ねむれない蛇

佐々

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美しい思い出

#02

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 自分の部屋に戻ってシャワーを浴び、ラウンジに下りるとジーノが帰ってきていた。
「久しぶり」
 ソファでスマートフォンをいじっていたジーノは凛太朗に気づくと手招きした。ここのところ姿を見せないと思っていたが、忙しかったのだろうか。
「お帰り。兄さんは?」
「仕事行ったよ。ちょうど入れ違いになったんだ」
 凛太朗はげんなりした。一日中自分の相手をして、休む間も無く仕事か。
「なんかお前やつれてね? ちゃんと飯食ってるのか?」
「食欲ない……」
「おいおい、ちゃんと食べないと体力もたないぞ?」
「何食べてもすぐ吐く羽目になるんだから一緒じゃん」
「相当シンにいじめられてるんだな」
「うるせえ。嬉しそうに言うな」
「筋力と体力作りに食事は必須だ。シンの注文でお前用の特別メニューを出してるんだから、残さず食べなさい」
 真はそこまでしてくれているのか。一体なんのために。突然開始されたトレーニングの理由も、真の仕事についても、凛太朗は未だに何も聞かされていない。
「あんたは兄さんより強いの?」
「どうかな……本気でやりあったことはないが、お前の兄貴は化け物だよ。フィオーレでもあいつに勝てる奴はそう居ない。俺も負ける気はしないけどな」
「ふーん、じゃああんたが教えてよ。兄貴に勝てる方法」
「やめとけ、俺はシンみたいに手加減できない」
 言葉とは裏腹にジーノは優しく凛太朗の頭をなでた。
「そういえば、レイと喧嘩したんだってな」
 嫌な話題をふられ、凛太朗はジーノの手から逃れた。
「喧嘩じゃない」
「じゃあなんだ?」
「言いたくない」
「なら詮索しない。でもあんまりあいつを嫌ってやるなよ。俺と違って真面目でいい奴なんだ」
「知ってる」
 だからこそたちが悪い。興味のない相手なら簡単に切り捨ててしまえるのに。
「レイもあんたも、なんでそこまで俺に構うんだ?」
「そんなの、決まってるだろ」
 ジーノは凛太朗の耳に唇を寄せた。
「お前が可愛いからだよ」
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