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俺の好きな人は誰にでも優しい。今日も店の飲み会で潰れた女の子を介抱していた。
「さっき妬けたなー。杏奈ちゃん、今野君に優しくしてもらってずるい」
酔いつぶれたふりをして家に押しかけた。ワンルームの部屋は物が少ないのにあんまり片付いていない。潔癖そうなのに意外だなーと思って、でも埃一つ落ちてなくて掃除は行き届いているので単純に忙しくて片付ける暇がなかっただけなのかもしれない。テーブルの上にはレポート用紙や難しそうな本がたくさん置いてある。勉強頑張ってるんだろうな。遊んでそうに見えるのに意外にまじめ。そんなとこも好きだ。
「あの場合仕方ないじゃないですか。俺以外動こうとする奴いなかったし。ていうかうちの女の子たちって仲良くないんですか? 杏奈ちゃんと鈴木さん大学一緒でしょ?」
「女は複雑だからねー。俺は男だしゲイだから女心なんてこれっぽっちもわかんないけど!」
「ドヤ顔で言うことじゃないっすよそれ」
「そんなことより、俺が嫉妬したことに対するコメントは?」
「は? 特にありませんけど」
「ないってことないだろー? 俺は店長権限でせっかく君を隣の席に座らせたのに、君はほとんど自分の席にいなかった」
「いやそんなん仕方ないじゃないっすか……忙しかったんすよ」
今野君は自分の席でゆっくり飲むよりあちこちに顔を出して気を遣っている様子だった。確かに彼はバイトを始めてまだ長くないが、そんなに率先して動かないといけない立場でもない。彼よりもっと最近入った新人だっているのに、そいつは人のグラスに気も配らずオーダーもまとめていなかった。だからこそ彼が忙しく立ち回るはめになったのかもしれないが。蜷川め。クビにしてやろうかあのチャラ男。
「俺はせっかく君とゆっくり酒を飲みながらじっくりお話をして、しっとりしたいい雰囲気に持ち込もうと思ってたのに」
「あんた店の飲み会で何考えてんすか」
「飲み足りない! 飲み足りない! 全然酒が、飲み足りない!」
「いきなりコールみたいなこと叫ぶのやめてもらえます? ていうかあんたさっきもそうやって散々駄々こねて俺んちまでついて来ましたよね?」
「来ましたね。飲めなかった分を取り戻すぞー!」
「いやあんた十分飲んでたから! ビール三本空けて日本酒六合頼んでただろ!」
「実際に飲めたのは四合だよ。残りは飲まれちゃった」
「だから十分だろそれで!」
今野君はベッドにもたれて額を押さえた。
「あーでかい声出したら回ってきた……超眠い。俺もう寝てもいいっすか?」
「襲うよ」
「は?」
「君が寝たら襲う。覚悟ができてるならどうぞ寝て下さい」
「んなこと言われて寝れるわけ……」
今野君はしかし、睡魔に勝てなかったようだ。
後日、今野君の家で飲むことになった。
「今日行っていい?」
「いいですよー」
貰い物のワイン片手にきいたら二つ返事でOKだ。これはひょっとして彼もまんざらではないのでは? なんて望みを抱かないようにするのに必死だった。
「あー俺が女だったらな……」
「なんすか急に」
ワインはすぐに空いてしまい、今野君の部屋に常備されていたリキュールを割って飲んでいる。男の一人暮らしでこんなもんが置いてあるってことはやっぱり女がいるのかとか勘繰らずにはいられない。
「どうやったら君に愛される資格を得られるのかと考えていた。せめて俺が女だったら、君はこの間杏奈ちゃんにしてあげていたように酔い潰れた俺を優しく介抱してくれるだろ? それでふらつく足元を理由に君に抱き着いて君の家まで押しかけて勢いにまかせて乗っかってしまえばいいわけだ!」
「いいわけだ! じゃねーよいいわけねーだろ! つーかあんた既にこの間酔った勢いで騒ぎまくって俺んち押しかけてきたじゃないっすか!」
「あんなのはやったうちに入らないね! 俺の作戦はあんなところでは終わらない!」
「なんの作戦だよなんの!」
「はあ……無条件で君に愛される女という生き物が妬ましい」
「ちょっと、女なら誰でもいいみたいな言い方はやめて下さい」
「じゃあ男は?」
「なおさらねーよ」
「だよね……あーうらやましいうらやましい! 女になりたい女になりたい! でも男の体のまま君とセックスがしたい!」
「あんたどんだけ欲望に忠実なんですか………」
「だってほんとのことだもん!」
「もんって、そんなこと言っても女にはなれませんよ?」
「うん。別にいい。俺は女になりたいわけじゃなく、君に愛されたいだけだから。ていうか俺ゲイだし。俺が女になったら意味ないし」
「性別ってそんなに重要なの?」
「女しか好きじゃない奴が何言ってんだ!」
「さっき妬けたなー。杏奈ちゃん、今野君に優しくしてもらってずるい」
酔いつぶれたふりをして家に押しかけた。ワンルームの部屋は物が少ないのにあんまり片付いていない。潔癖そうなのに意外だなーと思って、でも埃一つ落ちてなくて掃除は行き届いているので単純に忙しくて片付ける暇がなかっただけなのかもしれない。テーブルの上にはレポート用紙や難しそうな本がたくさん置いてある。勉強頑張ってるんだろうな。遊んでそうに見えるのに意外にまじめ。そんなとこも好きだ。
「あの場合仕方ないじゃないですか。俺以外動こうとする奴いなかったし。ていうかうちの女の子たちって仲良くないんですか? 杏奈ちゃんと鈴木さん大学一緒でしょ?」
「女は複雑だからねー。俺は男だしゲイだから女心なんてこれっぽっちもわかんないけど!」
「ドヤ顔で言うことじゃないっすよそれ」
「そんなことより、俺が嫉妬したことに対するコメントは?」
「は? 特にありませんけど」
「ないってことないだろー? 俺は店長権限でせっかく君を隣の席に座らせたのに、君はほとんど自分の席にいなかった」
「いやそんなん仕方ないじゃないっすか……忙しかったんすよ」
今野君は自分の席でゆっくり飲むよりあちこちに顔を出して気を遣っている様子だった。確かに彼はバイトを始めてまだ長くないが、そんなに率先して動かないといけない立場でもない。彼よりもっと最近入った新人だっているのに、そいつは人のグラスに気も配らずオーダーもまとめていなかった。だからこそ彼が忙しく立ち回るはめになったのかもしれないが。蜷川め。クビにしてやろうかあのチャラ男。
「俺はせっかく君とゆっくり酒を飲みながらじっくりお話をして、しっとりしたいい雰囲気に持ち込もうと思ってたのに」
「あんた店の飲み会で何考えてんすか」
「飲み足りない! 飲み足りない! 全然酒が、飲み足りない!」
「いきなりコールみたいなこと叫ぶのやめてもらえます? ていうかあんたさっきもそうやって散々駄々こねて俺んちまでついて来ましたよね?」
「来ましたね。飲めなかった分を取り戻すぞー!」
「いやあんた十分飲んでたから! ビール三本空けて日本酒六合頼んでただろ!」
「実際に飲めたのは四合だよ。残りは飲まれちゃった」
「だから十分だろそれで!」
今野君はベッドにもたれて額を押さえた。
「あーでかい声出したら回ってきた……超眠い。俺もう寝てもいいっすか?」
「襲うよ」
「は?」
「君が寝たら襲う。覚悟ができてるならどうぞ寝て下さい」
「んなこと言われて寝れるわけ……」
今野君はしかし、睡魔に勝てなかったようだ。
後日、今野君の家で飲むことになった。
「今日行っていい?」
「いいですよー」
貰い物のワイン片手にきいたら二つ返事でOKだ。これはひょっとして彼もまんざらではないのでは? なんて望みを抱かないようにするのに必死だった。
「あー俺が女だったらな……」
「なんすか急に」
ワインはすぐに空いてしまい、今野君の部屋に常備されていたリキュールを割って飲んでいる。男の一人暮らしでこんなもんが置いてあるってことはやっぱり女がいるのかとか勘繰らずにはいられない。
「どうやったら君に愛される資格を得られるのかと考えていた。せめて俺が女だったら、君はこの間杏奈ちゃんにしてあげていたように酔い潰れた俺を優しく介抱してくれるだろ? それでふらつく足元を理由に君に抱き着いて君の家まで押しかけて勢いにまかせて乗っかってしまえばいいわけだ!」
「いいわけだ! じゃねーよいいわけねーだろ! つーかあんた既にこの間酔った勢いで騒ぎまくって俺んち押しかけてきたじゃないっすか!」
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「ちょっと、女なら誰でもいいみたいな言い方はやめて下さい」
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「なおさらねーよ」
「だよね……あーうらやましいうらやましい! 女になりたい女になりたい! でも男の体のまま君とセックスがしたい!」
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「もんって、そんなこと言っても女にはなれませんよ?」
「うん。別にいい。俺は女になりたいわけじゃなく、君に愛されたいだけだから。ていうか俺ゲイだし。俺が女になったら意味ないし」
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