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【第26話】パーティ結成

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現在、ヒュー達4人は、気道道場の、復興作業に追われている。マチの逆鱗に触れてしまった事もあり作業は急ピッチで進められていた。ヒューに勝負を仕掛けて来た男は、名前をレイブンと言い、冒険者をやっているそうだ。

「ほう、ヒューも冒険者なのか」

「ああ」

「喋るな、手を動かせ!!」

作業しながら話していると、マチが、竹刀を振るいながら叱責してきた。それを横目に、黙々と作業を進める4人。復興には結局、2日間の時間を要した。その間、睡眠も食事も取らず働かされた4人は、作業が終わるとすぐに大量の食事を取り、その後、その場で泥のように眠った。ちなみに食事はマチが作った肉料理である。二日経ち、道場も元通りになった事で機嫌が回復したようだ。

「おい、起きろレイブン」

道場で眠るヒューの耳に、知らない声が聞こえてきた。目を開けると、未だ眠る3人と、レイブンを揺すって起こしている、茶髪の男の姿が映った。その横には色気をムンムンと漂わせる、紫色の髪をした女が立っている。

「うーん」
するとレイブンが起きたようだ。

「ん? ああ、お前らか」

「お前らか、じゃないだろ!! 2日間も帰って来ないで何してるんだ」

「うるさいな、もう少し寝かせてくれ」

「ふざけんな!!」

その様子を、ボーっと眺めるヒュ―だったが、巨乳の女がこちらに気づく。

「あら、可愛い坊やがいるわね、この道場の子?」

「俺は、この道場の門下生だな」

「そうなのね」

「そこに転がって大きなイビキをかいてる髭だるまが、この道場の師範だ」

ゼブラは大きなイビキをかいて爆睡していた。その横ではガノンが微動だにせず、寝ている。

「自己紹介がまだだったわね、私の名前はダリアよ、あっちの茶髪のがロバート、もう知ってるかもしれないけど、あの紺色の髪のがレイブンよ」

すると、レイブンを引き摺りながら、こちらに来るロバート。

「やあ、君は」

「ヒューだ」

「ヒュー君、こいつは何でここに寝てるんだい?」

ヒューは戦闘を仕掛けられたこと、戦闘により道場を破壊したこと、その道場を復興したことを説明した。

「すまない、こいつは戦闘となると馬鹿で」

「いや、お互い様だ」

「お詫びに何か困ったことがあれば、手助けする。その時は冒険者ギルドに来てくれ」

「分かった」

「そろそろ、俺たちはお暇させてもらう」

「じゃあね、ヒュー君」

「じゃあな」

再び眠りに落ちたレイブンを轢き摺り2人は去って行った。




その日は、休息日として、のんびり過ごしたヒュー。翌日から冒険者の生活へと戻っていった。ちなみにキングオークの件もあり、ランクがFからDにアップと、言いたいところだが、Dランクに上がるには、護衛任務もしくは、指名依頼を最低1回以上受ける必要がある。これは、Dランクから、人に関する依頼が少しずつ増えるため、人付き合いに慣れさせておこうという狙いがあった。

なので、現在Eランクで止まっており、上記の条件を満たせば即座にDランクになる。

そして現在、ヒューはクエストを選んでいる最中だった。出来ることなら直ぐに、Dランクに上げてしまいたいので、護衛依頼を探す。しかし、なかなか依頼が見つからない。

やはり、朝の早い時間帯に来ないといけないか。

ラッシュに巻き込まれたくないため、今まで朝の早い時間帯には、ギルドに来たことがない。今日は諦めて、討伐クエストを探す。その時、受付の方から、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「ヒューで頼む」

「え? ヒューさんですか?」

「何か問題あるか?」

「問題はありませんが」

そこにはレイブンたち3人と、それに対応する受付嬢の姿があった。受付嬢はどうすればいいか判断しかねているようだった。自分の名前を呼ばれているので、その場に向かう。

「よお、レイブン」

「ヒューか、丁度良かった、お前に指名依頼したい」

「内容によるが何なんだ? というかお前らも冒険者だろ?」

「俺たちのパーティに入ってほしい。メンバーがあと1人欲しくてな」

「ん? それは依頼じゃなくて、ただ誘えばいいんじゃ」

「実は」

レイブンから話を聞いてみると、3人は西の国から特別な許可証をもらって、この国に来ているらしく、ギルドでは特例として、冒険者だが要人扱いという難しい立場になっているらしい。そのため、パーティに誰かを加える際も、ギルドに正式な書類申請をしてから組むことになる。ちなみに、3人ともAランク冒険者だ。

「なるほどな」

「だからお前に依頼を出そうと思ったんだが」

そう言って受付嬢を見るレイブン。そこに、ヒューが助け舟を出す。

「多分、ランクが違いすぎるから、動揺してるんだと思うぞ」

「ん? ランク?」

「俺はEランク冒険者だからな」

「E? 何かの冗談か? あれだけ戦えるEランクはいないぞ」

「冗談でもなんでもない、ちなみに依頼を出してくれるなら好都合だ、その依頼でDランクに上がれる」

「それは好都合だ、お前の強さは俺が保証するから組もう」

「後ろの2人も納得しているのか?」

後ろの2人を見て問いかける。

「ああ、戦闘に関してそいつは真面目だ、そのレイブンに薦められた君は、きっと強いだろう」

「私も、そう思うわ」

「よし、決まったところで契約を済ませてしまおう」

契約内容はこうだ、3人がこの街にいる間の追加メンバーとしてヒューを起用する。著しく実力が低い場合や、不真面目、または故意に戦闘で役に立たない、等があった場合、契約は解除になる。その際、ヒュー側に落ち度があった場合は報酬は払われない。

この契約は、ギルドの受付嬢が立ち合いの元、作成された。半分以上は指名依頼の規約であり、どの指名依頼にも当てはまる条件だ。

「これで、ヒューさんも同意すれば契約は完了します」

受付嬢と3人がヒューの顔を見る。

「納得した、その依頼受けよう」

「よろしく」

ロバートが右手を出してきたので自分も右手を出し、握手を交わす。契約も完了したので、早速ヒューの実力を見るために、森でオークを狩ることになった。いくらレイブンが認めるほど強いといっても、対モンスターの動きがどの程度なのか確認するためだ。オーク15匹の討伐クエストを受けた4人は森に向かう。森に入り暫らく進むと、5匹のオークが現れた。

「俺たちは見てるから、戦い方を見せてくれ」

「分かった」

腰から剣を抜き、正面からオークに突っ込む。体を気で強化して、危なげなく屠っていった。5匹を20秒ほどで片づけ、3人のもとに戻る。

「なるほど、問題は無さそうだな」

「当たり前だ、俺と戦った時は、もっと動きが早かった」

頷くロバートに、少しだけ不満げな顔で補足するレイブン。

その後は10匹のオークを、ヒュー以外の3人が討伐してクエストは終了した。ロバートは大剣使いだが、パーティに盾役がいないため、防御重視の受け身の剣。それに対しレイブンは、細身の剣であるレイピアを使い、スピードで押しまくる攻めの剣。ダリアは、雷魔法が得意らしく、遠くからサンダーアローで討伐していた。

ロバートの戦いを見ていたヒューは、現在ブロードソードを使用しているが、大剣が良いかもしれないと考え始める。ちなみにスピード系のレイピアは、性に合わないので選択肢に含まれない。

「じゃあ、明日から向かいますか」

「ああ」

「楽しみね」

「向かう? どこに?」

ヒューは何も聞いていなかったので訝しげな顔で3人を見る。

「誰も言ってなかったのか?」

「私は言ってないわ」

「おれもだ」

どうやら3人はヒューに目的を話していなかったようだ。

「俺たちの目的は西のルグル山脈だ、そのためにこの街に寄ったんだ」

マウラの街の西側に広がる森をさらに西に進むと、大きな山脈が広がる。その山脈は、強力なモンスターがいるので、Aランク以上の冒険者しか、基本的には行かない。

「ほう、行ったことはないが、興味はあったから丁度いい」

「だろ? もうワクワクしてきたな」

「落ち着け、レイブン準備を整えてからだ」

森がとても広大なので、ルグル山脈に行くまでに、何度か森の中で野営しないといけない。森の中には、いくつか野営ポイントが存在しており、そこで野営することになる。しかし、安全な訳ではなく、森が拓けているためテントが張りやすいだけだ。興奮するレイブンを横目に、ヒューも密かに興奮していた。

街に向かい帰還する一行。

草原に出てから少し経った頃、ヒューは後ろを振り返る。目に映ったのは見慣れた森、さらに上に目を向けると山がある。

しかし、いつも見慣れているはずの山々が、世界を隔てる高い壁のように見えた。
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