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【閑話】もう1つの物語①
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何もない白い空間に着物に身を包む美しい女性が佇んでいた。彼女はそこに浮かぶ黒い球体をジッと見つめている。黒い球体の中には、無数の光が存在しており、その様子はまるで、暗闇を飛び交う蛍のようである。
「これは、ダメじゃな、これは合格、これはダメ……」
その様子は真剣で、何かを選別しているように見える。そんな中、女性の目線が1つの光に固定された。
「ほう、これは…… ふふふ、あやつめ勝手なことをしおって」
暗闇に手を入れて、その光を優しくつかみ球体から取り出す。すると、光はビー玉のような形となり手の中に転がった。
「なるほど、何があったか分からぬが、1度は消えかけた光が輝きを取り戻したみたいじゃな」
その玉を右手に持ったまま、左手で何もない空間に手をかざす。するとそこに、TV画面のようなものが浮き上がった。
そこには日本の街並みが映し出されており、街を行き交う人々の表情までもが窺える。女が画面をタップし、映し出されていた場所が切り替わる。すると、ある病院の1室が映っていた。ベッドには成人男性が眠っている。
「まあ、今回は特別じゃ。あやつには、これを黙る代わりに何か対価をもらうかの」
そう言って、右手に持った玉を画面に近づける。次の瞬間、玉は光となって画面に吸い込まれていった。
なんかふわふわしている。こんな感触いままで味わったことが無い。
ヒューはまどろみの中、目を覚ました。建物の中とは思えないぐらいに明るい。白い空間、白いベッド、良く分からない光る箱、自分の腕には、管のようなものが伸びてきていて、先端が突き刺さっている。
管を腕から引き抜こうか迷うが、下手に引き抜いて大事になったらいけないので辞めておく。更に周りを見渡すとベッドの両端に手すりがついていたので、左手でベッドの手すりを持ち起き上がろうとするが、上手く力が入らない。
そんなことを何度か繰り返したころ、白い服を着た女の人が部屋に入って来た。
そして、僕の姿を見るや否や驚いた様子で部屋から出ていく。その後すぐにメガネをかけ、髭を生やしたおじさんを連れて来て戻ってきた。その人はこの病院という施設の先生らしく、色々質問されたり、自分の現状を聞かされた。
そこで分かったのは、どうやら僕は智也として生まれ変わった、ということだ。どうしてこうなったのかは、良く分からない。
こうして生き返らすことが出来るのならば、それぞれのもとの体ではいけなかったのか。はたまた、こうではないと助からなかったのか。
そのどちらでもない神の気まぐれか。いずれにしても僕は死ぬ運命だったのだ、贅沢は言ってられない。
こちらの言葉を話せるし、理解できるのは幸いだった。まあ、智也としっかりと会話できていたし不思議ではないか。それと、僕は記憶喪失ということで通すことにした。その方が都合が良いし、智也も使っていた手なので使わせてもらおう。
その後、健康状態についてのチェックや、障害についてのチェックを行った。健康状態は、ずっと寝たきりだったから運動不足なだけでそれ以外に以上はないみたいだ。脊髄を損傷していたにも関わらず、損傷も完治しており、障害なども残っておらず、今まで植物状態だった人間がここまで回復したらしい。そのことに、お医者さんも驚きを隠せない様子だった。
家族にも会うことが出来たが、ここで重大な選択を迫られた。それは、自分が智也ではないことを正直に明かすか否かだ。本当は伝えたい、だが伝えるにしても今じゃないと思うのだ。今伝えたとしても、事故の後遺症として処理されるに違いない。それなら、もっと時間が経ってから伝えたほうが良いと考えた。
少しだけリハビリを行った後、直ぐに退院することになる。記憶が戻るまでの間、実家で過ごすことになったが、病院を出た後は驚きの連続だった、智也から色々な話は聞いていたがまさかここまでだとは……
文化の違い、科学というモノの存在等を早急に知らなければならないと思った僕は、すぐさま行動に移すことにした。
先ず、一番重要だと感じたインターネットの使い方を、一から学んだ。街で開いていた無料の講座に申し込んで基礎の基礎から教わる。すると、こういうことに向いていたのか、直ぐに覚えることができた。
ある程度覚えた後は、分からないことをインターネットを使い自分で調べ、解決できるようになった。
インターネットが使えるようになったある日、初めて問題が発生した。インターネットショップで注文した商品が届かないのだ。
どうやら詐欺にあってしまったらしい。幸い買ったものが、それほど高い商品でもなく、通販サイトから返金処理もされたので大事には至らなかった。
便利なものには危険も潜んでいるのか。日本に来てから、あちらとは違って血なまぐささが無いため平和ボケしていた。しかし、こちらはこちらで、形は違えど危険はあるようだ。
そこからさらに数日が経ち、この他の世界にもなじみ始めたころ、通信アプリにメッセージが入った。
『久しぶり。今日少し話さない?』
智也から聞いていた、悪友【キング】からの通話の誘いだった。
「これは、ダメじゃな、これは合格、これはダメ……」
その様子は真剣で、何かを選別しているように見える。そんな中、女性の目線が1つの光に固定された。
「ほう、これは…… ふふふ、あやつめ勝手なことをしおって」
暗闇に手を入れて、その光を優しくつかみ球体から取り出す。すると、光はビー玉のような形となり手の中に転がった。
「なるほど、何があったか分からぬが、1度は消えかけた光が輝きを取り戻したみたいじゃな」
その玉を右手に持ったまま、左手で何もない空間に手をかざす。するとそこに、TV画面のようなものが浮き上がった。
そこには日本の街並みが映し出されており、街を行き交う人々の表情までもが窺える。女が画面をタップし、映し出されていた場所が切り替わる。すると、ある病院の1室が映っていた。ベッドには成人男性が眠っている。
「まあ、今回は特別じゃ。あやつには、これを黙る代わりに何か対価をもらうかの」
そう言って、右手に持った玉を画面に近づける。次の瞬間、玉は光となって画面に吸い込まれていった。
なんかふわふわしている。こんな感触いままで味わったことが無い。
ヒューはまどろみの中、目を覚ました。建物の中とは思えないぐらいに明るい。白い空間、白いベッド、良く分からない光る箱、自分の腕には、管のようなものが伸びてきていて、先端が突き刺さっている。
管を腕から引き抜こうか迷うが、下手に引き抜いて大事になったらいけないので辞めておく。更に周りを見渡すとベッドの両端に手すりがついていたので、左手でベッドの手すりを持ち起き上がろうとするが、上手く力が入らない。
そんなことを何度か繰り返したころ、白い服を着た女の人が部屋に入って来た。
そして、僕の姿を見るや否や驚いた様子で部屋から出ていく。その後すぐにメガネをかけ、髭を生やしたおじさんを連れて来て戻ってきた。その人はこの病院という施設の先生らしく、色々質問されたり、自分の現状を聞かされた。
そこで分かったのは、どうやら僕は智也として生まれ変わった、ということだ。どうしてこうなったのかは、良く分からない。
こうして生き返らすことが出来るのならば、それぞれのもとの体ではいけなかったのか。はたまた、こうではないと助からなかったのか。
そのどちらでもない神の気まぐれか。いずれにしても僕は死ぬ運命だったのだ、贅沢は言ってられない。
こちらの言葉を話せるし、理解できるのは幸いだった。まあ、智也としっかりと会話できていたし不思議ではないか。それと、僕は記憶喪失ということで通すことにした。その方が都合が良いし、智也も使っていた手なので使わせてもらおう。
その後、健康状態についてのチェックや、障害についてのチェックを行った。健康状態は、ずっと寝たきりだったから運動不足なだけでそれ以外に以上はないみたいだ。脊髄を損傷していたにも関わらず、損傷も完治しており、障害なども残っておらず、今まで植物状態だった人間がここまで回復したらしい。そのことに、お医者さんも驚きを隠せない様子だった。
家族にも会うことが出来たが、ここで重大な選択を迫られた。それは、自分が智也ではないことを正直に明かすか否かだ。本当は伝えたい、だが伝えるにしても今じゃないと思うのだ。今伝えたとしても、事故の後遺症として処理されるに違いない。それなら、もっと時間が経ってから伝えたほうが良いと考えた。
少しだけリハビリを行った後、直ぐに退院することになる。記憶が戻るまでの間、実家で過ごすことになったが、病院を出た後は驚きの連続だった、智也から色々な話は聞いていたがまさかここまでだとは……
文化の違い、科学というモノの存在等を早急に知らなければならないと思った僕は、すぐさま行動に移すことにした。
先ず、一番重要だと感じたインターネットの使い方を、一から学んだ。街で開いていた無料の講座に申し込んで基礎の基礎から教わる。すると、こういうことに向いていたのか、直ぐに覚えることができた。
ある程度覚えた後は、分からないことをインターネットを使い自分で調べ、解決できるようになった。
インターネットが使えるようになったある日、初めて問題が発生した。インターネットショップで注文した商品が届かないのだ。
どうやら詐欺にあってしまったらしい。幸い買ったものが、それほど高い商品でもなく、通販サイトから返金処理もされたので大事には至らなかった。
便利なものには危険も潜んでいるのか。日本に来てから、あちらとは違って血なまぐささが無いため平和ボケしていた。しかし、こちらはこちらで、形は違えど危険はあるようだ。
そこからさらに数日が経ち、この他の世界にもなじみ始めたころ、通信アプリにメッセージが入った。
『久しぶり。今日少し話さない?』
智也から聞いていた、悪友【キング】からの通話の誘いだった。
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