冬馬君の夏

だかずお

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『花火大会』

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蝉の鳴き声が随分静かになった。


多網家の夜


布団の上


皆で寝そべっている


いつまでも続くと思っていた夏休みはいよいよ終わりに近づいて来ていた。


明日の花火大会


清香達と一緒、そりゃあもちろん楽しみだ。

でも、終わりに近づいている夏が少し寂しくもあった。

ずっと一緒だった、多網と大喜と過ごした日々も終わってしまう。

冬馬君は、ふぅーっと小さなため息をついた。

そんななか、きみ子が「まさか明日二人告白しちゃうとかはないよね?」

冬馬君と大喜は顔を真っ赤にして、「ないない、そんなの絶対ない」

言えないよ、そんなこと

もし、もし清香に振られたらもう二度とこうしてみんなで会えなくなっちゃう。

清香に会えなくなるなんて考えたくない

良いんだ、今はそんなこと

こうして、みんなで過ごせるのなら、自分の気持ちは胸の奥にしまっておくよ。

少し胸は切なかったが冬馬君の心情はこうだった。

せっかくみんなで過ごしてる夏の夜なのに冬馬君は、みんなと話しながら色んな事を考えている、もうすぐ始まる学校の事、終わってしまう夏、ちょっとした悩み、自分の事、胸にちょっとひっかかる嫌な気持ち。

楽しかった夏休みが終わりに近づき学校が始まることなどを考えると、色んな悩み事や考えがふっと心に浮かんできた。

ずっと多網や大喜と一緒に生活し過ごしてたのが、離ればなれで一人になる、そんな寂しさなども出てくる

ああ、もうすぐみんなと一緒に過ごせる日々が終わってしまうのかぁ。

少しセンチメンタルな冬馬君



だって


だってさ


みんなで過ごしたこの夏休みが


本当に楽しかったんだもん


ブリッ 突然けたたましい多網のオナラが響き渡る

多網は屁をこき、ケラケラ笑っていた

この男に悩みはないのだろうか?

休みが終わろうが、学校が始まろうがなんともないのかもしれない。

状況に左右されない男、多網

冬馬君はそんな多網を少し羨ましく思った。

まあ、多網が本当はどう感じてるかは分からないが。

夏の夜

みんなは色々語りあっている

冬馬君も考えるのをやめ、みんなとの会話を楽しむことにした。

「虎鮫代ちゃんは今年の夏休みはどうだった?」ときみ子

「ペロリん、ペロチョだった」

うわっ、このタイミングで出たか意味不明な虎鮫代語

「それは良かったね」

きみ子よ何故理解できる?

その時だった

急に虎鮫代ちゃんの目は見開かれ、舌が出たり入ったりし始める

なんぢゃー?

ビックリするみんな

「どうしたの?」

「うっ、うんこー」

えっ、うんこ? なんぢゃそりゃ

皆は虎鮫代ちゃんの指さす方を見る

叫ぶきみ子

「ぎゃー動くうんちー」

だからなんぢゃそりゃ

壁を見て冬馬君もビックリ叫ぶ

「うわあっ」

なんとゴキブリではないか

だが一番驚いたのはうんこ呼ばわりされたゴキブリであるに違いない

子供たちはいっせいに部屋から走り出る

「えーうそっ、誰も退治出来ないの?」ときみ子

冬馬君も大喜も苦手であった。

多網は何故かサングラスをかける
「アイルビーバック」

多分嫌いなのだろう。

すぐさまサーに助けを求める子供たち

「サー大変だよ部屋にとんでもないのが出たよ」と大喜

その発言を聞き、何故か幽霊が出たと勘違いしたサーは失禁しそうになる

「えっ、男?女?」

「分からないよそんなの、良いから来て」

サーの足はガクガク震えている

お化け怖いよ 心の中叫ぶ

「マッマー」

皆が寝てる部屋につき

冬馬君が「サーあそこ」と指差す

指差された先のゴキブリの横の鏡に自分の姿が映っている、サーは自身の姿をお化けととらえた。

「ぬおおっ、眼鏡をかけたお化け~」サーは失神してしまう。

「えっ、ゴキブリの超能力?」テンパるきみ子

「やばいよ、やばいよ あいつ」焦る大喜

奴は動いた

カサカサ

ギャーあああっ

叫ぶ子供たち

動くだけで、凄まじい破壊力である

「どうする、どうする?」虎鮫代ちゃんが後ずさる。

多網が「これっ」

おおっ、これはゴキブリ退治用のスプレー

カサカサ

「ぬおっ」ビビる多網は噴出させた。



プシュー



ちなみに、今回のこれは屁ではない




プシュー


もう一度言うが、これは屁ではない



「うぎゃぎゃぎゃぎゃー」



やったぁ、やったか?

煙の中、お腹を上に向け倒れて手足をばたつかせてるのは、ゴキブリではなく、なんと虎鮫代ちゃんであった。

「多網、狙い違う」


焦る多網

その時、ゴキは焦ったのかジャンプ

「うぎゃああああああああ」叫ぶきみ子

「あっ」奴はきみ子のおニューの鞄に近づいていた

プチッ

ブチッ

「おんどりゃー、あたしのおニューの鞄に何さらしとんじゃい」

バチコン

雑誌を丸め一撃でしとめた

「すっ、すごいさすがきみ子」拍手する冬馬君達







「あっ、そのノートは?」


まさかの以前読んだ、虎鮫代ちゃんの秘密のノートであった。

そう、抜けた歯とか貼りつけてあったあの不気味な。

虎鮫代ちゃんは気絶中

きみ子はサッと、虎鮫代ちゃんのノートを置いた

「しーっ」

「あはははは」と苦笑い冬馬君達

その後、無事にサーも虎鮫代ちゃん目を覚まし

「あれっゴキは?」

「あれっ眼鏡の幽霊は?」

「もう大丈夫、きみ子が退治した」

「ははーっ」二人はきみ子に頭を下げ感謝した。

平穏な夜は戻り

皆は眠りにつく、いよいよ明日は花火大会

朝から二人の男は鏡の前、燃えている

鏡の前、ジェルをつけてはキメ顔をつくるのはそう、冬馬君と大喜

何度も何度も自分をチェック チェック チェック

今日は清香とアミに会う、二人はラッキーだった。
鞄に渡すつもりのスペイン旅行のお土産が入りっぱなしになっていたからだ。

「今日渡せるね」

「うん」

今日の花火大会が終われば
明日はいよいよ夏休み最後の一日となる
もうこれだけ面白かった夏休みも終わってしまう
夏の楽しかった想い出が二人の頭をよぎる

いつになく気合いの入る冬馬君に大喜

後ろから見てるきみ子と虎鮫代ちゃん

「気合い入ってるね」微笑むきみ子

「応援しよっ」と虎鮫代ちゃん

頷く多網 


プシュ~ 


ちなみにこれは屁だった。

いよいよ花火大会の時刻が近づく

夕暮れ時

「そろそろ出発しますよ」と多網ママ

今日は車じゃ混むので、電車移動だ。

緊張する冬馬君と大喜

「あーキャンプ以来だ」

「はやく会いたいね、会うまでがまた緊張する」と冬馬君

きみ子も「早く二人に会いたい」

今や、きみ子も二人の事を知ってるのが何だか嬉しかった。

「私もどんな子かはやく見たい、私より可愛いかなぁ」

うんっ

声には出さなかった。

「じゃあ出発」

「おーっ」

夏の冬馬君達の最後のイベント

花火大会がいよいよ始まる

一体冬馬君達は夏の夜空にどんな思い出の花火を打ち上げるのだろう?

清香とアミの待つ 花火大会へゴー!!





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