ねむれない蛇

佐々

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鈍色の街

#06

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 クラウディオからの電話を切って、ジーノはため息をついた。助手席の真はかなり不機嫌だ。気にしないようにしながら路肩に停止させていた車を発車する。
「いい加減大人になれよ」
 先ほどと同じことを言うと苛立たしげに真が睨んできた。ため息をついて続ける。
「お前だってこれからリンに色々させようと思ってるんだろ? 今のうちから勉強させるのはあいつにとっても」
「うるせえ! お前が勝手にリンを連れ出させたりするからこんなことになってんだろうが!」
「まだ何かあったって決まったわけじゃないだろ? もう少し弟を信用しろよ」
「お前に言われると腹立つんだよマジで!」
「ブラコンも大概にしろよマジで……」
「なんつった? あ?」
 助手席から身を乗り出した真に胸倉をつかまれる。
「危ないからやめろって!」
 これ以上車内で暴れられたら本当に事故る!
「ていうかマジで心配しすぎじゃないか? お前あいつのことすげー鍛えてるじゃん」
「そんなのが保障になるかボケ」
「そんなに過保護でよくリンを使う気になったな。ちょっと前にユーリが消えた時もあいつに探させたんだろ?」
「俺の目の届く範囲で安全にやる分にはいいんだよ。それにあの時はボスを探させたわけじゃない。柳田の姪の友達を探すのに使っただけだ。あの辺りに居る連中は大したことないからな」
「確かにそれに比べればドロップは少し危険かもしれないな」
 表にある市場や住宅街は昼の間は多少ましだが、街の奥は外国人マフィアや薬の売人、人身売買業者の溜まり場だ。あの街の一部の店や場所はカンドレーヴァの管理下にあるが、住人のほとんどがアミル人であることと、その街の特性上すべてを統制するのは不可能だった。そして出入りする人間の中には縄張り争いに破れ、フィオーレやカンドレーヴァを良く思わないファミリーの者たちもいる。そんな場所に土地勘も街についての情報も全くない凛太朗が迷い込んだとしたらどうなるか、想像に難くない。
「他人事みたいに言ってんじゃねえ。何かあってからじゃ遅いんだよ……」
 端正な眉を寄せて真は静かに言った。
 ジーノは車が信号に捕まっている間にスマートフォンを確認した。凛太朗の件を共有するメッセージを送っていた部下から返信が届いていた。
「シン、近くにちょうどいい奴が居るみたいだぞ」
「は? 誰だよ」
「カラスだ」
 真は表情を曇らせた。
「よりによってあいつかよ……」
「背に腹はかえられないだろ?」
 真の顔が晴れることはなかったが彼はそれ以上何も言わなかった。
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