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【第000話】本日は晴れ異常なし
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魔王城にある魔王の間。そこには勇者を含む4人の人間と魔王がいた。魔王には一切汚れがないが、勇者たちは満身創痍といった様子だ。
「所詮貴様らはその程度なのだ、身の程を知れ」
魔王が右手をかざすと、神官服を着た女性が血を吐きながら倒れる。
「レミア!!」
勇者と思われる男が心配し一瞬目を配るが、戦闘中なことを思い出し、駆け寄りたい気持ちを押しとどめる。
「魔王、お前レミアに何をした?」
勇者は激怒しながら魔王に問いかけた。
「貴様は馬鹿なのか?なぜ敵であるお前にそれを教える必要がある?」
心底あきれたように魔王は勇者の目を見る。
「まあ、いいだろう、冥土の土産に教えてやる。ある程度弱った相手を即死させる魔法だよ。」
それを聞いた勇者達は絶望の表情を浮かべた。
なぜ人間たちは魔族よりも弱いのに、こんなに魔族を滅ぼそうとするのだろうか。魔族側が何も仕掛けていなくても、勝手に魔王城にやってきては、死んでいく。これに何の生産性があるのだろうか。実際、魔王が出ていかなくても簡単に倒すことが出来るのだが、あまりにも可哀想なので魔王の間まで通してやって魔王直々に倒しているのだが。
魔王の間。王座でひじ掛けに肘をつき溜息を吐く男が一人。王座の前には幹部たち10人が勢ぞろいしている。
「おい、何か案はないか?」
魔王が幹部達の顔を見て案を募る。何の案かと言うと、これ以上この生産性のない茶番を続けなくする方法だ。
「魔王、考えを聞いてもらっても良いかな?」
そんな中、灰色の髪をした男が手を上げたので、みんなの視線が集中する。魔王も他の幹部たちも驚きをあらわにした。
「ほう、お前から提案があるとは珍しい。聞かせてもらおうか」
男が提案した案とはどのようなものか。
人間国に極秘で人材を派遣し、その人材が国の信頼を勝ち取る。勝ち取った信頼を使い、魔王城への勇者の派遣、または魔族側に不利益になる行動の抑制を促す。また、魔王軍へ定期報告を行い人間側の行動を知らせる。
「素晴らしい。それで、その役は誰が適任と考えるのだ?」
「俺が提案したんだ、俺が行くさ。それにもう頭の中である程度のプランは出来ているんでね。誰かに考えの引継ぎを行うよりも、俺が行った方が効率が良い」
人間の国、王城にて。王その他大勢が見守る中、一人の人間が大臣に任命されていた。
「グレイ=レグラルそなたをこの国の大臣に任命する」
この国の大臣は少し変わった制度を取っており。大臣になりたての人間の場合、何に対する大臣かどうかは決まっていない。それぞれの総務、法務、財務、国防などの重鎮がその大臣をスカウトしたり自分で行きたいところに行ったりする。期間は半年程度設けられ、その期間中は色々な部署を移ることが出来る。
グレイは孤児である。(事になっている)孤児が大臣に任命される事は極めてまれであり。1000年以上の歴史の中でも数えるほどしかない。彼が簡単に大臣になれた理由だがこの国の大臣の試験制度に問題がある。六法全書のようなものをほぼ暗記する。それが試験なのだ。なぜそれが試験になりえるのか、説明しよう。
人間は魔力が高いほど記憶力が悪くなる。これは魔法に記憶の領域を使用してしまうためである。そして、身分が低いほど魔力が高い傾向がある。なので、孤児など身分が不明なものや低いものが記憶力が高いことは極めてまれなのだ。しかし、それだと貧民などが王政を武力で制圧することが可能になってしまうように思われる。だが、この国はそこがうまくマッチしており、王族は記憶力が良く魔力も高い。そして、貴族は魔力が少ない代わりに頭が良く、貧民は冒険者や傭兵等の腕っぷしで生計を立てることができ、決して奴隷のような扱いを受けていない。そのため大きな争いが起こっていない。
話を戻すと、魔族であるグレイは魔力が多くても、人間とはちがうので、記憶力と魔力に相関性はない。そして、人間の中では古代魔法に認定されている、記憶力増加の魔法を使えるため、試験に難なく合格できた。
余裕だったな、これで楽が出来る、ククク。
グレイには人間界に来た目的がある。魔王に言った計画は完全なる嘘だ。魔王軍にいてもつまらない毎日。部下の教育、雑務などやりたく無いことがたくさんあった。そして、娯楽が少ないのだ。それに比べて人間界は娯楽が多いと調べがついている。これからの事を考えて胸を躍らせるグレイだった。
あ、そうだった、定期連絡の日じゃん忘れてたわ。
早速、通信紙に主な出来事を書いていく。ちなみにこれも古代魔法である。
………。
………………。
………………………。
書くことないな、めんどくさいしこれでいいや。
ところ変わって魔王城。
「魔王様、グレイから連絡が届きました」
「おお、待っていたぞ」
グレイが人間の国に向かってから、大分経つ、そろそろ連絡が来る頃だったため魔王もどのような報告が来るのか楽しみにしていた。
———本日は晴れ異常なし。
魔王は激怒した。
_________________________________
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Tips――― 記憶力増加の魔法は、魔力により外付けの記憶領域を作成する。USBメモリや、HDDのように使用が可能だ。
「所詮貴様らはその程度なのだ、身の程を知れ」
魔王が右手をかざすと、神官服を着た女性が血を吐きながら倒れる。
「レミア!!」
勇者と思われる男が心配し一瞬目を配るが、戦闘中なことを思い出し、駆け寄りたい気持ちを押しとどめる。
「魔王、お前レミアに何をした?」
勇者は激怒しながら魔王に問いかけた。
「貴様は馬鹿なのか?なぜ敵であるお前にそれを教える必要がある?」
心底あきれたように魔王は勇者の目を見る。
「まあ、いいだろう、冥土の土産に教えてやる。ある程度弱った相手を即死させる魔法だよ。」
それを聞いた勇者達は絶望の表情を浮かべた。
なぜ人間たちは魔族よりも弱いのに、こんなに魔族を滅ぼそうとするのだろうか。魔族側が何も仕掛けていなくても、勝手に魔王城にやってきては、死んでいく。これに何の生産性があるのだろうか。実際、魔王が出ていかなくても簡単に倒すことが出来るのだが、あまりにも可哀想なので魔王の間まで通してやって魔王直々に倒しているのだが。
魔王の間。王座でひじ掛けに肘をつき溜息を吐く男が一人。王座の前には幹部たち10人が勢ぞろいしている。
「おい、何か案はないか?」
魔王が幹部達の顔を見て案を募る。何の案かと言うと、これ以上この生産性のない茶番を続けなくする方法だ。
「魔王、考えを聞いてもらっても良いかな?」
そんな中、灰色の髪をした男が手を上げたので、みんなの視線が集中する。魔王も他の幹部たちも驚きをあらわにした。
「ほう、お前から提案があるとは珍しい。聞かせてもらおうか」
男が提案した案とはどのようなものか。
人間国に極秘で人材を派遣し、その人材が国の信頼を勝ち取る。勝ち取った信頼を使い、魔王城への勇者の派遣、または魔族側に不利益になる行動の抑制を促す。また、魔王軍へ定期報告を行い人間側の行動を知らせる。
「素晴らしい。それで、その役は誰が適任と考えるのだ?」
「俺が提案したんだ、俺が行くさ。それにもう頭の中である程度のプランは出来ているんでね。誰かに考えの引継ぎを行うよりも、俺が行った方が効率が良い」
人間の国、王城にて。王その他大勢が見守る中、一人の人間が大臣に任命されていた。
「グレイ=レグラルそなたをこの国の大臣に任命する」
この国の大臣は少し変わった制度を取っており。大臣になりたての人間の場合、何に対する大臣かどうかは決まっていない。それぞれの総務、法務、財務、国防などの重鎮がその大臣をスカウトしたり自分で行きたいところに行ったりする。期間は半年程度設けられ、その期間中は色々な部署を移ることが出来る。
グレイは孤児である。(事になっている)孤児が大臣に任命される事は極めてまれであり。1000年以上の歴史の中でも数えるほどしかない。彼が簡単に大臣になれた理由だがこの国の大臣の試験制度に問題がある。六法全書のようなものをほぼ暗記する。それが試験なのだ。なぜそれが試験になりえるのか、説明しよう。
人間は魔力が高いほど記憶力が悪くなる。これは魔法に記憶の領域を使用してしまうためである。そして、身分が低いほど魔力が高い傾向がある。なので、孤児など身分が不明なものや低いものが記憶力が高いことは極めてまれなのだ。しかし、それだと貧民などが王政を武力で制圧することが可能になってしまうように思われる。だが、この国はそこがうまくマッチしており、王族は記憶力が良く魔力も高い。そして、貴族は魔力が少ない代わりに頭が良く、貧民は冒険者や傭兵等の腕っぷしで生計を立てることができ、決して奴隷のような扱いを受けていない。そのため大きな争いが起こっていない。
話を戻すと、魔族であるグレイは魔力が多くても、人間とはちがうので、記憶力と魔力に相関性はない。そして、人間の中では古代魔法に認定されている、記憶力増加の魔法を使えるため、試験に難なく合格できた。
余裕だったな、これで楽が出来る、ククク。
グレイには人間界に来た目的がある。魔王に言った計画は完全なる嘘だ。魔王軍にいてもつまらない毎日。部下の教育、雑務などやりたく無いことがたくさんあった。そして、娯楽が少ないのだ。それに比べて人間界は娯楽が多いと調べがついている。これからの事を考えて胸を躍らせるグレイだった。
あ、そうだった、定期連絡の日じゃん忘れてたわ。
早速、通信紙に主な出来事を書いていく。ちなみにこれも古代魔法である。
………。
………………。
………………………。
書くことないな、めんどくさいしこれでいいや。
ところ変わって魔王城。
「魔王様、グレイから連絡が届きました」
「おお、待っていたぞ」
グレイが人間の国に向かってから、大分経つ、そろそろ連絡が来る頃だったため魔王もどのような報告が来るのか楽しみにしていた。
———本日は晴れ異常なし。
魔王は激怒した。
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Tips――― 記憶力増加の魔法は、魔力により外付けの記憶領域を作成する。USBメモリや、HDDのように使用が可能だ。
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