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エンゲージゲーム 事故物件王子の新しい婚約者は、魔王のようです。

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「だが、殿下は一連の醜聞で、自分は次の王にふさわしくい器ではないと、自ら喧伝してしまった。人を見抜く目もなく、物事の真偽も見極められない。聞きたいことだけを聞き、耳に逆らう言葉は拒む。見識も狭く、判断力もなく、優先順位もつけられない。自分が誤ったと知った時点で、頭を切り替え、次善の手を打とうという発想すらない。我が身ひとつのことならともかく、為政者の資質と言う点においては、間違いなく最悪だ。事実、王太子から降格され、復位するかも不透明である――」
 ボロクソだが、腹が立つのは反論する言葉が見つからないことだ。
「エインスワートは絶えかけているのだ。前代のレストア家が絶えたようにな」
 令嬢を王子の妃に、と打診された貴族が断ったのは、この状況で王家と姻戚関係を結ぶことが最善か否か、迷ったからだろう。下手を打てば滅びる王家と共倒れになりかねない。
 テオフィルスの王室は代替りを繰り返してきた。変な言い方だが、王室が断絶すること、それ自体には国民もある程度慣れており、あまり抵抗がない。それでも代替りには政争が付き物だ。
「私が引きこもっているあいだに、外では次の王座をめぐり、暗闘がはじまっていたというわけか……」
 はッ、とアルファレドは嘲りの声をあげた。
「だからか。貴族たちが、こぞっておまえに媚びを売っていたのは。テオフィルスの王位を継ぐためには、ランシエナ大公の承認がいるからな」
 八つ当たりとわかりながら、止められない。頭も胸の内もぐちゃぐちゃだ。壁にもたれかかり、両手で顔を覆う。
「だからって、なんでこんな目に。王子になんか望んで生まれたわけじゃないのに、さんざん馬鹿にされて、化物までけしかけられて。こんなの、死んだほうがマシだ」
「――そうか」
 低く呟いたレティウスが、いきなり杖をふりかぶった。
 とっさに避けた頭すれすれに、杖が石壁を打つ。破裂するようなこもった音を立てて、壁が深々とえぐれた。細かな欠片がばらばらと崩れ落ち、切れた金髪が数本、宙を舞う。
 その杖、材質、なに? 鉄? 鋼? 一撃で石壁を砕いて曲がるどころか傷ひとつつかないって、どういう、って。
「なな、なにするんだ、殺す気かっ?」
「死んだほうがマシだというから、要望に添おうとしたまでだ。問題でも?」
 即答されて、青くなる。腕力か杖か、どちらが異常なのか知らないが、威力のほどを見ればアルファレドの頭をカチ割るなど卵を叩き潰すも同然、朝飯前だろう。
「安心しろ。次は外さん。そこへなおれ」
 再度、杖をふりかぶる。
「嘘、嘘、嘘だってば。撤回する、死にたくない――」
 頭をかかえて喚くと、レティウスは杖をおろした。
「次からは、もう少し考えて口に出せ」
 アルファレドは壁に背をつけたまま、斜めにずり落ちた。
 ごめん、ファナ。やっと理解した。結婚相手として君ほどまともな人はいなかった。ひどいこと言って悪かった。今物凄く反省してる。もう遅いけど。
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