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鈍色の街
#15
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その後も色々な話をした。クラウディオのこと、凛太朗自身のことも、この国に来てからまだ誰にも話していない内容まで凛太朗は自然と口にしていた。
クラウディオがケーキを食べ終えて、コーヒーを飲み終える頃、窓の外に車の気配がした。ブラインド越しにヘッドライトの明かりが漏れている。短いクラクションが鳴った。
「迎えだ」
ブラインドごしに外を覗いたクラウディオが凛太朗を振り返って言った。
眠ってしまったエリーザを抱いたアメリアが玄関まで見送りに来てくれた。
「夕食ごちそうさま。美味しかったよ」
「会えて嬉しかったわ。素敵なプレゼントを選んでくれてありがとう」
そういえばクラウディオに彼女のバッグを買わせたのだった。無事に彼女の手に渡ったらしい。
「気に入ってくれた?」
「ええ、とっても可愛かったわ。大切に使うわね」
「買ったのは俺だぞ?」
隣でぼやいたクラウディオにアメリアがキスをする。
「そうよね、ありがとう。愛してるわ」
改めてアメリアとレジーナにお礼とおやすみを言って家を出る。
外に白いセダンが停まっていて、ジーノが車体に寄りかかって煙草を吸っていた。クラウディオと一緒にそちらに向かう。
「ボス、お待たせました」
「ああ、お疲れさん。リン、しっかり勉強できたか?」
「おかげさまで」
「そりゃ良かった。じゃあ帰るか。クラウディオ、世話になったな」
「いえ、わざわざ迎えに来て頂いてすみません」
「あいつがどうしてもって言うから帰り道に寄っただけだ」
ジーノが指差した運転席には真の姿があった。煙草をくわえ、いらいらとした様子でハンドルを叩いている。
「シンも来てたんですね。あいさつしたほうが……」
「いや、それは不要だ。お前の顔見たらぶん殴りそうだからってあいつから自重したのに、わざわざ波風立てることはないからな」
ジーノが焦ったように言う。
「わかりました。では、お気をつけて。リン、またな」
「色々ありがとう。おやすみ」
凛太朗は車に乗り込んだ。運転席の真と目が合い、車を動かした彼はすぐに再び後ろを振り返った。
「なんだその顔! やっぱ怪我してんじゃねえか!」
「シン! 危ないから前見て運転しろ!」
「うるせぇ! 文句があるならてめーが運転しやがれ!」
「行きは俺がしたんだから帰りくらい代われよ! お前の車だろこれ!」
「ああそうだよ俺の愛車だ! なら降りろ! 俺の車なんだから文句ねえだろ!」
「うるせーよ! リンは疲れてるんだから静かにしろ!」
「そうだリン、誰にやられた? 言え!」
先ほどまでと打って変わった騒がしい空気に凛太朗はため息をついた。
「大したことないから大丈夫だよ。ちょっとぶつけただけだし」
「ちょっとぶつけただけでそんなに腫れるか! それに日々俺が鍛えてるのにお前がそんなドジ踏むわけねーだろ! どこのどいつだ! ぶっ殺してやる!」
「うるさいなぁ……」
思わず本音が漏れた。
「リン! 俺はお前を心配して」
「あーもーわかった! 運転代わるから車停めろ! こんなくだらない理由で事故って死んだらカンドレーヴァの名前に傷がつく!」
「もとはと言えばてめぇのせいだろうが!」
凛太朗はあくびを漏らした。前の二人は相変わらずギャーギャーと騒がしいが、そんな雑音も気にならなくなるほどの睡魔に襲われた。凛太朗は襲い来る眠気に抗わず、瞼を下ろした。
クラウディオがケーキを食べ終えて、コーヒーを飲み終える頃、窓の外に車の気配がした。ブラインド越しにヘッドライトの明かりが漏れている。短いクラクションが鳴った。
「迎えだ」
ブラインドごしに外を覗いたクラウディオが凛太朗を振り返って言った。
眠ってしまったエリーザを抱いたアメリアが玄関まで見送りに来てくれた。
「夕食ごちそうさま。美味しかったよ」
「会えて嬉しかったわ。素敵なプレゼントを選んでくれてありがとう」
そういえばクラウディオに彼女のバッグを買わせたのだった。無事に彼女の手に渡ったらしい。
「気に入ってくれた?」
「ええ、とっても可愛かったわ。大切に使うわね」
「買ったのは俺だぞ?」
隣でぼやいたクラウディオにアメリアがキスをする。
「そうよね、ありがとう。愛してるわ」
改めてアメリアとレジーナにお礼とおやすみを言って家を出る。
外に白いセダンが停まっていて、ジーノが車体に寄りかかって煙草を吸っていた。クラウディオと一緒にそちらに向かう。
「ボス、お待たせました」
「ああ、お疲れさん。リン、しっかり勉強できたか?」
「おかげさまで」
「そりゃ良かった。じゃあ帰るか。クラウディオ、世話になったな」
「いえ、わざわざ迎えに来て頂いてすみません」
「あいつがどうしてもって言うから帰り道に寄っただけだ」
ジーノが指差した運転席には真の姿があった。煙草をくわえ、いらいらとした様子でハンドルを叩いている。
「シンも来てたんですね。あいさつしたほうが……」
「いや、それは不要だ。お前の顔見たらぶん殴りそうだからってあいつから自重したのに、わざわざ波風立てることはないからな」
ジーノが焦ったように言う。
「わかりました。では、お気をつけて。リン、またな」
「色々ありがとう。おやすみ」
凛太朗は車に乗り込んだ。運転席の真と目が合い、車を動かした彼はすぐに再び後ろを振り返った。
「なんだその顔! やっぱ怪我してんじゃねえか!」
「シン! 危ないから前見て運転しろ!」
「うるせぇ! 文句があるならてめーが運転しやがれ!」
「行きは俺がしたんだから帰りくらい代われよ! お前の車だろこれ!」
「ああそうだよ俺の愛車だ! なら降りろ! 俺の車なんだから文句ねえだろ!」
「うるせーよ! リンは疲れてるんだから静かにしろ!」
「そうだリン、誰にやられた? 言え!」
先ほどまでと打って変わった騒がしい空気に凛太朗はため息をついた。
「大したことないから大丈夫だよ。ちょっとぶつけただけだし」
「ちょっとぶつけただけでそんなに腫れるか! それに日々俺が鍛えてるのにお前がそんなドジ踏むわけねーだろ! どこのどいつだ! ぶっ殺してやる!」
「うるさいなぁ……」
思わず本音が漏れた。
「リン! 俺はお前を心配して」
「あーもーわかった! 運転代わるから車停めろ! こんなくだらない理由で事故って死んだらカンドレーヴァの名前に傷がつく!」
「もとはと言えばてめぇのせいだろうが!」
凛太朗はあくびを漏らした。前の二人は相変わらずギャーギャーと騒がしいが、そんな雑音も気にならなくなるほどの睡魔に襲われた。凛太朗は襲い来る眠気に抗わず、瞼を下ろした。
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