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美しい思い出
#08
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一人その場に残された凛太朗はスマートフォンを取り出した。真からの着信はない。おそらく既に繭の無事やホテルに戻っていることを知っているのだろう。そして彼にそれを教えることが出来るのは一人だけだ。
電話をかけると真はすぐに出た。
「お前なにか粗相してないだろうな」
第一声はそれだ。
「もっと他に言うことはないのかよ」
「お前と一緒に居るお方はフィオーレのボスだ。間違っても失礼な口をきくなよ。あーもー! 挨拶はもっときちんとしようと思ってたのに!」
電話の向こうで取り乱す兄に凛太朗は呆れた。
「なんでそのボスがこんな所に居るんだよ」
「そうだ、お前今どこに居るんだ?」
「繭が泊まってるホテルだけど……」
ボスにきいて知ってたんじゃないのか?
「おいおいおい、間違っても間違いを起こすなよ」
「なに勘違いしてんだよ。ラウンジでコーヒー飲んでただけだよ。知らなかったの?」
「いや、こっちもバタバタしてて、ボスが勝手に居なくなるもんだから大騒ぎだよ」
「はあ?」
「たまにあるんだよあの人。お忍びだかなんだか知らないけど、一人でふらっと出かけるんだ。仕込んであるGPS全部外して。やっと連絡きたと思ったら居場所言わねーし!」
「そんなことしてるから逃げ出したくなるんじゃねえの……」
先ほど真が車の中で受けた連絡はそれだったのか。
「まあいい、とにかく全員無事なんだな?」
「俺はちょっと体痛いけど」
「そんなの、俺のパンチに比べたら余裕だろ」
「まあ……」
「とにかく迎えをやるから! ちゃんとお行儀良くしてろよ!」
「俺は子供か!」
通話は一方的に切られた。苛々して煙草を吸ってコーヒーを飲み干した頃、男が戻ってきた。そういえば、彼も一発殴られていたことを真に伝えるのを忘れていた。まあいいか。
電話をかけると真はすぐに出た。
「お前なにか粗相してないだろうな」
第一声はそれだ。
「もっと他に言うことはないのかよ」
「お前と一緒に居るお方はフィオーレのボスだ。間違っても失礼な口をきくなよ。あーもー! 挨拶はもっときちんとしようと思ってたのに!」
電話の向こうで取り乱す兄に凛太朗は呆れた。
「なんでそのボスがこんな所に居るんだよ」
「そうだ、お前今どこに居るんだ?」
「繭が泊まってるホテルだけど……」
ボスにきいて知ってたんじゃないのか?
「おいおいおい、間違っても間違いを起こすなよ」
「なに勘違いしてんだよ。ラウンジでコーヒー飲んでただけだよ。知らなかったの?」
「いや、こっちもバタバタしてて、ボスが勝手に居なくなるもんだから大騒ぎだよ」
「はあ?」
「たまにあるんだよあの人。お忍びだかなんだか知らないけど、一人でふらっと出かけるんだ。仕込んであるGPS全部外して。やっと連絡きたと思ったら居場所言わねーし!」
「そんなことしてるから逃げ出したくなるんじゃねえの……」
先ほど真が車の中で受けた連絡はそれだったのか。
「まあいい、とにかく全員無事なんだな?」
「俺はちょっと体痛いけど」
「そんなの、俺のパンチに比べたら余裕だろ」
「まあ……」
「とにかく迎えをやるから! ちゃんとお行儀良くしてろよ!」
「俺は子供か!」
通話は一方的に切られた。苛々して煙草を吸ってコーヒーを飲み干した頃、男が戻ってきた。そういえば、彼も一発殴られていたことを真に伝えるのを忘れていた。まあいいか。
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