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短編
#04*
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「あ、あっ……」
「ほら、嫌ならもっと抵抗しないと。入っちゃうよ?」
抵抗と言える抵抗は出来なかった。せいぜいユーリの肩を掴むくらいだ。そんなものは彼を止めるほどの力にはならず、受け入れるほどには広がっていないそこを、半ば無理矢理押し広げられる感覚に耐える他なかった。
苦痛がないと言えば嘘になる。しかし、普段の冷徹なユーリの顔が、ようやくわずかに歪められるのを目の当たりにして、痛みよりも熱が勝った。
「痛い?」
眉を寄せたユーリが間近で問いかける。
「あ、熱い、です……」
「そうなの?」
繋がっている箇所にユーリの手が伸びる。
「ああ、ほんとだね」
しばらくユーリは動きを止めて、文字通り体を重ねていた。
「重くない?」
「いえ……」
そんなことよりうるさい心臓の音が聞こえてしまわないか不安だった。熱をもった箇所から出来るだけ意識を逸らそうと試みる。無駄な努力だった。気にしないふりなどできない。ユーリとセックスしている。改めて考えると真は叫び出したくなった。
「中がうねってる。わざとやってるの?」
「ちがっ……」
「動いて欲しい?」
試すように尋ねたユーリが笑う。身を起こしたユーリは真の脚に手をかけ、勢いよく腰を打ち付けた。
「あっ」
上がった声を塞ぐ間もなかった。性急に追い込まれて言葉も出ない。
「ぁっ、あっ、ん」
ぬるま湯のような、温かな快感とは違う、どこか暴力じみた衝撃と、そこに潜む快楽の気配に恐怖を感じる。この人は、こんなに容赦ないセックスをする人だったのか。
「うわ、すごいな……」
何に対してか、ユーリが呟いた。感心したようなというより、どこか忌々しげですらある。舌打ちでもしそうな彼は、それでも何度も腰を叩きつけ、やがて真の中に射精した。
「あー……」
後悔の言葉でも続きそうな声を漏らして、ユーリが性器を引き抜く。中に出されたものが溢れる感触に体が震える。
「やば、めっちゃ早い。恥ずかしい」
なぜか少し赤くなるユーリになぜか愛しさが込み上げる。
「言い訳していい?」
「……ど、どうぞ」
「俺ふだんオナニーしないから」
噴き出しそうになり、真は慌てて顔を背けた。
「笑った? ねぇいま笑った?」
「わ、笑ってません」
「うそ、こっち向いて」
促されるままユーリを見ると、微笑んだ彼が愛おしげに唇を合わせてきた。
「もう一回していい?」
そんな顔で尋ねるのはずるいと思う。断れるはずがない。
「次はもうちょっともつはずだから、君のことも満足させてあげるよ」
「い、いえ、俺は……」
言い終えないうちにユーリの性器が再び押し込まれる。先ほどよりスムーズに出し入れされるそれは、心地良くて頭が溶け出しそうだった。
「あっ……ぁっ……」
「ゆっくりされるの気持ちいい?」
思わず頷きそうになる。声も抑えようと口元に手をやると、少しずつユーリが動きを速くする。限界まで追い込まれて、寸前で止められる。
「ぎゅうぎゅう締め付けてくるよ。いく前で止められるのたまんないよね。あと何回すれば君は素直になるかな?」
恐ろしい発言に目を見張ると、両手を押さえつけられた。
「君は誰が好きなの?」
質問の意図を正確に解することができなくて、真は言葉に詰まった。
「弟は違うだろ?」
「大事な……家族です」
「家族ね。そう呼べない関係なのは知ってるけど」
「なんで……」
ユーリの前で弟の話をしたことはほとんどないはずだ。
「君が俺の行動を把握してるように、俺だって、君がいつ、どこで何をしているか、知ろうと思えばいつでも知ることができるんだよ」
囁かれる声の甘さに思わず眉が寄る。しかし、次に彼が見せたのはずいぶんと切迫した表情だった。
「心配だった。あの日、君がもう二度と戻らなくなるんじゃないかと思うと、怖かった」
「そんなこと」
あるはずがない、と真はなぜか唇に笑みを乗せていた。それはユーリにこんな顔をさせていることへの優越と、自身への嘲りからくるのかもしれなかった。
「俺は……」
続きを封じるように、ユーリは深く唇を合わせてきた。止まっていた腰の動きも再開され、真はすぐに会話どころではなくなった。
「言わないで、止まらなくなるから」
キスの合間に告げたユーリの思い詰めたような顔に、胸が締め付けられるような気がしたが、お互いのために錯覚だと思うことにした。
持て余した熱は全てキスに変えてぶつけ、ユーリの背中に回した腕に力を込めた。
真にとって、ユーリは絶対的な存在だ。これから先、何があろうと真はユーリへの忠誠を忘れない。
そこに愛は、必要ない。
「ほら、嫌ならもっと抵抗しないと。入っちゃうよ?」
抵抗と言える抵抗は出来なかった。せいぜいユーリの肩を掴むくらいだ。そんなものは彼を止めるほどの力にはならず、受け入れるほどには広がっていないそこを、半ば無理矢理押し広げられる感覚に耐える他なかった。
苦痛がないと言えば嘘になる。しかし、普段の冷徹なユーリの顔が、ようやくわずかに歪められるのを目の当たりにして、痛みよりも熱が勝った。
「痛い?」
眉を寄せたユーリが間近で問いかける。
「あ、熱い、です……」
「そうなの?」
繋がっている箇所にユーリの手が伸びる。
「ああ、ほんとだね」
しばらくユーリは動きを止めて、文字通り体を重ねていた。
「重くない?」
「いえ……」
そんなことよりうるさい心臓の音が聞こえてしまわないか不安だった。熱をもった箇所から出来るだけ意識を逸らそうと試みる。無駄な努力だった。気にしないふりなどできない。ユーリとセックスしている。改めて考えると真は叫び出したくなった。
「中がうねってる。わざとやってるの?」
「ちがっ……」
「動いて欲しい?」
試すように尋ねたユーリが笑う。身を起こしたユーリは真の脚に手をかけ、勢いよく腰を打ち付けた。
「あっ」
上がった声を塞ぐ間もなかった。性急に追い込まれて言葉も出ない。
「ぁっ、あっ、ん」
ぬるま湯のような、温かな快感とは違う、どこか暴力じみた衝撃と、そこに潜む快楽の気配に恐怖を感じる。この人は、こんなに容赦ないセックスをする人だったのか。
「うわ、すごいな……」
何に対してか、ユーリが呟いた。感心したようなというより、どこか忌々しげですらある。舌打ちでもしそうな彼は、それでも何度も腰を叩きつけ、やがて真の中に射精した。
「あー……」
後悔の言葉でも続きそうな声を漏らして、ユーリが性器を引き抜く。中に出されたものが溢れる感触に体が震える。
「やば、めっちゃ早い。恥ずかしい」
なぜか少し赤くなるユーリになぜか愛しさが込み上げる。
「言い訳していい?」
「……ど、どうぞ」
「俺ふだんオナニーしないから」
噴き出しそうになり、真は慌てて顔を背けた。
「笑った? ねぇいま笑った?」
「わ、笑ってません」
「うそ、こっち向いて」
促されるままユーリを見ると、微笑んだ彼が愛おしげに唇を合わせてきた。
「もう一回していい?」
そんな顔で尋ねるのはずるいと思う。断れるはずがない。
「次はもうちょっともつはずだから、君のことも満足させてあげるよ」
「い、いえ、俺は……」
言い終えないうちにユーリの性器が再び押し込まれる。先ほどよりスムーズに出し入れされるそれは、心地良くて頭が溶け出しそうだった。
「あっ……ぁっ……」
「ゆっくりされるの気持ちいい?」
思わず頷きそうになる。声も抑えようと口元に手をやると、少しずつユーリが動きを速くする。限界まで追い込まれて、寸前で止められる。
「ぎゅうぎゅう締め付けてくるよ。いく前で止められるのたまんないよね。あと何回すれば君は素直になるかな?」
恐ろしい発言に目を見張ると、両手を押さえつけられた。
「君は誰が好きなの?」
質問の意図を正確に解することができなくて、真は言葉に詰まった。
「弟は違うだろ?」
「大事な……家族です」
「家族ね。そう呼べない関係なのは知ってるけど」
「なんで……」
ユーリの前で弟の話をしたことはほとんどないはずだ。
「君が俺の行動を把握してるように、俺だって、君がいつ、どこで何をしているか、知ろうと思えばいつでも知ることができるんだよ」
囁かれる声の甘さに思わず眉が寄る。しかし、次に彼が見せたのはずいぶんと切迫した表情だった。
「心配だった。あの日、君がもう二度と戻らなくなるんじゃないかと思うと、怖かった」
「そんなこと」
あるはずがない、と真はなぜか唇に笑みを乗せていた。それはユーリにこんな顔をさせていることへの優越と、自身への嘲りからくるのかもしれなかった。
「俺は……」
続きを封じるように、ユーリは深く唇を合わせてきた。止まっていた腰の動きも再開され、真はすぐに会話どころではなくなった。
「言わないで、止まらなくなるから」
キスの合間に告げたユーリの思い詰めたような顔に、胸が締め付けられるような気がしたが、お互いのために錯覚だと思うことにした。
持て余した熱は全てキスに変えてぶつけ、ユーリの背中に回した腕に力を込めた。
真にとって、ユーリは絶対的な存在だ。これから先、何があろうと真はユーリへの忠誠を忘れない。
そこに愛は、必要ない。
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