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おさない凶器
#19
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「だめだ、やっぱり出ない……」
何度かけても繋がらない電話にヨウは次第に表情を曇らせていった。
「コールはしてるの?」
凛太朗が尋ねるとヨウは頷いた。
「少し前までは話し中だったのに……」
「誰かと電話してたってことか。でもコールが鳴るなら通話を終えているはず。なのに電話が繋がらないとしたら、わざと出ないか、出られないかのどちらかだな」
青い顔で激しい雨の中へ飛び出そうとする彼女の腕を掴む。
「放せ!」
「あてはあるのか? 闇雲に探し回ったって意味ないだろ」
「だからってじっとしてられるか!」
猫のような瞳はきつくこちらを睨みつけている。それでも触れた腕から小さな震えが伝わってきて、凛太朗は彼女を抱きしめたくなるのをどうにかこらえた。そんなことはなんの解決にもならない。
「電話が鳴るってことは電源が入ってるってことだ。まずは位置情報を確認して場所を特定しよう。確かボスはいくつか電話を持ってたよな」
気持ちを静めるように深呼吸をした彼女は頷いた。
「少なくとも二つは携帯している。私たちと連絡を取る用と、それ以外とで分けてるはずだ」
「どっちも電話は鳴る?」
ヨウが頷く。凛太朗は彼女の手を放し、ポケットからスマートフォンを取り出した。真の番号を呼び出そうとして、先ほどユーリがかけた電話が繋がらなかったことを思い出す。ユーリにならってジーノに相談することにした。
すぐに電話に出た彼は終始落ち着いた様子で話を聞き、並行してユーリの端末から取得した位置情報を凛太朗に送ってくれた。
「どうだ? 俺もさっきまであいつと電話してたからそう離れてはいないと思うんだが」
電話をスピーカーにし、ユーリの端末があると思われる場所を確認する。
「一つは車だと思う。電話の時、変わった様子は?」
「あー……そういや最初の方なんかよそよそしかったけど、お前らにしょーもない悪戯仕掛けたみたいだからそのせいだろ」
ということはやはり、ユーリが電話に出られない状況に陥った可能性があるのはジーノとの通話が終わってからだ。もう一つの位置情報も車からそれほど遠くない場所を指している。
「わかった。とりあえず向かってみる」
「待て、また一人で無茶する気か? いま近くに居る奴を応援によこすから勝手に動くな」
「でも……」
行動するなら早いほうがいい。しかし、昨日の一件があるため強く反論することもできない凛太朗を見かねてか、ヨウが口を開いた。
「ジーノ、大丈夫だ。私も一緒に行く」
先ほどまでとは打って変わり、頼もしい口調だった。
「ヨウ……そうか、お前がいるんだったな。確かにその辺りはお前の庭も同然だと思うが……」
「ああ、そうだ。それに私は強い」
「そこは同意しかねるが、わかった。ひとまず向かってくれ。俺も部下を向かわせる。いいかお前ら、絶対に無茶はするなよ。何かわかったらこまめに連絡を」
「ジーノ、お前は過保護すぎる。もう切るぞ」
「ヨウ! リンにも無茶はするなと」
早口でまくしたてるジーノにヨウは勝手に終話ボタンを押した。凛太朗と目が合うと気遣わしげな表情を浮かべる。
「お前はここで待っててもいいんだぞ」
やけに大人びた顔をすると思った。もしかしたら彼女は自分よりも年上なのかもしれない。
「俺も行くよ。あの人を守らなきゃ。俺の銃を返してくれる?」
要求すると彼女はこちらを一瞥して、上着から銃を抜いた。
「本当に撃てるのか?」
受け取りながら、疑わしげな視線を向けてくる彼女に笑って見せる。
「俺はシンの弟だよ?」
彼女の顔が更に翳りを帯びる。兄さん、一体この子に何をしたんだ。
何度かけても繋がらない電話にヨウは次第に表情を曇らせていった。
「コールはしてるの?」
凛太朗が尋ねるとヨウは頷いた。
「少し前までは話し中だったのに……」
「誰かと電話してたってことか。でもコールが鳴るなら通話を終えているはず。なのに電話が繋がらないとしたら、わざと出ないか、出られないかのどちらかだな」
青い顔で激しい雨の中へ飛び出そうとする彼女の腕を掴む。
「放せ!」
「あてはあるのか? 闇雲に探し回ったって意味ないだろ」
「だからってじっとしてられるか!」
猫のような瞳はきつくこちらを睨みつけている。それでも触れた腕から小さな震えが伝わってきて、凛太朗は彼女を抱きしめたくなるのをどうにかこらえた。そんなことはなんの解決にもならない。
「電話が鳴るってことは電源が入ってるってことだ。まずは位置情報を確認して場所を特定しよう。確かボスはいくつか電話を持ってたよな」
気持ちを静めるように深呼吸をした彼女は頷いた。
「少なくとも二つは携帯している。私たちと連絡を取る用と、それ以外とで分けてるはずだ」
「どっちも電話は鳴る?」
ヨウが頷く。凛太朗は彼女の手を放し、ポケットからスマートフォンを取り出した。真の番号を呼び出そうとして、先ほどユーリがかけた電話が繋がらなかったことを思い出す。ユーリにならってジーノに相談することにした。
すぐに電話に出た彼は終始落ち着いた様子で話を聞き、並行してユーリの端末から取得した位置情報を凛太朗に送ってくれた。
「どうだ? 俺もさっきまであいつと電話してたからそう離れてはいないと思うんだが」
電話をスピーカーにし、ユーリの端末があると思われる場所を確認する。
「一つは車だと思う。電話の時、変わった様子は?」
「あー……そういや最初の方なんかよそよそしかったけど、お前らにしょーもない悪戯仕掛けたみたいだからそのせいだろ」
ということはやはり、ユーリが電話に出られない状況に陥った可能性があるのはジーノとの通話が終わってからだ。もう一つの位置情報も車からそれほど遠くない場所を指している。
「わかった。とりあえず向かってみる」
「待て、また一人で無茶する気か? いま近くに居る奴を応援によこすから勝手に動くな」
「でも……」
行動するなら早いほうがいい。しかし、昨日の一件があるため強く反論することもできない凛太朗を見かねてか、ヨウが口を開いた。
「ジーノ、大丈夫だ。私も一緒に行く」
先ほどまでとは打って変わり、頼もしい口調だった。
「ヨウ……そうか、お前がいるんだったな。確かにその辺りはお前の庭も同然だと思うが……」
「ああ、そうだ。それに私は強い」
「そこは同意しかねるが、わかった。ひとまず向かってくれ。俺も部下を向かわせる。いいかお前ら、絶対に無茶はするなよ。何かわかったらこまめに連絡を」
「ジーノ、お前は過保護すぎる。もう切るぞ」
「ヨウ! リンにも無茶はするなと」
早口でまくしたてるジーノにヨウは勝手に終話ボタンを押した。凛太朗と目が合うと気遣わしげな表情を浮かべる。
「お前はここで待っててもいいんだぞ」
やけに大人びた顔をすると思った。もしかしたら彼女は自分よりも年上なのかもしれない。
「俺も行くよ。あの人を守らなきゃ。俺の銃を返してくれる?」
要求すると彼女はこちらを一瞥して、上着から銃を抜いた。
「本当に撃てるのか?」
受け取りながら、疑わしげな視線を向けてくる彼女に笑って見せる。
「俺はシンの弟だよ?」
彼女の顔が更に翳りを帯びる。兄さん、一体この子に何をしたんだ。
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