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選べない手を伸ばしたまま
#15
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生い茂る木々や緩く勾配した地面に身を隠しながらホールに近づく。中の様子を伺い、凛太朗は息を呑んだ。繭が美玲を人質にとり、フィオーレは再び窮地に陥っている。
「予感が当たったみたいだね」
「どうする?」
「こっちが圧倒的に不利だし、相手の意表をつくしかないね。二手に別れよう」
詳細を説明する前に烏はイヤホンに触れ、どこかへ呼びかけ始めた。無線は故障していると思ったが、いつの間に直ったのだろう。
「状況はわかってるよね? タイミングを見て突入する。リンが行くから連携して」
簡潔に指示すると烏は凛太朗に暗視装置を渡した。
「君は電気室に向かって。突入と同時に照明を落とす」
「カラスは?」
「出来るだけ敵の戦力を削る」
「俺も一緒に行く。無線が回復してるなら電気室とは遠隔で連携すればいいだろ?」
「駄目だよ。向こうは任せっきりにできる程、信頼に足る相手じゃない」
いつになく硬い口調で言った烏は、すぐに微笑みを浮かべた。
「なんてね。あ、これつけて」
烏が取り出したのは円形のパッチのような物だった。薄暗いため書かれた文字は判然としないが犬のマークは読み取れた。
「これは?」
「暗闇で君が撃たれないようにするための物だよ」
烏はそれを凛太朗の右肩に貼りつけた。
「着いたら連絡して」
「わかった」
疑問は多いが悠長にしている時間はない。烏と別れ、凛太朗は電気室に向かった。
電気室に居たのは意外な人物だった。
「カイ?」
呼びかけるとカイは形容し難い顔で笑った。
「リンさん、お疲れ様です……」
「なんでいんの? 今日来るってきいてないけど」
「まぁその、色々あって、カラスさんに捕まったって言うか……察してください」
凛太朗は考えるのをやめた。考えるより先にやるべき事が多すぎた。
「無線はもう使える?」
「ちょっと待ってください」
カイがパソコンを操作するとすぐに烏に繋がった。
「カラス、聞こえる?」
「聞こえるよ。カメラ映像を確認して」
烏の指示をきいたカイがパソコンの画面に監視カメラの映像を表示させる。武器を取り上げられ、敵の前に膝をつくユーリや真が映っている。
「照明を落としたら通信を開放してシンに合図を。彼らが動けるようになるまで俺が時間を稼ぐ」
「了解」
「あと、リンは騒ぎが収まるまでこちらへ来ないこと」
「なんで、俺にも援護くらい出来る」
「駄目だよ。この状況で素人は足手纏いだ。カイ、彼を見張ってて」
「……はい」
頷くカイを睨むと気まずそうに目を逸らされた。
「そろそろ行くよ」
文句を言う間もなく、突入のタイミングをはかる烏に頷き、凛太朗は無線に手を当てた。
「予感が当たったみたいだね」
「どうする?」
「こっちが圧倒的に不利だし、相手の意表をつくしかないね。二手に別れよう」
詳細を説明する前に烏はイヤホンに触れ、どこかへ呼びかけ始めた。無線は故障していると思ったが、いつの間に直ったのだろう。
「状況はわかってるよね? タイミングを見て突入する。リンが行くから連携して」
簡潔に指示すると烏は凛太朗に暗視装置を渡した。
「君は電気室に向かって。突入と同時に照明を落とす」
「カラスは?」
「出来るだけ敵の戦力を削る」
「俺も一緒に行く。無線が回復してるなら電気室とは遠隔で連携すればいいだろ?」
「駄目だよ。向こうは任せっきりにできる程、信頼に足る相手じゃない」
いつになく硬い口調で言った烏は、すぐに微笑みを浮かべた。
「なんてね。あ、これつけて」
烏が取り出したのは円形のパッチのような物だった。薄暗いため書かれた文字は判然としないが犬のマークは読み取れた。
「これは?」
「暗闇で君が撃たれないようにするための物だよ」
烏はそれを凛太朗の右肩に貼りつけた。
「着いたら連絡して」
「わかった」
疑問は多いが悠長にしている時間はない。烏と別れ、凛太朗は電気室に向かった。
電気室に居たのは意外な人物だった。
「カイ?」
呼びかけるとカイは形容し難い顔で笑った。
「リンさん、お疲れ様です……」
「なんでいんの? 今日来るってきいてないけど」
「まぁその、色々あって、カラスさんに捕まったって言うか……察してください」
凛太朗は考えるのをやめた。考えるより先にやるべき事が多すぎた。
「無線はもう使える?」
「ちょっと待ってください」
カイがパソコンを操作するとすぐに烏に繋がった。
「カラス、聞こえる?」
「聞こえるよ。カメラ映像を確認して」
烏の指示をきいたカイがパソコンの画面に監視カメラの映像を表示させる。武器を取り上げられ、敵の前に膝をつくユーリや真が映っている。
「照明を落としたら通信を開放してシンに合図を。彼らが動けるようになるまで俺が時間を稼ぐ」
「了解」
「あと、リンは騒ぎが収まるまでこちらへ来ないこと」
「なんで、俺にも援護くらい出来る」
「駄目だよ。この状況で素人は足手纏いだ。カイ、彼を見張ってて」
「……はい」
頷くカイを睨むと気まずそうに目を逸らされた。
「そろそろ行くよ」
文句を言う間もなく、突入のタイミングをはかる烏に頷き、凛太朗は無線に手を当てた。
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