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あの季節
#04
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「でねー凛太朗が助けてくれてねーめっちゃかっこ良かったんだよ!」
「その話何回目だよ酔っ払い」
「真はその場に居なかったから教えてあげようと思って!」
「はいはい」
楓の後ろにある大きな窓から見える夜景が美しい。
真が予約してくれたのは雰囲気のあるダイニングバーで、クリスマスということもあり店内は混雑していたが、個室ではそれも気にならない。温かい料理の並んだテーブルに肘をつき、凛太朗は義理の姉と兄の平和なやり取りを眺めていた。
「あーお酒が美味しい。すみませーん! おかわりくださーい!」
「ボタン押せよ恥ずかしい!」
真が楓のかわりに店員を呼ぶ。
「リンも何か飲むか?」
「うん。メニュー取って」
「お酒はだめだよー」
楓がにこにこしながら言う。酔っ払った楓はとても可愛い。アイシャドウできらきらした目元で見つめられるとどうしていいかわからなくなる。
「ノンアルのサングリアにしよ」
「それもうサングリアじゃないだろ」
「真はお酒いいの?」
「俺が飲んだら誰が運転して帰るんだよ」
「たしかにー」
「おい、この酔っ払いどうにかしろよ」
真が助けを求めてくる。今日の彼はいつになく饒舌で、表情も柔らかい。そんな彼に愛おしさが込み上げてくる。
「兄さん可愛い。好き」
隣に座る真に身を寄せ、抱きつくと良いにおいがした。
「なんだなんだ、お前は酒飲んでないだろ」
「凛太朗が甘えてる! 可愛い」
楓が嬉々としてスマートフォンのカメラを構える。
「おい!」
「リンこっち向いてー」
「撮ってないで助けろ! リン、お前も離れなさい!」
「兄さん大好き!」
「わかった! わかったから!」
「いいなー真。私も凛太朗にぎゅってされたい」
楓の言葉で凛太朗は彼女に抱きついているところを想像してしまい、顔が熱くなるのを感じた。
「したいなら楓にすればいいだろ?」
楓がトイレに立ったタイミングで囁かれ、凛太朗は耳を押さえて顔を上げた。
「できるわけないじゃん……」
「だからって俺を代わりにするなよ」
「兄さんを好きなのも本当だよ?」
「はいはい」
雑に頭をなでられる。ちょうど店員が来たので楓の分と一緒に注文を済ませた。
楓がトイレから戻ってきたところで凛太朗は二人にプレゼントを渡した。
「はい、これは姉さん」
「ありがとう! 開けていい?」
「うん。兄さんはこっちね」
「ああ、ありがとう……」
真が戸惑った様子で小さな紙袋を受け取る。そういえば凛太朗から真にちゃんとしたプレゼントをするのは初めてかもしれない。誕生日やクリスマスは何かしらのお祝いをしてきたが、欲しい物をきいても特にないとはぐらかされてしまうので、プレゼントはいつも家族や楓が選んでくれていた。今年のクリスマスは今日の夕食をご馳走しようと思っていたのたが、それも真によって阻止されてしまったため、凛太朗は初めて自分で真へのプレゼントを選んだ。
「あ、可愛い! ボールペンだ!」
最初に箱を開けたのは楓だった。華奢なデザインの白いボールペンを色々な角度から眺めている。
「ちょうど欲しいと思ってたんだー」
「営業のくせに安物使ってるからな」
「うるさいなぁ。もうこれで大丈夫! 成績伸びそうだよ。凛太朗ありがとね」
「どういたしまして。兄さんも開けてみて」
真がそっと紙袋を開ける。
「手袋だ」
「きれいな色」
「サイズもぴったり……」
「似合ってるね」
「うん」
「ありがとう……」
「真ちょっと耳赤くない? てか泣いてない?」
「泣いてねーよ!」
「赤いのは認めるんだ」
「兄さん可愛いなぁ」
「リンは良い弟だね。優しい子で私はほんとに嬉しいよ」
「母親かよ」
冷静に指摘しながらも真は穏やかな瞳で凛太朗の贈った手袋を見つめている。凛太朗はまだ子供だし、幸せの定義なんてよくわからないが、今のこの感情はそう表現するのにぴったりな気がした。
「その話何回目だよ酔っ払い」
「真はその場に居なかったから教えてあげようと思って!」
「はいはい」
楓の後ろにある大きな窓から見える夜景が美しい。
真が予約してくれたのは雰囲気のあるダイニングバーで、クリスマスということもあり店内は混雑していたが、個室ではそれも気にならない。温かい料理の並んだテーブルに肘をつき、凛太朗は義理の姉と兄の平和なやり取りを眺めていた。
「あーお酒が美味しい。すみませーん! おかわりくださーい!」
「ボタン押せよ恥ずかしい!」
真が楓のかわりに店員を呼ぶ。
「リンも何か飲むか?」
「うん。メニュー取って」
「お酒はだめだよー」
楓がにこにこしながら言う。酔っ払った楓はとても可愛い。アイシャドウできらきらした目元で見つめられるとどうしていいかわからなくなる。
「ノンアルのサングリアにしよ」
「それもうサングリアじゃないだろ」
「真はお酒いいの?」
「俺が飲んだら誰が運転して帰るんだよ」
「たしかにー」
「おい、この酔っ払いどうにかしろよ」
真が助けを求めてくる。今日の彼はいつになく饒舌で、表情も柔らかい。そんな彼に愛おしさが込み上げてくる。
「兄さん可愛い。好き」
隣に座る真に身を寄せ、抱きつくと良いにおいがした。
「なんだなんだ、お前は酒飲んでないだろ」
「凛太朗が甘えてる! 可愛い」
楓が嬉々としてスマートフォンのカメラを構える。
「おい!」
「リンこっち向いてー」
「撮ってないで助けろ! リン、お前も離れなさい!」
「兄さん大好き!」
「わかった! わかったから!」
「いいなー真。私も凛太朗にぎゅってされたい」
楓の言葉で凛太朗は彼女に抱きついているところを想像してしまい、顔が熱くなるのを感じた。
「したいなら楓にすればいいだろ?」
楓がトイレに立ったタイミングで囁かれ、凛太朗は耳を押さえて顔を上げた。
「できるわけないじゃん……」
「だからって俺を代わりにするなよ」
「兄さんを好きなのも本当だよ?」
「はいはい」
雑に頭をなでられる。ちょうど店員が来たので楓の分と一緒に注文を済ませた。
楓がトイレから戻ってきたところで凛太朗は二人にプレゼントを渡した。
「はい、これは姉さん」
「ありがとう! 開けていい?」
「うん。兄さんはこっちね」
「ああ、ありがとう……」
真が戸惑った様子で小さな紙袋を受け取る。そういえば凛太朗から真にちゃんとしたプレゼントをするのは初めてかもしれない。誕生日やクリスマスは何かしらのお祝いをしてきたが、欲しい物をきいても特にないとはぐらかされてしまうので、プレゼントはいつも家族や楓が選んでくれていた。今年のクリスマスは今日の夕食をご馳走しようと思っていたのたが、それも真によって阻止されてしまったため、凛太朗は初めて自分で真へのプレゼントを選んだ。
「あ、可愛い! ボールペンだ!」
最初に箱を開けたのは楓だった。華奢なデザインの白いボールペンを色々な角度から眺めている。
「ちょうど欲しいと思ってたんだー」
「営業のくせに安物使ってるからな」
「うるさいなぁ。もうこれで大丈夫! 成績伸びそうだよ。凛太朗ありがとね」
「どういたしまして。兄さんも開けてみて」
真がそっと紙袋を開ける。
「手袋だ」
「きれいな色」
「サイズもぴったり……」
「似合ってるね」
「うん」
「ありがとう……」
「真ちょっと耳赤くない? てか泣いてない?」
「泣いてねーよ!」
「赤いのは認めるんだ」
「兄さん可愛いなぁ」
「リンは良い弟だね。優しい子で私はほんとに嬉しいよ」
「母親かよ」
冷静に指摘しながらも真は穏やかな瞳で凛太朗の贈った手袋を見つめている。凛太朗はまだ子供だし、幸せの定義なんてよくわからないが、今のこの感情はそう表現するのにぴったりな気がした。
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