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【第31話】地下の街

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王都まで馬車で4日ほどかかるので、移動中は皆で話しながら向かった。その間にモンスターが現れたら、馬車から誰かが降りていき、討伐する。夜は少し大変だった。魔性の女ダリアの誘惑はずっと変わらずで、それに対抗してセイレンが、ぐいぐい来た。

「ヒュー君、私と寝ましょうか?」

「ヒューは私と寝る」

「ちょっと!! ヒュー君が困ってるでしょ」

「寝るときは男と女で別れよう、見張りはランダムで、不公平にならないようにしたほうが良い」

「俺は戦えればいい」

このように賑やかで、楽しい旅になった。

4日後、マウラよりも高い壁で覆われた街が、姿を現した。ヒューたちは早速南門に向かう。巨大な鉄門の前には、審査を受けるための長い列ができていた。

貴族は北門、貴族以外は南門から審査を受けて通ることになる。レイブンたちが特別な通行証を持っているので、スムーズに通ることができた。普通なら、長い審査を受けて通らなければならない。

ウェートスからの使者としてここに来た3人は、早速ギルドに向かうらしい、とりあえず3人とはここで別れて、ヒューとエレナとセイレンは、街の中をぶらつくことにする。

この王都ミネドラは東の国、イースマルクの中心に存在しており、門は北と南の2カ所に存在する。南に商店街、西にギルド区、東に住宅街、北に貴族の住宅、中心に王城が存在している。王城に入る際は、もう1度審査を受ける必要がある。

南の商店街を適当にぶらつく3人は、アクセサリーショップや、武器屋、道具屋を見て回る。

転生直後に命を助けてもらったヒューは、お礼として、エレナとセイレンにそれぞれ、ネックレスをプレゼントした。今まで様々なイベントがあり、こういう機会がなかったのだ。エレナは金色の髪なので、青い色の石があしらわれた物。セイレンは水色の髪なので、映えるように黄色の石を選択した。

「とても綺麗ね、ありがとう」

「嬉しい、ありがとう」

2人ともとても嬉しそうなので、ヒューにも思わず笑みが浮かぶ。

武器屋では買わずに、王都の武器屋はどのような感じか見ただけだ。道具屋と雑貨屋が存在し、道具屋は冒険で使う物がメイン、雑貨屋は日用品メインで売っている。街の規模によっては、道具屋で雑貨も売っていたり、雑貨屋で道具も売っていたりするので、そこまで細かく考える必要はなさそうだ。

一通り周り終わって、宿屋に向かう3人。レイブンたちとはその宿屋で待ち合わせをしている。宿に着くとレイブンたちが既に来ていた。

「もう来てたのか」

「意外と早く終わってな」

「そういえば、マウラの街に寄り道してて良かったのか?」

「ああ、それに関しては問題ない、ゆっくり来てくれればいいって話だったからな」

「なるほど」

そのようなやり取りもあり、宿の食堂で夕食を摂る6人。王都の宿ということもあり、一品一品の値段は高いが、味がしっかりとしていた。

「明日はどうするんだ? 3人はもう用事が済んだんだろう?」

ヒューがレイブン達の方を見て、そう訊いた。

「せっかく王都まで来たんだし、明日は街を回ってみる」

その問いに対してロバートが答えた。

「そうか、俺たちはどうする? 商店街は今日回ったし」

「せっかくだから、地下ダンジョン行きましょうか?」

エレナが言う地下ダンジョンとは、王都の地下にあるダンジョンである。王都周辺には基本的に強いモンスターが現れない。だが、王都にはSランクハンターが沢山いる。それはなぜか、地下ダンジョンに出現するモンスターが強力だからだ。

基本的にAランク、一番低いランクで、Cランクモンスターが現れるそうだ。

「地下ダンジョンか、行けるか?」

「クリアしようってわけじゃなくて、入り口付近で様子を見ましょうよ」

「それなら、何とかなるか」

「俺も、戦闘に行くぞ!!」

「まあ、レイブンならそう来ると思ったよ」

「当たり前だ、買い物なんぞ興味はない」

そして、次の日。4人は早速、地下ダンジョンに向かう。地下ダンジョンの入口は、西のギルド区に存在している。街の中にあるのは危険ではないのか。と、思う人がいるかもしれないが、Sランクハンターが多数在籍する街のギルド区で、管理しているからこそ安全なのである。

何か問題が起こった際も素早く対処できるし、逆にここで対処できなければ、人類が危ないレベルだ。

ダンジョンの入口は固く閉ざされており、横に見張りが立っている分厚い4重の門を潜る。その後、地下に続く階段があるので、その階段を下りきると、さらに見張りのいる1つの門を通り、ついにダンジョン内となる。

ダンジョン内は、思ったよりも明るい。しかし辺りを見回してみても、明かりが有るわけでは無い。、ダンジョンの壁、床、天井自体が発光しているようだ。

広さは、縦横5メートル程の空間がずっと続いてる。

「不思議な感じだな」

「なるほど、こんな風なのか」

「レイブンは、ダンジョンは初めてじゃないんだろう?」

「ああ、こういう系のダンジョンにも行ったことはある」

「比べてみるとどうだ?」

「うーん、モンスターと戦わないと分からんな」

「なるほど、進もう」

ヒューはエコーを使用しながら、皆も警戒しながら進む。すると道が左右に分岐していた。

「ヒュー、どちらの道が正解か分かるか?」

「どうかな、ダンジョンの正解が分からない」

「行き止まりとかは分からないのか?」

「確かめてみたが、どちらも少し進むと行き止まりなんだ」

「それは、行ってみないと分からないな」

まずは右側の道に向かうが、何もない行き止まりだった。そして今度は左側の道に向かう一行だが、左側も何もない行き止まりである。

「おかしいな」

首をかしげるレイブン。

「何か仕掛けがあるんじゃないか?」

突き当りの壁を調べるヒューその隣で、壁を調べるレイブン。エレナとセイレンは、少し後ろで横の壁を調べている。しかしいくら探しても、ギミックらしきものは見当たらない。エコーを全方向に放つヒューだが、ここで違和感を覚える。

ん? あそこら辺の足元だけ少しだけ反応がおかしいな。

エレナとセイレンがいる付近の足元が怪しい。そしてヒューは、あることに気づく。

「エレナ!! セイレン!! そこから離れろ!!」

ヒューの突然の大声に反応したエレナとセイレンだが、2メートルほど後ろに下がる、しかしそれではまだ足りない。次の瞬間、2人の足元が崩れ去った。体が宙に浮く2人。ヒューはバトルアーマーを起動して2人のもとに1瞬で詰め寄り、そのまま上に掴んで投げた。

そして竜の谷で壁を登った時のように足を突き刺そうとするが

固い、全く足が刺さらない。

ダンジョンの壁は思ったよりも固く、そのまま谷底に転落していった。

「ヒュー君!!」

「ヒュー!!」

エレナとセイレンは、大きく空いた穴を覗き込んで叫ぶ。そして、2人ともその穴に飛び込もうとする。

「まて!! この穴の底に何があるか分からない、行くのは危険だ!!」

「でもヒュー君が」

「あいつなら大丈夫だ、竜の谷でも落ちたのに登ってきたからな。逆に、ヒュー1人なら平気でも、お前らが行くことで、負担になるかもしれないだろ」

そう言われて、何も言えなくなる2人。

「とにかく一旦戻って、ロバートとダリアにも救援を頼もう」

「分かったわ」

「わかった」




一方、その頃。

はぁ、またこれか、最近落下してばかりだな。

いつまで経っても落下の終わりが見えない。

一応エコーを使っているが、何も反応が無い。というか、正常に作動しない感じだ。壁から、エコーを妨害する何かが出てるのか?


そんなことを考えていると、明かりが見えてきた。

ん? 明かり? なんでこんな地下に明かりがあるんだ?

そうこうしているうちに、長い暗闇を抜け、完全に明るい空間に放出された。



ヒューはその光景に、目を見張る。



そこには、美しい街が存在していた。
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