冬馬君の夏

だかずお

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『サーの夢』

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サーは怒っていた。

おや、今回もサーネタか!

仕事の帰り道電車の中

心の中

「部長もあんな言い方いちいちしなくても良いだろう頭にくるなぁ」

この日はサーもいつになく怒っている

「あーうざい、うざいなぁー」

ああ明日はせっかくの休みなのにずっとイライラしてそうだよ サーは憤っていた。

だいたい、言い方ってもんがあるだろう

もっと優しく気遣うようにさ。

もう一度言うが、サーは怒っていた。

こんなんじゃ、せっかくの休みが休みじゃなく悩みだよ。

ハァー

その日の夜

サーは考え事をし寝付けない。

頭の中はあーだ、こーだ、サーだ、フーッとため息をつき、またサーーッと息を吐く。

あーあーなんだかなぁーモヤモヤした気持ちが続く

明日は一日中ぐうすか寝てよう。

今日は眠れそうにないからね

ふーっ とならぬ、サーっと、ため息をつき、目をつむりながらあーだこーだ、サーだと言い悩んでいた。

さー

サー

ふーっ


サーっ



翌朝8時を過ぎた頃



ピンポーン

多網母が玄関へ

「どちら様ですかー?」

「おれ」

その声の主は多網

玄関を開けると

そこには、冬馬君に大喜も。

「こんちはー」

「あら、どうしたの?」

「冬馬家ばかり泊まってるから、今日はうちに泊まることにした、プチ旅行(多網にしては長いセリフ)」とニヤリ多網はほくそ笑む。

プチ旅行ってあんた自分家でしょうが。

ワクワクしている冬馬君に大喜

「どうぞ、あがってー」

「こないだのスペイン旅行楽しかったねー」とご機嫌多網ママ

「うん、楽しかったねー」

多網父ことサーは思う、やパイどこか連れてけとかそんな話にならなきゃいいが、今日は一日誰とも話さず寝ていたいんだい。

多網父は心の中、吠える。

サー サー サー サー。

昨日眠れなかったから今日は沢山眠るデーなんだ。
多網父は布団の上、再び目をつむる。

すると、ふすまが開き声が

「あっ、サーまだ寝てるね」

「せっかくどっか連れて行ってもらおうとしたのに」と大喜

「ふっ、タヌキ寝入りとみた」と多網が三たびほくそ笑む

我が子ながら見事、心の中サーは思ふ。

タヌキ寝入りは続く

「寝てるんじゃ可愛いそうだよ」と冬馬君

「じゃあ、向こう行こうか」大喜も部屋をでる

多網だけが、サーの周りをぐるぐるまわり、何故かくんくんくんくん鼻を動かしていた。

そして、ぶりッ!!

強烈な屁を顔面にこいて去る。

かーっ、我が子ながら見事、と、サーはまだ眠れることに喜んだ。

あーあ、一か月くらい休みが欲しいなぁ、大体どうして働かなきゃいけないんだ、と心の中ぐちるサー。

ようし、夢の中くらい良い夢みてやるーとニヤリ笑い行きごむサー

よし夢の中、今日は仕事場で部長を叱ってやる

サーよ夢の中でも、仕事行くんかい!!


ポワワワん


サーは夢を見ている

サーは職場のイス足をくんで、コーヒーを飲んでいる

味はブラックだ。
普段は砂糖とミルクをこれでもかと入れるが、今はブラックだ。

「わぁーサーさん渋い朝からブラックですかぁ」

「ふふっ、まあね」

すると部長が入る

いつもならこの時点で姿勢はピンとなり、緊張でビシッとするが今日は違う

「部長遅いじゃないか」

「すっ、すみません、サー様 あなたより遅く出社してしまうとは」

「ふっ、良いんだよ」

「ところであの書類は出来たかい部長?」

ここで、コーヒーを一口

もう一度言うが味はブラックだ。

「あっ、そのえーっと、サーさんブラック渋いですね」

「部長君は調子が良いな、コーヒーの味で話をそらすんではない」

「はっ、すいませんでしたあああっ」


ポワワワん


おおサーよなんちゅー夢だ、もっと良い夢あるだろうが。

サーは目覚めニンマリ笑う

あー起きちゃった、最高の夢だった。

さあて、まだまだ眠れるぞ、うししし。

幸せな男サー。

今度はどんな夢見ようかなぁ~

しかし、なかなか寝付けない。

ああ、この時間良いなぁ、時間よ止まれサー サー サー。

いつもあっと言う間に夕方になるんだもん。

したいことだけしてたいよと嘆くサー。

私の人生よいづこへ~~

ここじゃろい。

ああ、そうだ私は自由を求め、旅に出る冒険家、サーだ。

そして彼は夢をみる


ぽわわわん


サーはジャングルにいた。

「ふっ、ここが未開の地のジャングルか、俺はこうして道を切り開く サー」

サーは手でよっこらしょと木をどかした。

目の前には何故か壮大な大都会

おいっ、ジャングルは?

サーは腰に草で出来たパンツ一丁の姿

気分はそう、まさに ターザン ならぬ サーザン

「なんじゃ、この世界はビルが並んでる」

私は自分で道を切り開く男

サーは大都会に足を踏み入れた。

ここでも私は自分の道を切り開くのだ、私は偉大な冒険家

3日後、サーことサーザンはスーツをまとい

会社に通っていた。

「部長すいませんでしたーーーっ」

サーは起きた。

がはっ!!

僕はターザンにはなれないのか?

結局僕は会社づとめするんだ。

サーはふてくされた。

あーあ、夢の中でも会社に行ってらぁ、サーはそんな自分を思い笑った。

そんな時、部屋のふすまの先に見えたのは家族の姿

皆笑い合い台所で楽しそう

サーはその姿を見てニッコリ

いつまでも愚痴ってても始まらないかぁ。

さあて、明日からもまた、仕事頑張るか。

とここで、サーはハッと凄まじい表情を浮かべ固まった。


あっ



あっ







サー


サーはガッツポーズを決め飛び跳ねた。

忘れてた、明日も休み二連休じゃないか

ヒャッホーイ ほい ほーい

やはり幸せ者のサーだった。



ミーン ミン ミーン



夏のサーの一日。


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