ねむれない蛇

佐々

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あの季節

#05*

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 それから間もなく、真と凛太朗は解放された。凛太朗は怪我をしていたし、他の当事者のこともあるためまた後日、連絡がくることになった。
 送って行くという田村の申し出を断って、真は凛太朗と共にタクシーに乗り込んだ。
 運転手に行き先を告げ、そこから先はほとんど何も話さなかった。
 信号待ちの間、広告やラジオの流れない静かな空間で、凛太朗は一度だけ口をきいた。
「ごめん」
 車窓に顔を向けたまま、短く言った凛太朗に、真は何も答えることが出来なかった。


「早く寝ろよ」
 帰宅後、玄関で靴を脱ぎながら凛太朗に声をかける。
「お風呂入りたい」
「今日はやめとけ。怪我してるだろ」
「大丈夫だよ」
 そう言って凛太朗は浴室に向かう。真はため息をついて彼の後を追った。
「手伝ってくれるの?」
「一人じゃきついだろ」
「ありがと」
 力の抜けた笑い方をする凛太朗に違和感を覚える。もともと人懐っこい性格ではあったが、こんな無防備さは知らない。
 予想はしていたが、服を脱がせると全身痣だらけで、真は眉を寄せた。
「明日病院行くからな」
「大丈夫だよ。すぐ治るから」
「痛むか?」
「ううん」
 浴室に移動し、湯舟に湯が溜まるのを待つ間、凛太朗の体を洗う。泡立てた柔らかいタオルで肌をなでると、凛太朗はくすぐったそうに身をよじる。
「なに笑ってる」
「恥ずかしくて。兄さんかっこいいから、前から兄さんの裸見るとちょっとどきどきしてた」
「お前な……」
「冗談だよ。ほら、洗って」
 首筋、肩、腕から指先までタオルを滑らせる。痣の多い胸や脇腹は優しく手のひらで泡を広げる。
「ふっ、駄目かも兄さん、くすぐった……」
 顔を逸らして声を震わせる凛太朗を無視し、細かい所まで指先で洗う。
「動くなよ」
 そう命じてから、下半身をタオルで擦り、片脚ずつ上げさせて足の裏まできれいにする。後ろを向かせて反対側も同じように洗う。滑らかな肌についた傷や痣を一つ一つを確かめていく。
「寒いか?」
 背中をなぞりながら声をかけると、壁に手をついていた凛太朗が緩く首を振る。
「熱いよ……のぼせそう……」
「我慢しろ」
 泡まみれの手を腹から胸まで滑らせて、円を描くようになでる。続けていると手のひらに硬くなった乳首の感触が伝わってくる。
「兄さん、駄目だって……」
「何が?」
「ちんこ勃っちゃうから……」
「さっちからちょっと勃ってただろ」
 指先で乳首をなで回し、更に形がはっきりしてきた先端を優しく引っ掻く。凛太朗は体を震わせて、唇を引き結んで耐えている。
「お前ここ感じるんだな」
「兄さん!」
 肩をすくめ、振り返った凛太朗の顔が真っ赤なことに気づいて中断する。体を流し、温度を少し下げた浴槽に凛太朗を浸からせている間に真もシャワーを済ませ、二人一緒に浴室を出た。
「兄さんは入らなくていいの?」
「いいよ。寒くないし」
「はぁ……」
 ため息をついた凛太朗はまだぼんやりしている。気づかないふりをして体を拭き、着替えを手伝う。就寝の準備を終えてベッドに寝かせると、凛太朗に引き寄せられ、キスをされた。
「やめろ、リン」
「さっきは兄さんから悪戯してきたじゃん」
「怪我してるんだから、大人しく寝なさい」
「俺が知らないエロい触り方したくせに?」
「知りたいのか?」
 頷く凛太朗にキスをして、ベッドに乗り上げる。部屋着を脱がせ、下着越しに性器をなでる。既に硬くなり始めていたそこが、完全に勃起するまでそう時間はかからなかった。直接触れてこすればいくらもしない内に先端が濡れてくる。
「溜まってた?」
 尋ねると凛太朗は恥ずかしそうに目を逸らす。
「あんまりしないから……」
「なんで?」
「一人でしたくなくて……」
「誰かにしてほしい? それとも見ててほしい?」
「ぁっ……」
「感じてないで答えろよ」
「み、見ててほしっ……」
「誰に?」
「兄さっ、に……」
 相手は子供なのに、卑猥さを感じてしまう自分を嘲りながら、凛太朗の手を取り、性器に触れさせる。
「見せて、リンが気持ち良くなってるとこ」
 後ろ向きに座らせた体を抱き、手元を覗き込む。
「ぅ、んっ……」
 遠慮がちに、凛太朗の手が動く。まずは上下に。しだいに動きが速くなって、にちゃにちゃと音を立てながら扱き始める。先端や裏筋が敏感なのか、触れるたびに小さく体が跳ねる。
「リン、ここ触っていい?」
 尻の割れ目に触れると凛太朗が驚いた顔で振り返る。
「えっ……」
「だめ?」
「いいよ……兄さんの、入れて欲しいし……」
 可愛いことを言う弟にキスをして、ベッドにうつ伏せに寝かせる。腰を浮かせながらローションを垂らし、入口を広げてゆっくり指を挿入する。ローションを足しながら出し入れし、まだ硬いままの性器に触れる。
「痛くない?」
「うん……変な感じ、ちんこのが気持ちいい……」
「慣れてきたらここだけで気持ちよくなれるよ」
 とはいえまだ無理だろうから、真も凛太朗の自慰を手伝ってやる。先ほど知った彼の弱い部分に指を押しつけ、同時に内側の粘膜をなでる。あくまで優しく、性感が高まると共に少しづつ形のはっきりしてきた箇所を押さえ、緩く刺激を続ける。
「んっ、いきそ……っ」
 凛太朗の体が強張り、肌が粟立つ。触れていた性器から手を離すと、凛太朗が振り返って見上げてくる。
「なんで……?」
 射精の瞬間を迎えられなかったことへのもどかしさが滲む瞳に、真は愛おしさを覚えた。体を仰向けにさせ、薄く開かれた唇にキスをする。先端から粘液をこぼす性器を再び摩擦し、二本に増やした指で同じ場所をこする。
 三回ほど同じことを繰り返すと、凛太朗は簡単に相好を崩した。
「も、いかせて、にいさ……っ」
 真の体にしがみつき、勃起したものを押しつけながら強請る凛太朗に、真は頭痛がするほど興奮した。服を脱ぎ捨て、唇を重ねる。顎を掴んで口を開かせ、舌をねじ込みながら互いの性器を擦り合わせる。
「ぁ、あっ、あ」
 細かく震える凛太朗は程なくして射精した。それでも擦るのをやめず、一緒に握って擦り続けると凛太朗は体を跳ねさせて首を逸らす。声も出ない様子の彼を眺めながら、真は近づく絶頂の気配に眉を寄せた。
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