上 下
1 / 22

1.嫉妬?まさかぁ!

しおりを挟む
「ティアラ様私のことが嫌いだからって意地悪しないで下さい!」

目の前にいるのは私と同じくらいの…つまりは身長低めの可愛い系の美少女。

大きな黒目がちなヘーゼルカラーの瞳に涙をためて潤ませています。

頬と唇は綺麗なピンク色をしていて長く伸びた髪は黒く輝きを放っています。

でもあまりに常識がなってませんわね。

私は公爵令嬢であり彼女は確か子爵令嬢です。

挨拶もしていない自分より高位の者に話しかけること自体が失礼に当たります。

この学園でもそれは適用されます。

この子も一応貴族として今まで生きてきたでしょうに…

それを教室のど真ん中でやりのけるだなんて勇敢という無謀というかですわね。

「たしか…アリス様でしたよね?嫌いも何もあなたに興味すらないのですが…」

「またそうやって…」

また涙をいちだんと溜めて…めんどくさいですねこの子。

「私に嫉妬して意地悪ばっかり!」

嫉妬?あなたに嫉妬する意味が分からないのですけど。

「どうしたの?」

ひょこっと話に入ってきたのは私の婚約者でありハトコにあたる王子殿下です。

私の祖母は元王女でした。

その弟が先王で姉であるおばあ様には頭が上がらず、お母様は現王のいとこで姉のようにしてきたためかたまに王なのに家臣であるはずのお母様におびえているという不思議な構図をしております。

そのせいなのか私を非常に気に入り可愛がり他国の王族から婚約の申し出がきてたのですが渡すくらいならと仰って王子殿下の婚約者になりました。

ちなみにこの王子殿下はただでさえ整った顔に美しい水色がかかった銀髪にこれまた美しい濃い緑色をした碧眼。

麗しの王子殿下と言われるこの人の隣がどれだけ嫉妬を受けると思っているのかしら?

そんな私に嫉妬されているだなんて頭にお花が咲いているのかしら?

そもそもの話、婚約に乗り気でもありませんのに。

「エドウィン様!」

そうそうそんな名前でしたわね。王子殿下としか呼んでないし周りもエドとしか呼ばないから忘れてましたわ。

子爵令嬢が殿下もつけず呼ぶのはどうかと思うけど殿下自身が許可したのならいいのかしら。

「で?どうしたの?」

「ティアラ様が私に意地悪ばかりするのです。」

わー面倒ですね。関わらないでいただきたいタイプだと思いましたわ。

「それは本当?」

私に聞いてるのですか?

「本当も何も私が彼女に意地悪なんてする意味がないですわ。」

「それは私とエドウィン様が仲良くしているのに嫉妬して!」

「嫉妬?どこにですの?まさか私が王子殿下の事を恋愛的に好きだとでもおもっていらっしゃるの?」

「そうじゃないんですか!あと未来の王妃に執着して…」

彼を男として見た事ありませんわ。

彼は私にとってハトコであり会った時から王子殿下としてしか認識してません。

王妃になることの厳しさを考えれば譲れるならばすぐにでも譲りたいぐらいでしてよ?

「まぁ!私、王子殿下のことはハトコとしては好いているだけですわ。王妃に執着する以前に私と王子殿下の婚約を決めましたは陛下ですので私に断るという選択肢は与えられませんでしたし。」

「そんなの嘘です!」

「それは本当だよ。父上も望んだことだからね。」

「そんな…エドウィン様まで…」

人前で泣くなど淑女としてどうかと思いますわよ?

「アリス嬢にその呼び方を許した覚えはないな。」

「え?!そんな…ひどいです!」

嘘でしょう?王族に対し許しも得ずに呼んでいただなんて不敬ですよ…

「ティアは僕のこと男として好きじゃないんだよね?」

「何を今更おっしゃいますか。そんなこと考えたこともございませんわ。貴方様は私にとってはハトコで、お会いした時より王子殿下ですもの。殿下も私のことなど異性として好きではありませんでしょう?殿下が他の方と恋愛されたいとおっしゃ…んん!」

え?何がございましたの?!

目の前に王子殿下の美しい顔があって唇に何か柔らかな感触を感じますけど頭が固定されて動けませんし周りから歓喜ともとれる悲鳴が聞こえますわ。

「な、何なさってるんですか!」

アリス様の高い声が響きます。

ゆっくりと彼の顔が離れていくと唇の感触も離れていきます。

彼の顔は意地悪にでも美しい笑顔を浮かべ…

「ティアの唇は貰ったからね?」

唇は貰った?

……!!

き、きすされたってことですか?!

ここは教室の真ん中でどれだけの人に見られたか…

「ティアはそうじゃないかもしれないけど僕はティアのこと異性として好きだよ。」

へ?私を好きですの?

考えたことありませんでしたわ。

こういう時どうすれば…

そうですわ!王妃様から殿下が変なこと仰ったら殴っていいと言われましたわ!

ってダメでしょう!

いやでもどうすれば…

「あ。」

気をそらされた途端に逃げます。

走りはしませんわ。走りに限りなく近い早歩きですわ。これも王妃様直伝です。

そのまま馬車に乗り城に向かいます。

何故城かと言うと私が今住んでいるからです。

たまに自宅に戻りますが基本はそちらにいます。

いやでも王子殿下に会ってしまいそうな気もしますが広いので約束でもしない限り会いませんわ。

王妃様…おば様[実際は叔従母にあたりますが]に私的なお茶会と称して愚痴ります。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫が浮気先から帰らないので兄上とお茶してきます!

月歌(ツキウタ)
恋愛
夫のセドリック・アシュフォードには本命の女がいる。妾として囲っていた女ミア・グリーンが男子を産んでからは、家に帰ってこないことも多い。辛くなった妻のヴィオレットは娘のリリアーナを連れて時折実家に里帰りする。今日も兄のアルフォンス・ルーベンスとお茶をしながら愚痴をこぼす。 ☆作者プロフィール☆ 商業BL小説を書いています。 よろしくお願いします🙇 「嫌われ悪役令息は王子のベッドで前世を思い出す」(アンダルシュノベルズより刊行中)

前略、旦那様……幼馴染と幸せにお過ごし下さい【完結】

迷い人
恋愛
私、シア・エムリスは英知の塔で知識を蓄えた、賢者。 ある日、賢者の天敵に襲われたところを、人獣族のランディに救われ一目惚れ。 自らの有能さを盾に婚姻をしたのだけど……夫であるはずのランディは、私よりも幼馴染が大切らしい。 「だから、王様!! この婚姻無効にしてください!!」 「My天使の願いなら仕方ないなぁ~(*´ω`*)」  ※表現には実際と違う場合があります。  そうして、私は婚姻が完全に成立する前に、離婚を成立させたのだったのだけど……。  私を可愛がる国王夫婦は、私を妻に迎えた者に国を譲ると言い出すのだった。  ※AIイラスト、キャラ紹介、裏設定を『作品のオマケ』で掲載しています。  ※私の我儘で、イチャイチャどまりのR18→R15への変更になりました。 ごめんなさい。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!

ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、 1年以内に妊娠そして出産。 跡継ぎを産んで女主人以上の 役割を果たしていたし、 円満だと思っていた。 夫の本音を聞くまでは。 そして息子が他人に思えた。 いてもいなくてもいい存在?萎んだ花? 分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。 * 作り話です * 完結保証付き * 暇つぶしにどうぞ

わたしは出発点の人生で浮気され心が壊れた。転生一度目は悪役令嬢。婚約破棄、家を追放、処断された。素敵な王太子殿下に転生二度目は溺愛されます。

のんびりとゆっくり
恋愛
わたしはリディテーヌ。ボードリックス公爵家令嬢。 デュヴィテール王国ルシャール王太子殿下の婚約者。 わたしは、ルシャール殿下に婚約を破棄され、公爵家を追放された。 そして、その後、とてもみじめな思いをする。 婚約者の座についたのは、わたしとずっと対立していた継母が推していた自分の娘。 わたしの義理の妹だ。 しかし、これは、わたしが好きだった乙女ゲーム「つらい思いをしてきた少女は、素敵な人に出会い、溺愛されていく」の世界だった。 わたしは、このゲームの悪役令嬢として、転生していたのだ。 わたしの出発点の人生は、日本だった。 ここでわたしは、恋人となった幼馴染を寝取られた。 わたしは結婚したいとまで思っていた恋人を寝取られたことにより、心が壊れるとともに、もともと病弱だった為、体も壊れてしまった。 その後、このゲームの悪役令嬢に転生したわたしは、ゲームの通り、婚約破棄・家からの追放を経験した。 その後、とてもみじめな思いをすることになる。 これが転生一度目だった。 そして、わたしは、再びこのゲームの悪役令嬢として転生していた。 そのことに気がついたのは、十七歳の時だった。 このままだと、また婚約破棄された後、家を追放され、その後、とてもみじめな思いをすることになってしまう。 それは絶対に避けたいところだった。 もうあまり時間はない。 それでも避ける努力をしなければ、転生一度目と同じことになってしまう。 わたしはその時から、生まれ変わる決意をした。 自分磨きを一生懸命行い、周囲の人たちには、気品を持ちながら、心やさしく接するようにしていく。 いじわるで、わたしをずっと苦しめてきた継母を屈服させることも決意する。 そして、ルシャール殿下ではなく、ゲームの中で一番好きで推しだったルクシブルテール王国のオクタヴィノール殿下と仲良くなり、恋人どうしとなって溺愛され、結婚したいと強く思った。 こうしてわたしは、新しい人生を歩み始めた。 この作品は、「小説家になろう」様にも投稿しています。 「小説家になろう」様では、「わたしは出発点の人生で寝取られ、心が壊れた。転生一度目は、悪役令嬢。婚約破棄され、家を追放。そして……。もうみじめな人生は嫌。転生二度目は、いじわるな継母を屈服させて、素敵な王太子殿下に溺愛されます。」という題名で投稿しています。

不憫な侯爵令嬢は、王子様に溺愛される。

猫宮乾
恋愛
 再婚した父の元、継母に幽閉じみた生活を強いられていたマリーローズ(私)は、父が没した事を契機に、結婚して出ていくように迫られる。皆よりも遅く夜会デビューし、結婚相手を探していると、第一王子のフェンネル殿下が政略結婚の話を持ちかけてくる。他に行く場所もない上、自分の未来を切り開くべく、同意したマリーローズは、その後後宮入りし、正妃になるまでは婚約者として過ごす事に。その内に、フェンネルの優しさに触れ、溺愛され、幸せを見つけていく。※pixivにも掲載しております(あちらで完結済み)。

婚約破棄されたショックですっ転び記憶喪失になったので、第二の人生を歩みたいと思います

ととせ
恋愛
「本日この時をもってアリシア・レンホルムとの婚約を解消する」 公爵令嬢アリシアは反論する気力もなくその場を立ち去ろうとするが…見事にすっ転び、記憶喪失になってしまう。 本当に思い出せないのよね。貴方たち、誰ですか? 元婚約者の王子? 私、婚約してたんですか? 義理の妹に取られた? 別にいいです。知ったこっちゃないので。 不遇な立場も過去も忘れてしまったので、心機一転新しい人生を歩みます! この作品は小説家になろうでも掲載しています

処理中です...