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【制限時間三〇分】廃棄物は少数派

お題：捨てられた少数派
必須要素：駅


　此処ではない何処か、多数決が人の全てを決定づける国。人々は選択という選択を少なくとも二人の他人に委ねる必要がある。
「エニス、あんた死になさい」
　そして今日も多数決によって無慈悲にも廃棄場——通称プラント送りにされる少年がいた。
「……いいさ、僕はしなねぇええええええん……！！」
　突如としてエニスの足下に現れた大穴に彼は導かれる。死ね、いらない、失せろ、etc……プラント送りになってしまう命令形式選択は、多数決で選ばれた瞬間にある場所へ送られる。
「……わぁっ……！？」
　長い長い穴道を転がされてエニスがようやくたどり着いたのは、プラントではなくプラント行きの電車を待つ駅のプラットホーム。
「くそが……っ！！」
　拳をコンクリートに叩きつける音は空虚なものだった。
　一つため息を吐いて辺りを見渡す。存在は知っていたが、此処へ来るのは当然初めてである。
「まさにゴミ溜め……腐ってやがる」
　エニスは笑った。それは彼が生まれて最高の笑顔。
「「きゃ……っ！？」……はっ……」
　突然、高音が走り抜けたと思えば、そこそこな重量——そう、ちょうど人一人分が上から降り注ぎ大地に顔を押し付けられる始末。
「えーと……大丈夫です……よね。うん」
「大丈夫じゃ……いや、すまん」
　大丈夫ではない。しかし、彼女の気配りが憎き多数決を避けたのだ。
「……えー、あんたも少数派ってわけだ」
　頰を赤らめ視線を逸らす。
　落ちてきたのはエニスと同い年——十七歳ぐらいに見える少女。黒のショートカットが美しく、エニスの思春期を盛らせる。つまりどストライクだった。
「親友に……いらないと……あれ、親友って思ってたのは私だけか……」
「泣くなよ……」
「でも……」
　少女は蹲ってただ泣いた。彼女が咽ぶ音はどんな音より大きくエニスに響く。
「泣くな……！！」
　少女の両肩を掴み上げて、強く吐いた。
「……あなたも……あなたも泣いているじゃないですか……」
　エニスの笑顔は皮肉にも涙が映える。