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第一章 -出会い―
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僕はいつも不安に駆られている。なんとも言えないような感覚、何に感じているのか自分でも分らない、そんなもやもやとしたものだ。いつからかは覚えていない、いつしかこの感情を気にしないのが日常となっていた。
「はぁ、予想よりも進まないなぁ、実際に旅をするのはこんなに大変だったかぁ」
とため息をつきつつ、重い足取りを動かしていく。
クコの村を出発して、3日、早くも後悔を感じていた。
「この辺の地形もマッピングしていきたいから、徒歩を選んだけど、旅初心者には荷が重かったかなぁ、さっきから独り言が止まらねぇよ。」
とブツブツ文句を言いながら手元の市販の地図に、自分なりに詳細な情報を付け加えいく。
「休憩、休憩。」
とそこらへんにあった岩に腰掛け、休憩を始めた。
「空がきれいだなぁ」
と現実逃避という名の思いにふけっていた時だった。
道の先の岩場の方から、かすかにドタドタと複数の足音がきこえる気がする。
(なんだ、なんだ)とその方向に集中してみる。黄色のオーラが2つが、青色のオーラが1つを追いかけているようだった。
(これは…)と急いで駆け出す。
近づくと、追い詰められて息も切れている少女が一人、イノシシのような魔獣達においかけられているようだった。俺はそこであることに気付いた。
「こっちだ!」
と少女に声をかけながら、荷物をあさりながら、少女に駆け寄る。
「…!?」
少女はこちらに気付いて、俺の方向に駆け寄りながら、疲れた様子で小さく一言
「殺さないで上げて」
と言った。
俺はにこりと微笑みながら、少女と魔獣の間に来たタイミングで、持っていたものを地面に叩きつけながら、少女の手を引っ張って横に移動した。
煙幕玉だった。魔獣達は鳴き声を上げてひるんでいるようだった。
とりあえず魔獣の進路の直線状から避けたので、身を隠すように岩場に隠れた。
煙幕が晴れたころ、魔獣達はまだ興奮していたが、しばらくすると落ち着きを取り戻し、この場を去っていった。
そうして、少女と俺の2人がその場に取り残された。
「ありがとう、突然巻き込んだ上に、殺さないでくれて…普段はおとなしい子たちなの。
今の子たちはバックボアの夫婦で、見えにくかったかもしれないけど後ろにいた子の背中に赤ちゃんがいて、私が刺激してしまって…」
「いや、大丈夫だよ、殺気というより、ただ興奮しているようだったからさ。」
見えていたオーラは黄色、状況的には警戒の意味合いが強そうだった。それに加えて近づいてから新しく見えた小さなオーラは緑だった。安心感といった意味合いのある色で子供連れなのだろうと推察できたから、武器ではなく煙幕玉を用意したわけだ。
「それにしてもあの魔獣はバックボアというのか、あの勢いで突進されたらひとたまりもないなぁ」
「……?初めて見るの?それにしては対応が手馴れていたような…」
「一人で旅をする上で、対応力は必須だからね。旅は初心者だけど、いろいろ準備してきたんだ」
嘘は言っていない、オーラは必ず見えるほど万能なわけではない。強い気持ちがオーラとして見えるだけだ。さっきのような興奮した魔獣や殺気を持つ魔獣なんかは見やすいが、敵意等がない魔獣は何も感じない。うっかりなわばりに迷い込んでからじゃ遅いのだ。そんな時は、煙玉などのアイテムとマッピングで得た地理情報で逃げるというのを準備時代に繰り返したものだ。
すると少女が
「改めましてありがとうございます。私はリュカって言います。旅人さんだったんですね。
私は探し物をしていてこの辺に来ていたんです。良ければ旅人さんは何で旅をしているのかおしえてもらえませんか?そんな多くはできないけど、何かお礼をさせてください。」
旅での初めてのイベントで内心舞い上がっていたのかもしれない。少女のことをしっかり見ていなかった。少女はフードを被っているが、顔はしっかりと確認できた。透き通ったエメラルドグリーンの瞳が特徴的な整った顔に小柄だが先ほどの脚力、なかなかに鍛えているようでただの農民には見えなかった。
「おれはライン、ここからそう離れていないクコの村から旅を始めたばかりの元農民だ。旅をすると決めてから、独学で準備してきたが早速役に立ったようでよかったよ。俺も探し物があるんだ。でもお礼なんていいよ。とりあえずの目的地は王都でそこに向かおうとしているところかな。」
と話し終えたところで、少女がおずおずとしゃべりだした。
「クコの村から来られたとおっしゃっていましたが、’そらの実’というものをご存じないですか?こちらの村から見つかったと噂を聞いてきたのですが…
お礼をするといったばかりで申し訳ありません!何か知っていたら教えてください!」
彼女は深々とお辞儀をしていた。赤いオーラをまとって。
一瞬たじろいだ。赤は攻撃的なオーラだと何度も見てきて頭が認識していたからだ。(この子は俺をだまそうとしているのだろうか?)でも先ほどまでの言葉に嘘は感じなかった。
それにこの赤はいつもと違うと分かった。いつもの嫌な感じがしなかった。これはいわば熱意やそこらの感情を表しているように感じた。
自分の直感を信じることにした。
「’そらの実’なら知っているどころか、持ってるよ。見つけたのは俺だからね。育ててみようとしてみたけど、何もわからないから本で調べたり村にくる商人に聞いていたんだけど、収穫はなくてね、旅のついでに持ってきたんだ。」
「お願いします!譲ってください!それをさがしていたんです!」
そこまでお願いされて断る気にはなれなかった。
「いいよ」
「ありがとうございます!」
快く承諾した俺の目に、今度は黄色のオーラが見えた。この色は知っている。警戒などではない、感謝や幸福を表す色だ。村でも見たことがある。同じ色でもネガティブな意味とポジティブな意味があることを知っていた。
その時気のせいだろうか、彼女の瞳の色も美しいエメラルドグリーンから鮮やかなイエローに変わっているように見えた気がした。
それにしても驚いた。ここまでオーラが見える人に出会ったのは初めてだった。クコの村は老人ばかりで、たまにくる商人も若者はいたが仕事柄、感情を出すようなことが少なかったのだろうか。俺はあまりにも狭い世界で生きていただけで意外にも多いのかもしれない。などといろいろ考えてみたが、とりあえずこの子は純粋ないい子なんだなと結論付けた。
「あの、助けていただいただけでなく、探し物まで…
なんとお礼を言えばいいのか…」
「いいよ、いいよ、君の運がよかっただけじゃないか。日頃の行いがいいのかな」
と笑って答えたところで
「王都ですよね、それに旅は始めたばかりだと。先ほどは提案できませんが、目的も達成できたのでぜひお供させてください。先ほどは失敗しましたけど、私も一人で旅できるくらいのスキルを持っているんですよ。役に立って見せます。」
思ってもない提案に思わず固まってしまった。
旅立ったのは良いものの、正直心配だった。独り言が多かったのもそれを紛らわせようと
していただけだった。
それにこの子が今まとっている緑のオーラは、どこかこちらを安心させてくれてた。旅の
不安ではない、昔から感じていたもやもやを忘れさせてくれるような温かみがあった。
俺は少女のエメラルドグリーンの瞳をしっかりと見据えて
「ぜひ!こちらからもお願いする!」
と強く言い放ち、握手を求めた。
この出会いは、俺にとっていいことかもしれない。そんな予感がしていた。
それは予感ではなかった。リュカの存在は俺の物語の必然であったが今はまだ知らない。
ここから俺の運命の歯車は回り始めた。
「はぁ、予想よりも進まないなぁ、実際に旅をするのはこんなに大変だったかぁ」
とため息をつきつつ、重い足取りを動かしていく。
クコの村を出発して、3日、早くも後悔を感じていた。
「この辺の地形もマッピングしていきたいから、徒歩を選んだけど、旅初心者には荷が重かったかなぁ、さっきから独り言が止まらねぇよ。」
とブツブツ文句を言いながら手元の市販の地図に、自分なりに詳細な情報を付け加えいく。
「休憩、休憩。」
とそこらへんにあった岩に腰掛け、休憩を始めた。
「空がきれいだなぁ」
と現実逃避という名の思いにふけっていた時だった。
道の先の岩場の方から、かすかにドタドタと複数の足音がきこえる気がする。
(なんだ、なんだ)とその方向に集中してみる。黄色のオーラが2つが、青色のオーラが1つを追いかけているようだった。
(これは…)と急いで駆け出す。
近づくと、追い詰められて息も切れている少女が一人、イノシシのような魔獣達においかけられているようだった。俺はそこであることに気付いた。
「こっちだ!」
と少女に声をかけながら、荷物をあさりながら、少女に駆け寄る。
「…!?」
少女はこちらに気付いて、俺の方向に駆け寄りながら、疲れた様子で小さく一言
「殺さないで上げて」
と言った。
俺はにこりと微笑みながら、少女と魔獣の間に来たタイミングで、持っていたものを地面に叩きつけながら、少女の手を引っ張って横に移動した。
煙幕玉だった。魔獣達は鳴き声を上げてひるんでいるようだった。
とりあえず魔獣の進路の直線状から避けたので、身を隠すように岩場に隠れた。
煙幕が晴れたころ、魔獣達はまだ興奮していたが、しばらくすると落ち着きを取り戻し、この場を去っていった。
そうして、少女と俺の2人がその場に取り残された。
「ありがとう、突然巻き込んだ上に、殺さないでくれて…普段はおとなしい子たちなの。
今の子たちはバックボアの夫婦で、見えにくかったかもしれないけど後ろにいた子の背中に赤ちゃんがいて、私が刺激してしまって…」
「いや、大丈夫だよ、殺気というより、ただ興奮しているようだったからさ。」
見えていたオーラは黄色、状況的には警戒の意味合いが強そうだった。それに加えて近づいてから新しく見えた小さなオーラは緑だった。安心感といった意味合いのある色で子供連れなのだろうと推察できたから、武器ではなく煙幕玉を用意したわけだ。
「それにしてもあの魔獣はバックボアというのか、あの勢いで突進されたらひとたまりもないなぁ」
「……?初めて見るの?それにしては対応が手馴れていたような…」
「一人で旅をする上で、対応力は必須だからね。旅は初心者だけど、いろいろ準備してきたんだ」
嘘は言っていない、オーラは必ず見えるほど万能なわけではない。強い気持ちがオーラとして見えるだけだ。さっきのような興奮した魔獣や殺気を持つ魔獣なんかは見やすいが、敵意等がない魔獣は何も感じない。うっかりなわばりに迷い込んでからじゃ遅いのだ。そんな時は、煙玉などのアイテムとマッピングで得た地理情報で逃げるというのを準備時代に繰り返したものだ。
すると少女が
「改めましてありがとうございます。私はリュカって言います。旅人さんだったんですね。
私は探し物をしていてこの辺に来ていたんです。良ければ旅人さんは何で旅をしているのかおしえてもらえませんか?そんな多くはできないけど、何かお礼をさせてください。」
旅での初めてのイベントで内心舞い上がっていたのかもしれない。少女のことをしっかり見ていなかった。少女はフードを被っているが、顔はしっかりと確認できた。透き通ったエメラルドグリーンの瞳が特徴的な整った顔に小柄だが先ほどの脚力、なかなかに鍛えているようでただの農民には見えなかった。
「おれはライン、ここからそう離れていないクコの村から旅を始めたばかりの元農民だ。旅をすると決めてから、独学で準備してきたが早速役に立ったようでよかったよ。俺も探し物があるんだ。でもお礼なんていいよ。とりあえずの目的地は王都でそこに向かおうとしているところかな。」
と話し終えたところで、少女がおずおずとしゃべりだした。
「クコの村から来られたとおっしゃっていましたが、’そらの実’というものをご存じないですか?こちらの村から見つかったと噂を聞いてきたのですが…
お礼をするといったばかりで申し訳ありません!何か知っていたら教えてください!」
彼女は深々とお辞儀をしていた。赤いオーラをまとって。
一瞬たじろいだ。赤は攻撃的なオーラだと何度も見てきて頭が認識していたからだ。(この子は俺をだまそうとしているのだろうか?)でも先ほどまでの言葉に嘘は感じなかった。
それにこの赤はいつもと違うと分かった。いつもの嫌な感じがしなかった。これはいわば熱意やそこらの感情を表しているように感じた。
自分の直感を信じることにした。
「’そらの実’なら知っているどころか、持ってるよ。見つけたのは俺だからね。育ててみようとしてみたけど、何もわからないから本で調べたり村にくる商人に聞いていたんだけど、収穫はなくてね、旅のついでに持ってきたんだ。」
「お願いします!譲ってください!それをさがしていたんです!」
そこまでお願いされて断る気にはなれなかった。
「いいよ」
「ありがとうございます!」
快く承諾した俺の目に、今度は黄色のオーラが見えた。この色は知っている。警戒などではない、感謝や幸福を表す色だ。村でも見たことがある。同じ色でもネガティブな意味とポジティブな意味があることを知っていた。
その時気のせいだろうか、彼女の瞳の色も美しいエメラルドグリーンから鮮やかなイエローに変わっているように見えた気がした。
それにしても驚いた。ここまでオーラが見える人に出会ったのは初めてだった。クコの村は老人ばかりで、たまにくる商人も若者はいたが仕事柄、感情を出すようなことが少なかったのだろうか。俺はあまりにも狭い世界で生きていただけで意外にも多いのかもしれない。などといろいろ考えてみたが、とりあえずこの子は純粋ないい子なんだなと結論付けた。
「あの、助けていただいただけでなく、探し物まで…
なんとお礼を言えばいいのか…」
「いいよ、いいよ、君の運がよかっただけじゃないか。日頃の行いがいいのかな」
と笑って答えたところで
「王都ですよね、それに旅は始めたばかりだと。先ほどは提案できませんが、目的も達成できたのでぜひお供させてください。先ほどは失敗しましたけど、私も一人で旅できるくらいのスキルを持っているんですよ。役に立って見せます。」
思ってもない提案に思わず固まってしまった。
旅立ったのは良いものの、正直心配だった。独り言が多かったのもそれを紛らわせようと
していただけだった。
それにこの子が今まとっている緑のオーラは、どこかこちらを安心させてくれてた。旅の
不安ではない、昔から感じていたもやもやを忘れさせてくれるような温かみがあった。
俺は少女のエメラルドグリーンの瞳をしっかりと見据えて
「ぜひ!こちらからもお願いする!」
と強く言い放ち、握手を求めた。
この出会いは、俺にとっていいことかもしれない。そんな予感がしていた。
それは予感ではなかった。リュカの存在は俺の物語の必然であったが今はまだ知らない。
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