ねむれない蛇

佐々

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短編

#04*

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 目の前に広がっているのは実に頭の痛い光景だった。
 凛太朗は先ほどのお返しとばかりに真の性器に舌を這わせながら自分の尻の穴をいじっている。そこに真のをはめて欲しくて自らそんなことをしているのかと思うと、後ろめたさと興奮で顔が熱くなる。
「もういいかな……」
 欲情に瞳を潤ませた凛太朗が体を起こす。
「まだ早くないか?」
 後ろからジーノが手を伸ばし、凛太朗の尻を掴んだ。
「あっ」
 短く声が上がったのは、先ほどまで凛太朗の指が入っていた場所にジーノのそれが差し入れられたからだ。
「おー結構いい感じだな。シンの舐めてそんなに興奮したんだ。いや、シンが犯されてるとこ見てか?」
 楽しそうな声で言ったジーノが凛太朗のそこをかき回す。
「ぁっ、あ、やめっ」
「ぐずぐずじゃん。もういきそうだろ」
 真の首に腕を回し、縋り付いてくる凛太朗が必死に我慢していることがわかる。強張る体は小刻みに震え、首筋に押し付けられた唇から漏れる息が熱い。
「リン、まだいくなよ」
 告げると一層強く抱きしめられた。泣きそうな顔を上げた凛太朗がキスをせがんでくる。それに応えながら真はジーノの指と入れ替わりに自身のいきり立ったものを挿入した。邪魔なジーノを視界に入れないようにしながら、凛太朗の腰を掴んで奥まで突き上げる。
「あ、ぁー……っ」
 出し入れするまでもなく、凛太朗は感極まったように喉の奥で小さく声を上げて射精してしまった。腹のあたりを濡らす性器を掴み、搾り取るようにこすりながら内側を犯してやる。
「ひっ、あ、だめっ、へ、変になっ」
 身をよじって逃れようとする凛太朗を押さえつけてキスをする。
「んっ、んーっ……」
 唇を塞ぎながら真は容赦なく狭い場所に自分の欲望を突き立てた。
「ほら、奥までされるの好きだろ?」
 もう先ほどまで自分に向けられていた男らしい表情はかけらもない。眦は下がり、平素の鋭い眼差しも、肉欲を感じさせない涼しげな面立ちもなりを潜め、快楽にとろけた瞳が切なげに揺れている。
「リン? 気持ちいい時はなんて言うんだ?」
 かつて自分が教えたことを反復させるように問いかけると、凛太朗は一度引き結んだ唇をゆっくりと開いた。
「き、きもちいいっ……」
 羞恥にわななく弟がどうしようもなく愛おしくて、真は凛太朗をベッドに押し倒した。
「リン、リンっ」
 耳を食み、舌を入れると裏返った声が上がる。たまらなげに逸らされた首筋に唇を寄せて薄い皮膚を吸い上げる。歯を立てたらさすがに抵抗されたので、肩を掴む手に指を絡めてベッドに縫い留める。
「あ、あっ、あ、にいさっ、も、いっちゃ」
「いいよ、俺もっ……」
 激しく腰を打ちつけると長くはもたなかった。タイミングを調節する余裕もなく、真は絶頂を目前に自然と狭まる凛太朗の粘膜に射精した。
「ぅあっ、ぁっ……」
 体を震わせながら凛太朗が勢いのなくなった精液を漏らす。ベッドに体を沈ませた後も余韻で小さく喘ぐ様は興奮を煽るには十分だった。しかしさすがにもう体力が残っていない。萎えたものを抜くと赤くなったそこから真の精液が流れ出した。
「よし、交代な」
 肩に触れられたと思ったらジーノが体を割り込ませてきた。
「おいっ」
 止める間もなくジーノは凛太朗の脚を抱え上げ、柔らかくなった粘膜に押し入った。
「ぁ、やだ、無理っ」
 声を上げる凛太朗を圧倒的な力の差で押さえつけ、速く深い抜き差しが始まる。
「ひっ、や、にいさっ、たすけっ……」
 とうとう泣き出してしまった凛太朗が必死に手を伸ばしてくる。真はその手を掴み、濡れた頬に口付けた。
「リン、大丈夫、気持ちいいことに集中して」
 弟の体を好き勝手に犯すジーノは腹立たしいが、今はそれよりも凛太朗を宥めてやりたい。処理しきれない快感に感情のコントロールも失ってしまった彼は、子供のように涙を溢れさせている。
「にいさ、兄さんっ」
「シンのことばっか呼ぶなよ。妬けるなぁ」
 全くそんな風には聞こえない声で言ったジーノが、上体を折って凛太朗に覆いかぶさる。
「リン、今お前を犯してるのは誰だ?」
 間近で顔を覗き込まれた凛太朗が濡れた瞳でジーノを見る。
「ジーノ……」
「そう。シンとどっちが気持ちいい?」
 胸糞の悪い質問をしながらジーノが腰を揺らす。先ほどまでよりもゆっくりとした動きに凛太朗の唇がわななく。
「んっ、わかんなっ……」
「そっか。じゃあわかるまでやろう」
 根元まで入っていたものをぎりぎりまで抜いて、そのまま浅い場所を小刻みに犯す。次第にじれったさに耐えきれなくなった凛太朗が固く目をつぶった瞬間、奥まで突き入れる。
「あっ、あ……っ」
 とたんに見開かれた瞳が濡れて、細められたそこから涙がこぼれる。
「この前より良さそうだな」
 ジーノはおそらくわざと真にも聞こえるように言った。凛太朗の肩が小さく跳ねるのを真は見逃さなかった。
「この前?」
 すかさず尋ねると凛太朗は気まずそうに目を逸らした。
「あの時は入れてないけどな」
「お前は黙ってろ」
 ジーノを睨みつけて凛太朗の瞳を覗き込む。
「リン?」
 やがて観念したように目を閉じた凛太朗がゆっくりと口を開く。
「ごめんなさい……」
 小さく放たれた謝罪の言葉に真は微笑んだ。なぜだろう。今さらながら、自分たちの関係の歪さに笑えてきた。弟を愛してる。彼もそうだろう。でも、互いの知らないところで、互いの知らない相手と体を重ね、そこに嫉妬や独占欲を覚えるのと同じくらい興奮している。これはたぶん性癖だ。恋愛感情ではない。
「ジーノ、ここ突いてやって。リンが好きなとこ」
 まだ柔らかいままの凛太朗の性器を掴み、その裏側に触れるように促す。
「こうか?」
 上の方の性感帯を突かれると凛太朗が瞠目した。
「うそ、やだ、にいさっ」
「ずっとやってると何回もいけるから」
 一定の速度で同じ個所を責められ、凛太朗が歯を食いしばる。硬さを取り戻し始めた性器をなで、張り出した部分に指を引っ掛けるように上下させる。
「あ、あっ、ぁ、そこっ、やだ」
「背中浮くほど気持ちい? 乳首もすげーたってんじゃん」
 すっかり硬くなったそこをつまみ、指先でこする。
「ぁっ、あー……っ」
 つま先まで力を入れた凛太朗が絶頂する。射精はしておらず、真の触れた性器は未だ張り詰めたままだった。
「一回目」
 ぬるつく性器を扱きながらジーノに視線をやると、彼は少し笑って腰の動きを再開させた。
「ん、あ、ぁっ、あ」
 先ほどよりも速い抜き差しに凛太朗がシーツに顔を押し付ける。揺れる体を押さえつけ、ジーノが腰を叩き込む度、真の手中にある性器から先走りがこぼれる。
 もうだいぶ深い場所まで犯されているだろうに、凛太朗はたまらなさげに喘いでいる。頬に触れると凛太朗が顔を上げた。
「にいさん、キスしてっ……」
 真は食らいつくように唇を重ねた。声も漏れないほど深く、息もできないほど激しく口内を蹂躙する。触れ合った粘膜を通じて凛太朗の熱が伝わってくるようだった。快感に震える体を抱きしめながら、真は最後まで唇を合わせていた。
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