冬馬君の夏

だかずお

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『サーとスーの旅夜はまだ続く』

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雷様は満足したのか去っていった。

雨は依然強し。

二人がようやく我にかえったのはあれから、10分後の事だった。

ザーッ ザーッ ガタガタ 風で揺れるガラス

夜の旅先での和室の時は続く。

「まだ、すごい雨だね」とけたみさんが言った。

「うん、でも雷様が去って良かった」

布団の上にごろん

「あー僕ら旅行に来てるんだ」

激しい雨が少し怖かった彼らだったが、少し楽しい気持ちもあった。

なんたって仲良い友と二人、旅行の夜
まるで、忘れていた青春時代に戻ったよう。

「ああ、なんか日々に追われ大事な気持ちを忘れてたみたいだ」
と多網父

「そうだね、仕事に追われ忘れてた」とけたみさんも頷く。

二人のこころに芽生えた気持ちそれは

生涯青春であった。

「考えたら、自分の気持ち次第なんだよなぁ」と多網父

「うん、本当そうだよ」

「毎日朝から晩まで仕事して、休みは疲れて眠るだけ、ああ僕達はロボットじゃないんだ」鼻息荒くとけたみさん。

「そうだ、好きなことして良いんだ」

二人は顔を見合わせテンションがあがっていた。

明後日くらいにはこの気持ちを忘れてなきゃいいが。

ザーッ ザーッ ザーッ
雨は依然強い。

「飲みなおそうか?」多網父が言う。

「そうしますか」

二人はテレビをつけた  が 、それが始まりであった。

気分も和み、和室に敷かれた布団の上に座り、飲みながら盛り上がっているところ。

夏恒例、怪奇番組がやり始めたのだ。

冬馬君達はこんな時、大盛りあがりである。

が、二人の大人は一瞬顔が引きつった ギョッギョッ。

すぐにとけたみさんはテレビチャンネルを変えようとしたが、こんなことを頭で考えた。

あっ、今いきなりチャンネル変えたら不自然すぎる。
タイミングを逃してしまった。

番組は流れる。

多網父は、すぐにでも敷かれた布団にくるまり中に入ろうと思った。

が直後、頭でこんなことを考えた。

はっ、今いきなり布団にもぐったら怖いから隠れた、モグラだと思われる。

誰もモグラとは思わんだろうが。

二人の顔は引きつっていた。


こんな時、雨が迫力を増して感じる


ザーッ ザーッ ザザザー


とけたみは自身を奮い立たせ、こんな事を言った。
「怪奇番組なんて、子供だましだよ」
ちっちが男根から0、2ミリほど噴出された気がした。

「あっはへ ふしゅー たったしかにね、こんなの怖がる大人いないんじゃない」

お前たちである。
笑い方が異様である。

あっはへ ふしゅー

とけたみさんと多網父は念じていた。
たったのむ、十分くらいで終わってくれ。

直後その番組の司会者は言った。
「今夜は二時間にわたってお送りする この番組」

あまりの驚きに二人の尻の穴から茶色の物質が噴出されるところだった。

しかし、ここで多網父にある閃きが走る そうだ!
こんなつまんない番組チャンネル変えようって言えば言いんだ。

が、とけたみは一心不乱に自分がどう見られるかだけを考えていた。
そして、男は自身の自画像を輝かせるべくこんな言葉を発してしまう。

「こーゆうのってさ、怖い人、理由つけてチャンネル変えようなんて言うんだろうね」
決まった、これで自分は勇気ある男。
幽霊なんぞこわがらない、自画像を描ききった。

チラッ チラっと多網父の反応をみた。
どうだ、俺すごいだろう!!

多網父は唖然としてる。

とけたみは思った。
よしっ、ストライク。

だが、多網父はまったく、とけたみさんのことなど、どうとも思っていなかった。
唖然としていたのは、この番組を二時間見なきゃならないのかー これであった。

ガーター



ザーッ ザーッ ザーッ


雨は強し、部屋の窓の外の景色は雨で見えない程だった。

二人の内心はこうだ。

怖いよ~ ママ~ ママ~

スネ夫か!!

番組は始まった。

「そう、この場所でよく目撃されるんです、その半透明の男が」

「なめーしゃー」

「いきすぎー」

なんぢゃ、この発言は。

二人は顔を見合わせた

「ハッ、えっ?」

「あはは、可愛らしい幽霊だね」
みたび言うが、顔は引きつっている。

何故か二人の座る位置はだんだん近づいていた。

ロマンティックに言うなら、お互いの距離は毎分ごとに、余計なものを溶かし、近づきつつあったであろうか。

どうでもいいわ!!


マッマー


ザーッ ザーッ サー スー

サー                 スー
サー             スー
サー      スー
サースー

これである。


多網父はまさかの事態に襲われていた。
こんな時に小便がしたくなったのだ。

と言っても部屋の中すぐ襖を開けて、部屋の入り口の扉の横にトイレはすぐあるのだが。
それすらも、彼にとっては怖いのだ。

ザーッ ザーッ ザーッ

今や二人は体裁を気にしてる余裕すら失っていた。

「あー寒い、寒い」真夏である。

布団を自分達の肩からかぶし、包まっている。

「今日冷えるよね?」

「うん、真冬だよ」

嘘つけ!!

テレビは流れる

「旅館の部屋に出る幽霊の話になっていた」

二人はそのタイトルに失禁しかけた。

「ここじゃないよね?」

「まっ、まさか」

勘ぐりぐり(笑)過ぎである。

突然、再現VTRに二人がこわ~いお化けの顔がどアップに。

「なむあみー」

「だぶつー」

すごい連携プレーである。

その時、多網父はとけたみさんの顔をみた、目をすごい力でつむり、顔中汗まみれの凄まじい友の姿であった。

まあ、自分も同じなのだが・・

だが、すぐにそんなのを一気に吹き飛ばす光景が自分の目にはいる

それは、とけたみさんの後ろに人の姿

「嘘つけーマッマー」

とけたみは見た、友がマッマーと叫び飛び跳ね、汗まみれになっている姿を。

が、自身も何故、友がこんな状態で恐怖してるのかすぐに分かることになる

誰か後ろにいる、振り返り。

「信じられない、マッマー」
涙と小便が同時に吹き出しそうになる

ついに彼らは見たのである、得体の知れない何かを。

が、ここで冷静な第三者の目線から一言言わせてもらう。
あんたらがびびってるそりゃ鏡である。

はひゅ、はひゅ はひゅ。
呼吸が乱れる二人

「なんだ、鏡か」と多網父

「あーもうっ、こんなもの発明するなよな」怒るとけたみ

めちゃくちゃである。


ザーッ ザーッ


多網父はもう限界に近い漏れそうなのである。

しかし、まさか友に一緒にトイレに来てくれとは言えない、しかもすぐ部屋のそこにある。

ええい、漏らすよりましだ。
多網父は勇気を振り絞り言った
「あっ、えっとさ とっ、トイレどこだっけ?」すごく、わざとらしかった。

とけたみはこの言葉に救われた、実はさっきっから、とけたみ自身にも小便緊急非難警報が発動されていたからである。

立ち上がり
「こっちだよ」

二人はトイレの前にお互いが終えるまで交互に立ち待っていた。
おっ、何て気遣い。
さすがに気持ちが分かったのではないか?見事な連携プレーであった。
まぁ、実はどっちも部屋で一人になるのが怖かっただけであるのだが。

しかし、このトイレにより二人に気合いが入る。
いつまでも、幽霊ごときに怖がっていちゃいけない。

「とけたみさん、残り電気消して観ようよ」

とけたみは一瞬ギョッとしたが
「分かった」と返事した。

あっ、マジかと意外な返事に多網父もギョッとしたが

電気を消した。

生きがり過ぎたか?


ザーッ ザーッ
「それでは、本日もっとも怖い恐怖映像をご覧ください」

この直後に表れた
二人の顔の表情はこう物語っていた。


しまった!!!!!!



さん


にー


いち


その時、奴はこのタイミングで戻って来た。


そう、雷野郎である


奴は言った「油断したなー」

恐怖映像とコラボ 雷サンダー

こやつ、どエス である


トゥと~ ピカッ ゴロゴロー


「あなはなやにらにやたならにたらやにたゆらかなやるかにやらなゆ~」

二人のすごいところは、このとっさの雷さんの攻撃にちゃんと金玉をおさまえてるところである。
素晴らしい防衛反応である。

雷は脳に直撃し。

二人は骸骨になってしまった。

残った骨はちゃんと股間を二体ともおさまえていたという。


ぽわわわ~ん。

「あっ、また気を失っていた?」

「恐怖映像と雷で意識が」

二人はお互いの姿を見て飛び跳ねた。

なんと、骸骨になってしまっていたからだ

「ぎゃー ぎゃー ぎゃー マッマー」

「僕が、骸骨になっちゃったー」

「こんなんで、こんなんで、こんなんで・・・・」

「どうやって、ボーリングやるのー」
そこかい、ちなみに声は見事にハモっていた。


ぽわわわーん。
二人は雷音の後、布団の上で気絶していたのだ。


直後雷さんは二人にゴメンちょっと驚かせ過ぎた と去って行きましたとさ。


めでたし、めでたし。




ちゃんちゃん。


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