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短編
#06*
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寝室と隣り合わせたウォークインクローゼットは照明が切れているらしく薄暗い。寝室と接する壁の天井付近に開いた隙間から漏れる明かりだけが広々としたクローゼットを照らしている。
扉が閉まるとジーノが笑いだした。
「なに? 気持ち悪いんだけど」
声を殺して肩を震わせる彼に凛太朗は怪訝な顔をした。
「だってお前、カイのこと敵視しすぎだろ。何あれ、嫉妬? シンの部下だから?」
「はぁ? なんだよそれ、別に嫉妬なんかしてな」
否定が終わらないうちにジーノに腕を引かれ、抱きしめられた。
「初めて見た。あんな感じ悪いリン。いつも愛想良いわけじゃないんだな」
「なんだよそれ……ていうかそこまで感じ悪くなかったし」
「いや、悪かったよ。カイの奴、本気でびびってたぞ。最後の方は凹んでたな。大好きなシンの弟に嫌われたーって」
「なんなのあいつ。兄さんの何?」
「さぁな」
知っているくせにはぐらかされた気がしてジーノを睨むと、温かい手のひらが頬に触れ、唇を重ねられた。
「おい、こんなとこで……」
顔を逸らして逃れ、抗議するも首の後ろを掴まれ先ほどよりも深く口付けられる。
「ん……ジーノっ……」
片腕を腰に回され、密着した上半身からジーノの熱が伝わってくる。肌に触れる外気との温度差に身を震わせるとジーノはようやく唇を離した。
「寒いか?」
「いや……」
首を支えていた手が首筋に滑る。
「ここ、すごい痕になってるぞ。鏡で見たか?」
「うん。でも、誰かに会うなんて思ってなかったから」
「だろうな」
何がおかしいのかジーノはまた笑っている。
「俺との約束、覚えてるか?」
「覚えてるよ……」
凛太朗は気まずくなって目を逸らした。
「昨日お前から誘ってたのに?」
ジーノの力を借りる代わりに真とセックスしないと約束したはのつい最近のことだ。
「二人きりじゃなかったからノーカンだろ。あんた起きてたし」
「俺が起きてるって知ってたのか?」
「まぁ……」
ジーノが起きていると知りながら、真とそういう行為に及ぼうとしていたなんて変態じみていて口ごもってしまう。
「いいさ。今回は大目に見てやる。俺も楽しませてもらったからな」
「言いながら尻をなでないでくれる?」
「そんな格好でふらふらしてるお前が悪い」
下着越しに尻をなでられ、熱くなった股間を押し付けられる。
「う、そだろ、昨日さんざんしたじゃん」
「お前らはな。俺はそうでもないんだよ」
「そんなの、あんたが遅いのが悪ぃっ……」
割り開かれた尻の狭間に指が押し入ってくる。同時に胸をなめられ凛太朗は息を詰めた。
「まっ、待てって」
「静かに。シンが起きるぞ」
無責任なことを言いながらジーノが胸に吸い付いてくる。歯を立てられたそこを舌先で優しく嬲られると一気に体が熱くなるのがわかった。
「やめっ」
制止も聞かずにジーノは手早く凛太朗の体をひっくり返し、扉に押し付けると下着を下ろした。
「わっ、マジで? やばいって」
この扉の向こうは寝室だ。真がまだ寝ている。ここは完全な密室ではないし、天井付近の開口部から、こちらの声がいつ届いてもおかしくない。しかもリビングにはカイもいる。いつまでも戻らない自分たちを怪しんで様子を見に来る可能性だってある。
「カイの心配はしなくていいぞ。あいつはそんなに出過ぎたまねはしないからな」
「そういう問題じゃっ……」
数本まとめて突っ込まれた指に体が強張る。
「昨日いっぱいしたからすぐに入りそうだな」
「いや、無理だって!」
抗議もむなしくそこにジーノの性器が押し付けられる。
「うぁっ……」
無理矢理押し入られる衝撃に凛太朗は手のひらで口をふさいだ。
「きっつ……」
顔の横に手をついたジーノが苦しげに呻くのを聞きながらそれはこちらのせりふだと思う。
痛いし苦しい。でも強引に広げられる粘膜がやたらと疼くのがわかる。熱くて硬いそれで擦られる快感を知っている。
なんとか奥まで受け入れる頃にはすっかり息が上がっていた。シャワーを浴びたばかりなのに全身が汗ばんで気持ち悪い。
ジーノはすぐに動くことはせず、後ろから凛太朗を抱きしめ、耳やうなじ、肩に唇を押し付ける。胸をなで回す手がご丁寧に乳首をこすって、硬くなったところを指先で弾かれ、下半身に力が入る。
その反応を揶揄するように耳元でジーノが下品な言葉を囁き、普段の紳士然とした彼との落差に顔が熱くなる。
「リン、動いていい?」
わざと尋ねる彼は意地悪だと思う。凛太朗はわずかに後ろを振り返って頷いた。途端に強かに腰を打ちつけられ、上がりそうになる声はジーノの唇によって塞がれた。痛いくらい扉に体を押し付けられながら、凛太朗は硬く目を閉じた。
最終的に足腰が立たなくなるまで責められた。床にへたりこむ凛太朗を労わるように、ジーノが優しく頭をなでる。
「大丈夫か?」
「なわけないじゃん。朝から何やってんの……」
クローゼット内のこのなんとも言えない空気をどうしよう。真にばれずにこっそり換気することができるだろうか。
「動くなよ。ふくもの持ってくるから」
ジーノがどこからかティッシュを持ってくる。それを抜いて後始末をする。辛うじて床や壁は汚していないが、やはりもう一度シャワーを浴びたい。
「ジーノってさぁ、兄さんのことが好きなんびゃないの?」
自然と口をついて出た疑問に、ジーノは意外にも少し考える素振りを見せた。
「そう思ってた時期もあるけど……」
「けど?」
予想より神妙な面持ちをするジーノの話の続きが気になって仕方ない。
「お前の言う好きとはちょっと違うな。お前だってシンのことを恋愛対象として好きなわけじゃないだろ?」
「それはそうだけど」
「俺も同じだよ」
「家族みたいな?」
ジーノが笑い出す。
「普通の家族はこんなことしないだろ?」
「まぁ……」
あまり納得のいかない回答に黙ると、ジーノが再び口を開いた。
「お前らを見ててわかったよ。お互いを大切に思ってるし愛情もある。でも恋人に抱くような気持ちじゃない。ちょっと性癖が歪んでるだけだな、二人とも」
「変かな?」
「何を基準にして変なんだ? どうでもいいだろ、そんなの。でもまぁ、お前らの依存を強くしてる原因の一つではあるだろうな。俺との約束は守ってもらうぞ」
「わかってるよ」
「そんな顔するなよ」
自然と俯いた顔を上向かされる。
「俺がいるだろ?」
「ジーノ、俺のこと好きなの?」
「さぁ、どうかな」
ずるい大人の顔で笑ったジーノの唇が静かに重ねられた。
扉が閉まるとジーノが笑いだした。
「なに? 気持ち悪いんだけど」
声を殺して肩を震わせる彼に凛太朗は怪訝な顔をした。
「だってお前、カイのこと敵視しすぎだろ。何あれ、嫉妬? シンの部下だから?」
「はぁ? なんだよそれ、別に嫉妬なんかしてな」
否定が終わらないうちにジーノに腕を引かれ、抱きしめられた。
「初めて見た。あんな感じ悪いリン。いつも愛想良いわけじゃないんだな」
「なんだよそれ……ていうかそこまで感じ悪くなかったし」
「いや、悪かったよ。カイの奴、本気でびびってたぞ。最後の方は凹んでたな。大好きなシンの弟に嫌われたーって」
「なんなのあいつ。兄さんの何?」
「さぁな」
知っているくせにはぐらかされた気がしてジーノを睨むと、温かい手のひらが頬に触れ、唇を重ねられた。
「おい、こんなとこで……」
顔を逸らして逃れ、抗議するも首の後ろを掴まれ先ほどよりも深く口付けられる。
「ん……ジーノっ……」
片腕を腰に回され、密着した上半身からジーノの熱が伝わってくる。肌に触れる外気との温度差に身を震わせるとジーノはようやく唇を離した。
「寒いか?」
「いや……」
首を支えていた手が首筋に滑る。
「ここ、すごい痕になってるぞ。鏡で見たか?」
「うん。でも、誰かに会うなんて思ってなかったから」
「だろうな」
何がおかしいのかジーノはまた笑っている。
「俺との約束、覚えてるか?」
「覚えてるよ……」
凛太朗は気まずくなって目を逸らした。
「昨日お前から誘ってたのに?」
ジーノの力を借りる代わりに真とセックスしないと約束したはのつい最近のことだ。
「二人きりじゃなかったからノーカンだろ。あんた起きてたし」
「俺が起きてるって知ってたのか?」
「まぁ……」
ジーノが起きていると知りながら、真とそういう行為に及ぼうとしていたなんて変態じみていて口ごもってしまう。
「いいさ。今回は大目に見てやる。俺も楽しませてもらったからな」
「言いながら尻をなでないでくれる?」
「そんな格好でふらふらしてるお前が悪い」
下着越しに尻をなでられ、熱くなった股間を押し付けられる。
「う、そだろ、昨日さんざんしたじゃん」
「お前らはな。俺はそうでもないんだよ」
「そんなの、あんたが遅いのが悪ぃっ……」
割り開かれた尻の狭間に指が押し入ってくる。同時に胸をなめられ凛太朗は息を詰めた。
「まっ、待てって」
「静かに。シンが起きるぞ」
無責任なことを言いながらジーノが胸に吸い付いてくる。歯を立てられたそこを舌先で優しく嬲られると一気に体が熱くなるのがわかった。
「やめっ」
制止も聞かずにジーノは手早く凛太朗の体をひっくり返し、扉に押し付けると下着を下ろした。
「わっ、マジで? やばいって」
この扉の向こうは寝室だ。真がまだ寝ている。ここは完全な密室ではないし、天井付近の開口部から、こちらの声がいつ届いてもおかしくない。しかもリビングにはカイもいる。いつまでも戻らない自分たちを怪しんで様子を見に来る可能性だってある。
「カイの心配はしなくていいぞ。あいつはそんなに出過ぎたまねはしないからな」
「そういう問題じゃっ……」
数本まとめて突っ込まれた指に体が強張る。
「昨日いっぱいしたからすぐに入りそうだな」
「いや、無理だって!」
抗議もむなしくそこにジーノの性器が押し付けられる。
「うぁっ……」
無理矢理押し入られる衝撃に凛太朗は手のひらで口をふさいだ。
「きっつ……」
顔の横に手をついたジーノが苦しげに呻くのを聞きながらそれはこちらのせりふだと思う。
痛いし苦しい。でも強引に広げられる粘膜がやたらと疼くのがわかる。熱くて硬いそれで擦られる快感を知っている。
なんとか奥まで受け入れる頃にはすっかり息が上がっていた。シャワーを浴びたばかりなのに全身が汗ばんで気持ち悪い。
ジーノはすぐに動くことはせず、後ろから凛太朗を抱きしめ、耳やうなじ、肩に唇を押し付ける。胸をなで回す手がご丁寧に乳首をこすって、硬くなったところを指先で弾かれ、下半身に力が入る。
その反応を揶揄するように耳元でジーノが下品な言葉を囁き、普段の紳士然とした彼との落差に顔が熱くなる。
「リン、動いていい?」
わざと尋ねる彼は意地悪だと思う。凛太朗はわずかに後ろを振り返って頷いた。途端に強かに腰を打ちつけられ、上がりそうになる声はジーノの唇によって塞がれた。痛いくらい扉に体を押し付けられながら、凛太朗は硬く目を閉じた。
最終的に足腰が立たなくなるまで責められた。床にへたりこむ凛太朗を労わるように、ジーノが優しく頭をなでる。
「大丈夫か?」
「なわけないじゃん。朝から何やってんの……」
クローゼット内のこのなんとも言えない空気をどうしよう。真にばれずにこっそり換気することができるだろうか。
「動くなよ。ふくもの持ってくるから」
ジーノがどこからかティッシュを持ってくる。それを抜いて後始末をする。辛うじて床や壁は汚していないが、やはりもう一度シャワーを浴びたい。
「ジーノってさぁ、兄さんのことが好きなんびゃないの?」
自然と口をついて出た疑問に、ジーノは意外にも少し考える素振りを見せた。
「そう思ってた時期もあるけど……」
「けど?」
予想より神妙な面持ちをするジーノの話の続きが気になって仕方ない。
「お前の言う好きとはちょっと違うな。お前だってシンのことを恋愛対象として好きなわけじゃないだろ?」
「それはそうだけど」
「俺も同じだよ」
「家族みたいな?」
ジーノが笑い出す。
「普通の家族はこんなことしないだろ?」
「まぁ……」
あまり納得のいかない回答に黙ると、ジーノが再び口を開いた。
「お前らを見ててわかったよ。お互いを大切に思ってるし愛情もある。でも恋人に抱くような気持ちじゃない。ちょっと性癖が歪んでるだけだな、二人とも」
「変かな?」
「何を基準にして変なんだ? どうでもいいだろ、そんなの。でもまぁ、お前らの依存を強くしてる原因の一つではあるだろうな。俺との約束は守ってもらうぞ」
「わかってるよ」
「そんな顔するなよ」
自然と俯いた顔を上向かされる。
「俺がいるだろ?」
「ジーノ、俺のこと好きなの?」
「さぁ、どうかな」
ずるい大人の顔で笑ったジーノの唇が静かに重ねられた。
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