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【第006話】くにお と 魔王
しおりを挟む魔王城にある魔王の間。そこには勇者と魔王がいた。勇者には一切汚れがないが、魔王は満身創痍といった様子だ。
「所詮貴様はその程度なのだ、身の程を知れ!!」
勇者が右手をかざすと、そこから光が放たれた。それを食らった魔王の体が消えかけている。
「くっ、何だこの攻撃は、一体何をした?」
魔王は激怒しながら勇者に問いかけた。
「貴様は馬鹿なのか? なぜ敵であるお前にそれを教える必要がある?」
心底あきれたように勇者は魔王の目を見る。
「まあ、いいだろう、冥土の土産に教えてやる。ある程度弱った相手を即死させる光魔法だよ」
それを聞いた魔王は絶望の後、怒りの表情を浮かべ
コントローラを放り投げた。
「何だこれは、このゲームの魔王弱すぎだろ!! それに最後の技はずるい!!」
「まあ、ザコキャラだからね、最後の技は公式な技だからずるくはないよ。」
グレイの執務室で、魔王と勇者が格闘ゲームをしていた。30体のキャラから選択できるのだが、魔王の技やステータスはなぜか最弱に設定されている。戦闘を行うフィールドも選択することができ、今回は魔王城で戦闘を行った。ちなみにグレイは買い物に出かけている。
「だからと言って、炎魔法がろうそくの火程度とか、水魔法が水鉄砲とか、制作陣は、やる気ないよね!?」
「違うキャラ使えばいいじゃん」
「んー せっかくならこのキャラで勝ちたいな」
「マオ君は、負けず嫌いなんだね」
「まあな、それにしてもタケル君はゲーム上手いなあ、絶対勝てない」
「ははは、日本にいた頃も、好きでやってたからね」
(ん? 日本? どこかで聞いたような)
その頃グレイは、ゲームショップに来ていた。
ゲームソフトを物色しているが特に目新しい物はない。
面白そうなソフトは無いな。あれも持ってるしこれも持ってる。あっ、そうだ。
なにかを思いついたようで、さきほど見ていた場所に戻る。
そして、1つのソフトを手に取って会計に向かった。
「ただいま」
「「おかえり」」
「何を買って来たんだ?」
グレイが手にもつレジ袋から、なにかの箱が透けているので、気になった魔王が尋ねた。
レジ袋から箱を取り出す。
『Boki Boki Lovers ~魔王禁断の愛~』
魔王が主人公の恋愛シミュレーションゲームだ。
「俺はこういうのはやったことないな。なになに、魔王が学園に入学。そこで、恋愛がスタートね」
タケルが珍しそうにパッケージを見ている。パッケージに書かれているのは美化された魔王のイラストと先ほどの文章のみで、それ以外は何も書かれていない。
「マオが、やりたいって言ってたから、俺もよくわかんらんけど買ってきた。聞いたことないし、多分人気ないんだろうなこれ」
「人気ないのか…… そんなことより、俺がやりたいって言ってたの覚えていてくれたのか」
「マオ君、家にゲーム機無いの?」
「ん? ああ無いな」
「じゃあ、早速始めますか。はい、コントローラ。マオがやりたいんだろ」
『Boki Boki Lovers ~魔王禁断の愛~』
起動すると、タイトルが表示された。
そして、スタートボタンを押すと、ムービーが流れ始める。
漢道。それは、漢なら皆が通る道。
その道を歩けば、素敵な出会いが待っているかもしれない。
漢ー。GOGO!!
漢ー。GOGO!!
イエーイエー漢ー!!
アアー漢ー!!
…
……
………。
漢のゲシュタルト崩壊を起こしそうなOPだ。漢と書いてオトコとは小賢しい。そんなことを思いながらも進めていく。
早速、入学式がスタートした。
「漢学園入学おめでとう、諸君はこれから様々なことを学んでいくだろう。恋にスポーツに勉強に、全てを極めてこそ漢だ!!」
大胆な校長だな。それに漢学園て…… むさくるしい名前だ。
そして、校長の話が終わり、いよいよ物語はスタートする。
『誰に話しかける?』
たけし←
くにお
ジョナサン
ん? 最初は友達作りからスタートか? よく分からんけど、くにおでいこう。
たけし
くにお←
ジョナサン
「は、はじめまして僕の名前はくにおだよ、よろしく!! 隣の席だから仲良くしてくれたら嬉しいな///」
ゴリゴリマッチョの男が、頬を染めながらそんなことを言っている。見た感じ、40代のプロレスラーにしか見えない。
―――ピコ。
ん? なんだ? なんか画面に出てきたぞ。
『ホリホリポイントをゲットしました』
よくわからんが、まあいいや、進めるか。
しかし進めど進めど、女の子は出てこない。なので、こいつが選ばれ続ける。
くにお。くにお。くにお。くにお。くにお。くにお。くにお。くにお。くにお。くにお。くにお。くにお。くにお。くにお。くにお。くにお。くにお。くにお。くにお。くにお。くにお。くにお。
―――ピコ。
『ホリホリポイントをゲットしました』
―――デデン!!
『ホリホリポイントが一定以上貯まりました、実行します』
~公園のベンチ~
「ま、魔王、ダメだよこんなところで、人に見られちゃうよ///」
――――――アッー!!
魔王はそっと電源を切った。
その後、グレイやタケルに何も言わず、魔王城へ帰還した魔王。彼が本来の自分を取り戻すまでに、数日要したという。
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