ねむれない蛇

佐々

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アストリア

#07

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 負傷した二人をひとまず屋敷に連れ帰り、手配しておいた医師に任せた。真は弟に付き添いたそうだったがジーノが無理やり運転席に座らせた。
「お前はまずダル・カントの爺さんの家に言って詫び入れてこい。お得意先からの大事な仕事だってのにばっくれやがって。きちんと落とし前つけたらユーリんとこ寄って報告もしろよ。それまで弟とは面会謝絶だ」
「そんな、どれだけ会いたかったと思って」
「うるせえ! お前はもうフィオーレの一員なんだ。いい加減腹括れよ」
 珍しく驚いた表情の真の胸倉を掴み、顔を近づける。
「お前がそんなんじゃ、いつか弟が死ぬぞ」
 暗い想像に表情を曇らせた真の頬をなでて唇を重ねると、険しい顔のまま真が言った。
「リンに手を出したら殺すぞ」
 物騒な言葉を残して真は車に乗り込んだ。


 ジーノがラウンジを通りかかると一通り治療を受けた凛太朗がベンチに座り、ぼんやりしているのを見つけた。打撲や擦り傷など外傷は多かったが、一番ひどいのはやはり腕に受けた弾傷だった。腕の良い医者に適切な処置を施させた後とはいえ巻かれた包帯が痛々しい。
「お前の荷物、部屋に運んでおいたからな」
 近づいて声をかけると凛太朗が振り返った。
「あとこれ、お前の携帯と、これは俺からのプレゼント」
 回収した携帯電話と新しい煙草の箱をテーブルに並べる。
「ありがとう」
 素直に礼を言う真の弟が可愛く思えて、ジーノは隣に腰を下ろして凛太朗の頭をなでた。
「大変だったな。知らない国でこんな目にあって、怖かっただろ」
「怖いっていうか」
「ん?」
 凛太朗はレイに張られた頬を押さえた。
「びっくりした」
「はは、だよな。兄貴には何もきいてなかったのか?」
 ジーノは煙草に火をつけた。
「兄さんは何も教えてくれない。大事なことはいつも内緒だ」
「へえ、でも仲はいいんだろ?」
「どうかな。依存してるだけだと思う」
 大人びた表情で笑う凛太朗の顔はあまり真に似ていない。二人共整った顔立ちをしているが、中身はともかくとして真のほうが全体的に柔らかい雰囲気だし、色素も薄い。対して凛太朗は瞳も髪の色も暗く、目元は真以上に鋭かった。真の携帯電話に入っていた写真の少年よりも幾分成長している凛太朗は十分に色っぽく見えて、ジーノは先ほど真にしたのと同じように口付けた。
「なんで?」
 キスのとき目を閉じないところは似ているなと思った。
「シンには内緒だよ」
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