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【第005話】交通ルールは守りましょう
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我は決めたぞ。グレイに文句を言うために直々に人間界に向かってやるわ!!
そう決意した魔王。
「魔王様、ハンカチは持ちましたか?」
「持ったよ」
「おやつは300円までですよ」
「遠足じゃねえんだよ!!」
「お土産を忘れずに、お願いしますね」
軽い感じで見送りをされた魔王は、早速、人間国へと向かう。
王都の近くにある森。小鳥のさえずり以外は聞こえない。
そこに突如、魔王が現れた。
旅人のような装いをしている。フードを深くかぶり仮面をつけているため顔は見えない。
この距離のテレポートは魔力の消費が激しいから、1日1回限定だな。さて、ここからどちらに向かえば良いか…… なるほど、あっちだな!!
地図を片手に、王都を目指す。
そんな魔王の前に熊型のモンスターが現れた。大きさは5メートル程度だ。大木をなぎ倒しながら、ものすごい勢いで突進してくる。突進してくる熊に対し、ゆっくりと右手をかざす魔王。
―――獄炎。
一瞬のうちに灰塵と化した熊型のモンスター。さようなら。君にはもう出番は、ないだろう。
そんなこんなで、王都に着いた魔王。門に向かうと門番に話しかけられた。
「旅人か、何の用でここに来た?」
「知り合いに会いに来たんだ」
そう言うと怪訝な表情でこちらを見る門番。
まずい。何か怪しまれるようなことをしたか? まさかこいつ俺の正体に気づいて……
魔王に緊張が走った。まさか正体がバレるとは思わなかったからだ。もし魔力の質などでバレているとしたら相当実力がある人間だ。警戒しなければならない。
「知り合いの名前は?」
門番は怪訝な表情のまま質問を続けてくる。怪しみながらも質問をしてくるということは、何か企んでいるのかもしれない。だが仮にそうだとしても、先ほどの予想が正しければ、グレイについてはもうバレているだろう。正直に言っても問題はない。
「名前はグレイだ、大臣をしている」
「グレイ? そんな奴はここにはいないぞ」
「そんな馬鹿な! お前が知らないだけじゃないのか?」
すると、呆れた顔で言い返された。
「あのな、お前。ここは、僻地にあるホヤ村だぞ。そもそも、大臣なんているわけないだろ。偉い人間なんて、いても村長ぐらいだよ」
「なにぃ!?」
言われてみれば、門は木でできているし、門番も1人しかいない。スケールも王都にしては少し…… いや、大分小さい気がする。
魔王は少し抜けている所があった。そもそも、そんなことは関係なくても目印の無い森の中を進むのは無理がある。ホヤ村は転移してきた森から見ると、王都の反対側に位置しており、無駄足になってしまった。
それからしばらくして。
かなりの時間がかかったがようやくついたぞ。
王都に足を踏み入れる魔王。王城への出入りに対しては厳しいが、基本的に王都への出入りは自由である。難なく王都に入った魔王は早速王城に向かう。
王城に来たのは良いが、どうやって入るか。そういえば俺、幻惑魔法だとか偽装魔法とか、そういうの苦手だし。うーんどうしたものか。
王城付近を行ったり来たりする魔王。さすがに衛兵が怪しんで声をかける。
「そこの君、少し話を聞かせてもらっていいか?」
「え? いや、それは困るというかなんというか……」
「怪しい奴だ、ちょっとこっちにこい!!」
「引っ張らないで!! 分かった行くから」
くそ、どうしたら良いのだ? こいつを消すか? いやいや、俺は平和を望んでいるんだ。こんなとこで無闇に殺しちゃいかん。
そんな時。
————城に賊が入ったぞ!!
そんな声が聞こえてくる。
「なに、賊だと?」
衛兵が魔王から目を離した。
いまがチャンスだ!!
人間には捉えられない速度で移動しその場を脱した魔王。しかし悲劇はおこった。
――――ドン!! ゴキッ!! グシャ!!
急に空から女の子が降ってきて、高速で動いていた魔王と正面衝突する。
やばい!! 人を轢いてしまった? 凄い音がしたけど死んだか? でも、なんで空から人が……。
女の子は城壁に激突した後、ピクリとも動かない。急に降ってくる奴が悪いんだと思った魔王は深く考えないことにした。魔王は急に止まれない。
倒れた女の子に対し、両手で拝んだ後。そっと、その場を離れようとする魔王。
しかし、いつの間にか衛兵たちが来ており、周りを取り囲んでいた。
しょうがない強引に逃げるか。
そんなことを考えていたのだが。
「君、協力に感謝する!!」
さっきの衛兵が魔王の両手を握り、感謝してきた。
そして、現在。
魔王は王城にやってきていた。しかも目の前には王がいる。王の左右には衛兵がおり、周りには城の重役たちも集まっていた。
なぜこんなことになってしまったのか。
先ほど空から降ってきた女の子は怪盗シャロンという有名な怪盗で、今まで様々な国の秘宝を盗み出してきた。ちなみに奪取成功率は100%だ。
そして、今回の獲物は王城の地下にある秘宝。水を清らかに保ち浄化する力を持つという宝石だ。
それを難なく盗み出して城壁を越え、城外に脱出した矢先、魔王と衝突事故を起こしたようだ。
「そなたが、シャロンを捕らえたそうだな。感謝するぞ。あれが完全に盗まれていたらこの国の終わりだった。それで、そなたの名は何という?」
「まお…… マオランです。」
「おお、そうか。マオランよ、フードを取り顔を見せてはくれぬか?」
「分かりました」
魔王は意を決しフードを外す。
場所は変わり執務室。
「全く、何をやってるんだ?」
「すまない」
魔王はグレイに怒られていた。
グレイの魔法によって、顔を替え難を逃れた魔王。
報告書のことを怒りに来たのに逆に怒られてしまった。このままではミイラ取りがミイラの状態だが。
魔王は果たしてグレイを怒るミッションを達成することは出来るのか。
そう決意した魔王。
「魔王様、ハンカチは持ちましたか?」
「持ったよ」
「おやつは300円までですよ」
「遠足じゃねえんだよ!!」
「お土産を忘れずに、お願いしますね」
軽い感じで見送りをされた魔王は、早速、人間国へと向かう。
王都の近くにある森。小鳥のさえずり以外は聞こえない。
そこに突如、魔王が現れた。
旅人のような装いをしている。フードを深くかぶり仮面をつけているため顔は見えない。
この距離のテレポートは魔力の消費が激しいから、1日1回限定だな。さて、ここからどちらに向かえば良いか…… なるほど、あっちだな!!
地図を片手に、王都を目指す。
そんな魔王の前に熊型のモンスターが現れた。大きさは5メートル程度だ。大木をなぎ倒しながら、ものすごい勢いで突進してくる。突進してくる熊に対し、ゆっくりと右手をかざす魔王。
―――獄炎。
一瞬のうちに灰塵と化した熊型のモンスター。さようなら。君にはもう出番は、ないだろう。
そんなこんなで、王都に着いた魔王。門に向かうと門番に話しかけられた。
「旅人か、何の用でここに来た?」
「知り合いに会いに来たんだ」
そう言うと怪訝な表情でこちらを見る門番。
まずい。何か怪しまれるようなことをしたか? まさかこいつ俺の正体に気づいて……
魔王に緊張が走った。まさか正体がバレるとは思わなかったからだ。もし魔力の質などでバレているとしたら相当実力がある人間だ。警戒しなければならない。
「知り合いの名前は?」
門番は怪訝な表情のまま質問を続けてくる。怪しみながらも質問をしてくるということは、何か企んでいるのかもしれない。だが仮にそうだとしても、先ほどの予想が正しければ、グレイについてはもうバレているだろう。正直に言っても問題はない。
「名前はグレイだ、大臣をしている」
「グレイ? そんな奴はここにはいないぞ」
「そんな馬鹿な! お前が知らないだけじゃないのか?」
すると、呆れた顔で言い返された。
「あのな、お前。ここは、僻地にあるホヤ村だぞ。そもそも、大臣なんているわけないだろ。偉い人間なんて、いても村長ぐらいだよ」
「なにぃ!?」
言われてみれば、門は木でできているし、門番も1人しかいない。スケールも王都にしては少し…… いや、大分小さい気がする。
魔王は少し抜けている所があった。そもそも、そんなことは関係なくても目印の無い森の中を進むのは無理がある。ホヤ村は転移してきた森から見ると、王都の反対側に位置しており、無駄足になってしまった。
それからしばらくして。
かなりの時間がかかったがようやくついたぞ。
王都に足を踏み入れる魔王。王城への出入りに対しては厳しいが、基本的に王都への出入りは自由である。難なく王都に入った魔王は早速王城に向かう。
王城に来たのは良いが、どうやって入るか。そういえば俺、幻惑魔法だとか偽装魔法とか、そういうの苦手だし。うーんどうしたものか。
王城付近を行ったり来たりする魔王。さすがに衛兵が怪しんで声をかける。
「そこの君、少し話を聞かせてもらっていいか?」
「え? いや、それは困るというかなんというか……」
「怪しい奴だ、ちょっとこっちにこい!!」
「引っ張らないで!! 分かった行くから」
くそ、どうしたら良いのだ? こいつを消すか? いやいや、俺は平和を望んでいるんだ。こんなとこで無闇に殺しちゃいかん。
そんな時。
————城に賊が入ったぞ!!
そんな声が聞こえてくる。
「なに、賊だと?」
衛兵が魔王から目を離した。
いまがチャンスだ!!
人間には捉えられない速度で移動しその場を脱した魔王。しかし悲劇はおこった。
――――ドン!! ゴキッ!! グシャ!!
急に空から女の子が降ってきて、高速で動いていた魔王と正面衝突する。
やばい!! 人を轢いてしまった? 凄い音がしたけど死んだか? でも、なんで空から人が……。
女の子は城壁に激突した後、ピクリとも動かない。急に降ってくる奴が悪いんだと思った魔王は深く考えないことにした。魔王は急に止まれない。
倒れた女の子に対し、両手で拝んだ後。そっと、その場を離れようとする魔王。
しかし、いつの間にか衛兵たちが来ており、周りを取り囲んでいた。
しょうがない強引に逃げるか。
そんなことを考えていたのだが。
「君、協力に感謝する!!」
さっきの衛兵が魔王の両手を握り、感謝してきた。
そして、現在。
魔王は王城にやってきていた。しかも目の前には王がいる。王の左右には衛兵がおり、周りには城の重役たちも集まっていた。
なぜこんなことになってしまったのか。
先ほど空から降ってきた女の子は怪盗シャロンという有名な怪盗で、今まで様々な国の秘宝を盗み出してきた。ちなみに奪取成功率は100%だ。
そして、今回の獲物は王城の地下にある秘宝。水を清らかに保ち浄化する力を持つという宝石だ。
それを難なく盗み出して城壁を越え、城外に脱出した矢先、魔王と衝突事故を起こしたようだ。
「そなたが、シャロンを捕らえたそうだな。感謝するぞ。あれが完全に盗まれていたらこの国の終わりだった。それで、そなたの名は何という?」
「まお…… マオランです。」
「おお、そうか。マオランよ、フードを取り顔を見せてはくれぬか?」
「分かりました」
魔王は意を決しフードを外す。
場所は変わり執務室。
「全く、何をやってるんだ?」
「すまない」
魔王はグレイに怒られていた。
グレイの魔法によって、顔を替え難を逃れた魔王。
報告書のことを怒りに来たのに逆に怒られてしまった。このままではミイラ取りがミイラの状態だが。
魔王は果たしてグレイを怒るミッションを達成することは出来るのか。
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