった。
目の前に居たのは、肉も皮膚もぺらぺらでくしゃくしゃのタラサだ。
まるで紙のような質感になっており、その紙の素材の歯で僕を挟んでいる。
「紙になってる?まさか……」
「マレフィクス!燃やせ!」
聞き覚えのある声――上空を見上げると、鷹に引っ張られ飛んでいるヴェンディが居た。
つまり、タラサが紙になったのはヴェンディのせいだ。
「ちっ、フォティア.ラナ」
少し気に食わないが、タラサに火を放つ。
タラサは、悲鳴を上げるもなく、顔が一瞬で燃え尽きてしまう。
元に戻った体も、海へと沈んでいく。
「なぜ居る?ヴェンディ」
「まずはお礼だろ?マレフィクス」
――こいつ、夏休みをセイヴァーとしての活動に使っていたはず……なぜこの場に居るのだ?
疑問はたくさんあるが、今はそんなことどうでもいい。
こいつに助けられ、命が伸びたという事実に無性に腹が立つ。
死んだ方がマシ……この言葉は今の僕にピッタリだ。
「死んでも言うもんか」
「そう拗ねるなって」
重要なのは、いつから僕とタラサの戦いを見ていたかだ。
もし早い段階で見ていたなら、こいつは僕が複数能力を使ってる所も目撃したはず。
ひょっとしたら、僕が思っている以上に、厄介なことになったのしれない。
僕の魔法や能力では仕留めるどころか、傷すらも付けれないだろう。
「あっ、思い出した。こいつ『タラサ.ウェルテックス』だ。個体数が少なく、ここら辺の海に出現する魔物だ。写真や目撃情報がほとんど無いから太古の魔物かと思ったけど……フフっ、僕ってラッキー、出会えちゃった」
ハッピーではあるが、この状況……取り敢えず船を壊されるのは困る。
荷物あるし、ホアイダあるし、移動手段だし。
「仕方ない、攻略を見つけるとこから始めるか」
ローブを羽根に変え、宙を舞う。
そして竜――タラサの居る方へ行き、船から遠ざけるように誘導する。
「ホアイダ!右に先行しろ!船を操縦するんだ!」
「マレフィクス!貴方はどうするのですか!!」
「直ぐに戻る!黙って操縦して逃げろ!」
「絶対!戻って来て下さい!信じますから!死なないで下さい!」
ホアイダに船を任せ、順調にタラサと船を離す。
船は離れて行き、タラサは船より早いスピードで僕の方へ勢い良く向かってくる。
「ここら辺で良いか……能力番号15『岩を降らす能力』」
今回はかなり大きな岩を振らせた。
一個一個が船くらい大きい岩が、タラサの硬そうな体に激突する。
「うがァァァァァァ!!」
効いているようだ。
皮膚が剥がれ、赤めの肉が見え始める。
しかし、タラサも黙って岩を受け続けず、僕に向けて口から毒のようなものを吐いた。
その毒は、弾丸のように素早く、かなり広い範囲に広がる。
「バカモネギ野郎め」
しかし、僕は降らせてる岩を盾にし、毒を上手く防いだ。
だが、タラサは切り替えるように、降ってくる岩を尻尾で弾き返してきた。
――なんてパワーの持ち主だ。
野球選手がソフトボールを打ち返すのとは訳が違うのに、同じように岩を打ち返してくる。
「避けれちゃうぜ」
岩が打ち返される速さはかなり早いが、奴は一回づつしか岩を打ち返せない。
避けるのは簡単だ。
そう思って油断してると、奴が弾き返してきた岩が降ってる途中の岩にぶつかり、岩の破片が飛んできた。
――まぐれじゃない、こいつは狙ってやったのだ。
その確信がついたのは、タラサが二度三度同じことをしてきたからだ。
「げっ!!」
とうとう、岩の破片は僕の腕や腹に命中してしまう。
下手したら腕が吹っ飛んでもおかしくなかった。
「ハハッ、ソフトボールは飽きたかい?良いだろう」
能力を解除し、能力番号3『手から釣り糸を出す能力』を発動させる。
「がぐぁ!」
タラサが再び毒を吐いてきたが、下に潜るように空中で身をは捻って避ける。
そして、手から出た釣り糸をタラサの目に引っ掛け、糸を引っ張りながら華麗にタラサの死角に回る。
「永遠の暗闇に……行ってらっしゃい」
――能力番号17『指を銃に変える能力』。
両指全てを使い、指をロケランに変える。
ロケランを一発二発と、丁寧にタラサの両目目掛けて放つ。
ロケット弾が、いとも簡単にタラサの両目に当たる。
「うぎゃがァァァァァァァ!!」
悲鳴が上がり、痛みに耐えれなくなったタラサは海へと潜る。
渦を巻きながら、荒波を起こし、僕を海へと近寄らせないように暴れている。
タラサは、両目が切れたからほとんど見えていないだろう。
しかし、奴には鼻がある。
本に書いていたが、タラサはサメ並に鼻が良い。
僕の位置を把握するのに問題ないはずだ。
「君のフィールドで死にたいらしいね」
――能力番号19『衣類を生物に変える能力』。
ズボンを人魚のような尾びれに変え、ローブだった翼を二匹の小さなイルカに変える。
イルカに引っ張ってもらいつつ、自分でも泳ぐことで、泳ぎのスピードは二倍だ。
渦から逃れた場所まで来ると、イルカの口から釣り糸を出し、タラサの皮膚に引っ掛ける。
良く見ると、タラサには小さな腕があり、亀の甲羅に似たものも背中に付いている。
この小さな腕、体の何倍も細い。
まずはこの腕を切断することを、試みてみよう。
タラサの腕に釣り糸を巻き付けると、二匹のイルカに糸を逆方向に精一杯引っ張ってもらう。
更に、二匹のイルカを力のあるマグロに変え、引っ張ってもらう力を強くする。
勿論だが、これだけでは切れない。
――能力番号1『爪を尖らせる能力』。
自身の爪を尖らせ、タラサの腕を何回も何回も引っ掻き、突き刺し、傷付ける。
「んん!?」
しかし、タラサに吹き飛ばされ、腕から離れてしまう。
だが、僕は執念深いのだ。
ここからでも、必ず腕を切る。
再び、指をロケランに変え、タラサの腕に向けてロケット弾を放つ。
ロケット弾の衝撃で、タラサの腕は引きちぎれる。
「うがあああぁァァァ!!」
タラサは痛み、もがき、苦しみ、暴れる。
そして、僕に真っ直ぐと向かって来た。
正直、スピードでは逃げきれない。
それでも僕は、沈んでいくタラサのちぎれた腕に向かって全力で泳ぐ。
――間に合え!
もうタラサが突っ込んできて、食いちぎられるという近さで、タラサの腕の所まで辿り着いた。
しかし、僕の勝ちだ。
――能力番号1『爪を尖らせる能力』。
この能力、爪を尖らせるのは自分の爪だけだと一度も言ってない。
タラサの爪はかなり尖っている……この爪を尖れば巨人用の剣と呼べるだろう。
タラサの爪は急激に伸び、そして鋭く尖る。
その爪は、突っ込んで来たタラサの顔を縦に貫いた。
「ぎゅっ……うがぎゃあああああぁぁぁァ!!」
「ぶはっ!?ちっ、まだ死なねぇのか」
爪がタラサの顔を貫いた瞬間、タラサは海の水ごと僕を上空に吹き飛ばした。
海から出れたが、タラサが僕を避けて海の中に逃げようとしてしまってるのは、かなりまずい状況だ。
逃すわけにはいかない。
「能力番号5『相手から恐怖を無くす能力』」
今この瞬間から、タラサの恐怖は一切無くなった。
僕への恐怖も、痛みの恐怖も、死への恐怖も無い。
つまり、今の奴が海へ逃げる理由は無くなった。
奴から見たら、僕はただの餌だ。
「がるるルルルルル!」
「それで良い!」
服を羽根に変え、向かってくるタラサ目掛けてロケランを構える。
しかし、タラサは口で何かを咥え、それを投げてきた。
「かっ!カジキだと!?」
タラサが投げてきたのは、上顎が剣のように長く鋭く伸びている体長4mのカジキだった。
僕は慌てて、下に避けるが、それこそ奴の罠だった。
カジキマグロの下には、既にタラサの顔があり、大きな口を開けて僕を待っていた。
「結構賢いんだね」
タラサは僕の腹を、鋭く尖った歯で……噛んだ。
* * *
痛い気がする。
挟まれている感覚はあるが、体の痛みは無い。
楽しかったし、後悔はないから……死ぬなら苦しまないで死にたい。
「ありゃ?」
恐る恐る目を開けると、僕の体は無事だった。
目の前に居たのは、肉も皮膚もぺらぺらでくしゃくしゃのタラサだ。
まるで紙のような質感になっており、その紙の素材の歯で僕を挟んでいる。
「紙になってる?まさか……」
「マレフィクス!燃やせ!」
聞き覚えのある声――上空を見上げると、鷹に引っ張られ飛んでいるヴェンディが居た。
つまり、タラサが紙になったのはヴェンディのせいだ。
「ちっ、フォティア.ラナ」
少し気に食わないが、タラサに火を放つ。
タラサは、悲鳴を上げるもなく、顔が一瞬で燃え尽きてしまう。
元に戻った体も、海へと沈んでいく。
「なぜ居る?ヴェンディ」
「まずはお礼だろ?マレフィクス」
――こいつ、夏休みをセイヴァーとしての活動に使っていたはず……なぜこの場に居るのだ?
疑問はたくさんあるが、今はそんなことどうでもいい。
こいつに助けられ、命が伸びたという事実に無性に腹が立つ。
死んだ方がマシ……この言葉は今の僕にピッタリだ。
「死んでも言うもんか」
「そう拗ねるなって」
重要なのは、いつから僕とタラサの戦いを見ていたかだ。
もし早い段階で見ていたなら、こいつは僕が複数能力を使ってる所も目撃したはず。
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