ねむれない蛇

佐々

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短編

#04*

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 最近越してきたマンションに着き、俺は扉の前でインターフォンを押した。エントランスから部屋までどうにか上がってきたが、もう自力で解錠する気力が残っていなかった。
 なかなか応答しないインターフォンに、やはり真は不在かと思いかけたとき、扉が開いた。
「リン? お前、鍵は……」
 怪訝そうな真を部屋に押し込み、唇を重ねる。背後で扉が閉まるのも確認しない内に、俺は真をその場に押し倒した。
「リンっ」
 焦ったような、怒ったような声を上げた真が、俺の肩を掴む。でも、そんなことに構っていられる余裕はとうに失っていた。
「兄さん、お願い、熱いんだよ……」
 既にシャワーを浴びたのか、真は良いにおいがした。その首筋に顔を埋め、下半身を押し付ける。Tシャツ越しの真の体温を感じるだけで、体の疼きが増した気がした。
「お前、どこで何してた?」
「いつもと同じだよ……」
 どうにか誤魔化せないかと思ったが、真は眉を顰めた。
「酒臭い。あと、男と女両方のにおいがする」
 やはりばれているか。
「ホテルで……」
 正直に言うと、顔を上げさせられた。見据えてくる真の瞳は冷たい。
「なんだって?」
「変な薬飲まされて、体がおかしくなった。ねぇ、えっちしよ? 兄さんの入れて……」
 キスをしながらねだる。しかし、真に触れようとした俺の手は掴まれて動きを封じられた。
「まずはシャワーを浴びてからだ」
 有無を言わせぬ口調で、真は俺を浴室に連れて行った。服を脱がされ、シャワーをかけられる。
「つめたっ」
「誰と一緒だったんだ?」
 真はまだ温度の上がりきっていないシャワーを容赦なく向けてくる。寒さだけでなく、過敏になった肌を打つシャワーはくすぐったくて、俺は身をよじった。
「リン」
 服を着たままの真は濡れるのも構わずに顔を寄せてくる。俺は壁に背中を押しつけられ、正面から真を見た。
「兄さんの知らない人だよ」
 真が噛み付くようにキスを仕掛けてくる。片手で腰や胸をなでられ、もう一方の手でシャワーを全身に滑らされる。今の俺には強すぎる刺激に、あっという間に勃起するのがわかった。
「それで、何されたって?」
 体をひっくり返され、浴室の壁と向き合う。
「薬、飲まされて……」
 しゃがみ込んだ真に尻を掴まれ、熱をもったままのそこを覗き込まれる。
「口から?」
「ぁ、そこにも、入れられた……」
 真の舌打ちが聞こえたと思ったら、指を突っ込まれた。散々疼いていた粘膜を擦られる感覚に、俺は上がりそうになった声を慌てて塞ぐ。
「響くんだから、あんまり騒ぐなよ」
 念押しした真が指を動かす。中の具合を確かめるようにぐるりと回して、二本目を挿入する。兵藤にもそれくらいは入れられていたはずだから、わりとすんなり入ったようだ。その時の快感を思い出して真の指を締め付けてしまう。
「気分は悪くないのか?」
「んっ……だいじょうぶ、ゆび、気持ちぃっ……」
 真はまた小さく舌を打つと、広げたそこにシャワーを向けた。
「ぁあっ、あっ」
 今度は声を押さえる余裕もなかった。細かいシャワーの水圧が粘膜に触れて頭が真っ白になる。
「にいさ、それ無理っ」
 薬なんてとうに吸収されてしまったと思うが、真は指も入れて念入りにそこを洗った。ときおり感じる場所をなでられて、その度に勃起した性器から先走りがだらだらこぼれる。
「指以外も入れられた?」
 俺はこんな状態なのに、真は至って冷静に中の様子をあらためている。
「ない、してないからっ」
 本当はちょっと入れられたが、抜き差しされると釈明の余裕もなかった。
「他にされたことは?」
 真はようやく指を抜くと、シャワーを止めた。濡らしたタオルにボディーソープを垂らして泡立て始めている。
「女の子に、フェラされた……」
「あとは?」
「入れちゃった……」
「こっち向け」
 腕を掴んで振り向かされ、正面に立った真が俺の体を洗い始める。首筋、腕、指先まで丁寧に泡を伸ばされ、肩や胸にもタオルを滑らされる。乳首をかすめられた時は思わず兄の腕を掴んでいた。
「兄さん……もう、我慢できない」
「我慢しろ」
 淡々と告げた真は指先で突起をなでてくる。反対側もタオルで擦られ、膝から崩れ落ちそうになる。
「ぁっ、あ……」
「ここも触られた?」
 真の顔が見られないまま、俺は頷いた。
「だろうな」
 見なくても、彼の瞳がその口調と同じ冷たい色をしていることがわかる。それでも、俺の体が冷えることはなかった。
 全身泡まみれにされて、生温い心地よさにどっぷり浸りきった頃、ようやく真は性器に手を伸ばした。ずっと触ってほしくて震えるそこに指が絡められると、俺は今度こそ立っていられなくなった。真に縋り付いたまま床に座り込む俺の前に膝を折り、彼は勃起したそこを擦り始める。
 堪えきれない快感がすぐに全身に広がって、俺はあっという間に射精した。それでも全く治まらない勃起と熱に、息を乱しながら真を見上げる。
「兄さん、入れてよ……お願いだから……」
 真は懇願する俺を引き剥がすと、再びシャワーを掴んだ。
「言っただろ、洗ってからだ」
「ぅあ、ぁあっ」
 シャワーが俺の性器に向けられる。近すぎる距離でそんなことをされてじっとしていられるはずもなく、身動ぐ俺を真は押さえつけ、声はキスで殺された。
「んっ、んん、ぅっ」
 真の舌を噛みそうになる。無数の水滴に打たれて瞬く間に熱くなったそこに、真は更にシャワーを近づける。
「にいさっ、ぁっ、だめ……それ、止めてっ」
「洗ってるだけだろ」
 平然と言った真は先端を狙ってシャワーを動かす。強弱をつけてされると漏らすかと思うほどの刺激だった。
 射精する直前でシャワーは止められた。
「赤くなっちゃったな」
 身を屈めた真が俺の性器を咥え込む。
「ぅっあ……っ」
 先ほどまでと違う穏やかで優しい快感に体が震える。俺は瞬く間に真の口内に精液をあふれさせた。
 息を荒げる俺をよそに、真はシャワーで俺の精子やボディーソープの泡を洗い流す。
 俺は真の服を掴んで引き寄せ、唇を合わせた。真はだいぶ濡れてしまっている。白いシャツを着ているせいで、色が透け見える乳首に触れると、真は唇を離して俺の腕を掴んだ。水を止めたシャワーヘッド放り出し、全身から水が滴るのも構わず真の部屋に直行する。
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