ねむれない蛇

佐々

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アストリア

#15

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 かくして真は翌日、まだ夜が明けないうちから出かけて行き、昨日の企みに加担した者達を一人ずつ消していった。とりあえず一通り尋問めいたこともしてみたが、死の恐怖を前に誰もまともな言葉を発せない様子だったしこれといった収穫はなかった。だからこそこの穴だらけの計画に疑問を禁じ得ない。
「なぜフィオーレを敵に回すようなまねをしたんだ?」
 何人目かの男に何度目かの質問を投げかけると、虫の息だった男が真の下で身じろいだ。
「俺達じゃない……俺たちは……」
「またそれか。じゃあ誰だ? お前らにこんな計画をもちかけた奴は」
 男は黙りこむ。真は馬乗りになった男の手を掴み、その指を一本折った。
 人気のない路地に男の絶が響く。ここはP9の中ではない。騒ぎを聞きつけて駆けつける警官も、通報する善良な市民も存在しない。
「しっ、知らないんだ! 俺たちは何も知らない! だから勘弁してくれ!」
「この期に及んで命乞いか? こうなることがわからないほど馬鹿な連中の集まりだったのか?」
「そうだ、俺たちは騙されたんだ! 元々俺たちはあんたらみたいなマフィアじゃない。つるんでた連中もこの国のことをよく知らない奴らばかりだった! それで、この辺で幅きかせてるフィオーレやカンドレーヴァの身内を痛めつければ俺たちの商売もやりやすくなるって、あのルカって男に誘われたんだ!」
「つまりそいつが首謀者か?」
「わからない……あいつはあんたらは全然大したことない、自分にはもっとでかいバックがついてて、もし失敗しても報復されないように守ってもらえる。そう言って色んな奴らを集めてた」
「そのルカって男は何者なんだ? 名前からしてアストリア人だろ。お前らみたいなよそもんのチンピラじゃなく、この国の人間がそんな絵空事を口にするとは思えないけどな」
「だったらきいてくれよ! 俺はあいつに騙されただけなんだ! 悪いのはあいつだ! あいつを殺せばいいだろ!」
 喚きだした男の後頭部に真は銃口を押し付けた。
「残念ながらな、フィオーレに手を出す計画に加担した時点でお前らみんな同罪なんだよ。誰か一人に責任転嫁できると思うな。それに、お前の言うルカって男、がたいのいい茶髪の男だろ。たぶんとっくに死んでる。昨日ジーノの妹が真っ先に始末したらしい」
 男はついに話すのをやめた。もう自分には一縷の望みも残されていないことを悟ったのかもしれない。
「ルカに直接話を聞けないのは痛いが、こればっかりは仕方ないな。ほかを当たるとしよう」
 真は男の上からどいた。始めに足を撃ったためその場から動けずにいる男は辛うじて自由になる一本の腕で頭をかばった。それを横目に男から離れる。
 十分に距離をとった時、男が様子を伺うように真の方を見た。もしかしたら見逃してもらえるのかもしれないという僅かな希望が男の瞳に垣間見えた時、真は即座に引き金を引いた。立て続けに発射した何発かの銃弾が男の頭を撃ち抜く。その際に飛び散った血がかからない場所に、真は立っていた。
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