冬馬君の夏

だかずお

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『旅館へGO 』

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「もう朝?」テントに注がれる朝日の光。
再び眠りについていた冬馬君は顔に当たる陽射しの眩しさで目を覚ました。
しかし、起きたくはない、このまま目を覚ましたら、もう清香達とお別れの時がやってくる。
ああ、寝たふりをしよう。
眠くはなかった、なにより清香達と別れるのが寂しい。
だから、再び目をつむった。
お願い、後一時間だけでも。

しかし遂にその時は来類似
「みんな起きてー」外から正子の声が。

ドキッ ついにこの時が、ああ、あっという間に終わってしまった気もする。
やはり、楽しみにしてた事が終わりに近づいてくると寂しくも感じた。

「もう朝か」目を覚ました大喜、何だか大喜も少し寂し気である。

「みんな、片付けて帰る支度するよ」

子供達はテントから出た。

「来た時良かったなぁ」とアミ

「帰りたくないなぁ」と大喜

鼻くそをほじる多網

「また、来年も来たいな」清香が言った。

「出番少ねえよ」とクマパン

おっ、お前もまだつぶやくか。

きみ子はとりあえず総括して、こいたブリブゥー。
司令塔きみ子、縦横無尽にパスならぬ屁をこいた。
キラーパス じゃなく キラー屁
って、なんじゃ~ なんじゃ~もんじゃ~

「でも本当に楽しかった」
冬馬君は何処までもひろがる真っ青な空を眺めた。

「この思い出をつくってくれた自然にも感謝だね」と清香

「確かに、森さんありがとう」
きみ子はにっこり笑った。

多網は何かに手を振っている
こっ怖いぞ多網、見ていた隆は思った。

「何だかゴミが沢山落ちてる」
周りを見渡しアミが言った。

その発言で子供達は川辺に落ちてる、ゴミをなんだか拾いたくなった。

「お世話になったから、拾ってあげよう」と子供達。

そんな様子を見ていた大人たちは微笑んでいた。
自然を大切にする子供達の姿勢が何だか嬉しかった。

きみ子は怒っている
「しゃー自分たちで持って来たゴミくらいちゃんと片付けろっつーの、最低限のマナーだろ」ブリッ。
そう言い こき放題のきみちゃん。

ハッ 目の前に自分が昨日捨てた、人魂花火の袋が・・・・

キョロキョロ辺りを見回して即ばれないようにゴミ袋に入れるきみ子であった。
ヒョイ ポイッ。
早技 名付けて秘技 きみポイ とでも呼ぼう。

鼻くそをほじり一部始終を見ていた多網 ブリッ。 
「へっ」

ゴミを拾った後は何だか自分の庭が綺麗になったようで嬉しかった。

「自然大切にしなきゃね」と清香

「うん」
何だか少し成長した気がした子供達であった。

テントも片付け終わり、いよいよ、もってお別れ近し。

「ああ、帰りはバラバラ寂しいな」清香の弟も寂しそう。

子供達はどことなく、静かだ。

その時だった。
「みんな、実は清香ちゃんの家族と話あって、せっかくだから一泊旅館でも泊まって帰ろうかってなったんだけど、どうだい?」隆は言った。

それを聞き
「ヒャッホー」
みんなは手を繋ぎ大喜び
そして、クネクネ踊り始める多網に、顔を真っ赤に「しゃー」叫び喜ぶきみ子
飛んで喜ぶ、清香とアミ
両手をあげ「やったー」清香弟
冬馬君と大喜はあまりの嬉しさに走りだしてしまった。

と言う事で、なんとまさかの一泊延長。

喜びにわく子供達だった。

「やったーやったーやったー たったー」

なんと、清香のお父さんの知り合いがここから車で一時間くらいの所に旅館をやっているらしく、安くするから是非泊まりにどうぞと言う話しみたいなのだ。

「最高~」

多網ときみ子は気が狂ったかの様に首を振り奇妙なダンスを始めてる。
それを見た清香弟が「ママ~」とビックリして逃げて行った。

清香達はそれ見て大笑い。
「そこの場所、露天風呂もあって静かな場所だし最高だよ」

「はひょ~ん」きみ子は飛び跳ねた。
もちろん冬馬君も大喜も多網もアミも

「すごーい」
みんな大ご機嫌。

こうして、終わったと思った。
キャンプは予想外の展開をみせ、まさかのもう一泊決定。

もう、嬉しすぎる冬馬君。
なんと、クマパンにまで感謝をしているではないか。

感謝されるのを想像すらしてなかった、クマパンはきっとこう言ったことだろう。

「あっ、そんなっ どうも照れるね」

「お山さーん、来年もまた来るね」
みんなは挨拶をして。

子供達はみんな一緒に乗れる広さの清香のうちの車の方に乗り込んだ。

「いざ、出発~」

「もう、帰るだけだと思ってたから、なんだか嬉しいね」清香が言った。

「うん、幸せすぎる」とアミ

冬馬君と大喜は何故か握手。

「しゃーしゃー最高」

ブウ~ン車は走る。

車の中は息を吹きかえした子供達の歌声が響く。

「旅行、旅行最高だーまだまだみんなで一緒に過ごせる~ わーい」

清香の両親もそんなご機嫌な子供達の歌声に癒される。
「はははっ、こっちまでワクワクしてくるね」

「確かに」と清香母も微笑む。

突然「バミューダトライアングル」
多網は細い目を更に細めほっぺを膨らませ変顔を浮かべた。

直視した、きみ子さん大爆笑
「ぶへへへ、何それバミューダトライアングルって」

「それなら私も、宮本武蔵」
いきなり作ったその顔はまさに言葉に表現出来ないすさまじいレベルの顔。
直視した多網は「ぶぶぶっ」必死にこらえていたが遂に吹き出した。

それにしても、突然宮本武蔵って。
さっきの変顔はもはや人外の者である。

突然多網は冬馬君の肩をたたいた
「変顔見せて」

うおっ、突然のムチャぶり、ええいっ、こうなったらやけだ。
えーっと、なにかを必死に考えた。

なんと出たのは
「ええいっ、 好い加減にしなさいよ好い加減にしなさいよ はやく、起きなさい」正子の真似だった。

あははは、みんな大爆笑。

清香の両親も大爆笑

車の中は賑やかだ。

車は走り続け、さっきまでの山景色は嘘みたい、だんだんと町の景色に変わり始めた。

「町の景色も何だか落ちつくなぁ」と冬馬君

「旅館楽しみ~」きみ子シャウト

「ひゃっほーい」再び叫びだす子供達。

車は高速道路をおり

「結構、色んなお店がある」とアミ

「あっ、お土産屋さん」と清香

「あっ、豚マン~」きみ子は唾をのんだ。
女の子達はきゃっきゃはしゃいでいる。

それを見てテンションのあがる、冬馬君と大喜。

鼻くそを外に放り出し黄昏れる多網。

「もうすぐ着くよ」

町を抜け、山道を少し昇ったところに旅館はあった。

「わー何だか、山に囲まれてて落ちつく」冬馬君が言った。

「結構大きな旅館」と大喜

ミーン ミン ミン ミーン
セミは歌っている。
ああ、夏だ 夏だ 夏休みなんだ。
旅館を前に気持ち高ぶる子供達。
太陽の陽射しが心ときめかせる。

すぐに後ろから、隆達の車も到着し

「わー、いいところですね」と隆

みんな車から降りたその時だった。

多網が「あれっ?」

「どしたの多網?」と近くにいた清香

「赤い洋服、おかっぱの女の子がいた」

「えっ、普通のお客さんじゃないの」とアミ

「もう、いない」

「えっ」少し興奮する冬馬君
みんながいるし、清香もいる何だかこんなシチュエーション少し格好つけたくなる気持ちのわく冬馬君であった。

旅館の玄関が開き、
「お待ちしておりました、いらっしゃい」清香のお父さんの知り合いの女将さんが出迎えてくれた。

「どうも、今日はよろしくお願いします」大人達は挨拶を交わしている。

ミーン ミーン ミン ミン

部屋に案内され
「わーっ結構ひろい」

二部屋かりて、子供達は清香達の家族の部屋にみんな入っていった。

「こら、あなた達はこっちにしなさい」と正子

「良いんですよ、せっかくだしみんな一緒がいいんですよ」とニッコリ清香母

「すみません、うるさかったら言って下さいね」

「はい」

部屋の中にも、ふた部屋あり、結構広いのだ。

「わーい和室だー」

またも、きみ子は畳をくんくん鼻でかぎはじめた。

「でたーっ、きみ子のこの光景、婆ちゃんちの冬休み旅行思いだす」と大喜。(冬馬君の冬休みより)

「まあ、着いたばっかりだし少し部屋でくつろごう」と清香父

ああ、旅先の部屋に入る瞬間なんともたまりません。
いつもとは違う景色と初めての部屋に心ワクワク。

子供達はさっそく和室でくつろぎ、テレビをつけた。
何と最高のタイミング、夏によくやる心霊番組特集

「やったーやった、やった」と冬馬君と大喜と多網

本当に好きねあんた達。
私は思ったった、この子達の休みと旅先、と言うか思い出の半分は怖い話なんじゃないかと。
まあ、いいか、九割じゃなきゃ 笑。

「ひゃあー旅先でこういう番組ワクワクするね」と冬馬君

多網はさっきのオカッパの女の子がどうも、幽霊だったのではないかと気になっている様、キョロキョロ部屋を見渡し 落ちつくためこいた ブーッ。

みんなは畳の部屋布団をかけ観ている。

「あー昨日の森の中と違って部屋の中だから少し安心して観れる」と清香

確かに。

「ここなら怖くないや」
清香弟もお母さんから離れてこっちに来た。

「じゃあ、温泉にでもさっそく行って来ようかな」と清香の両親達

「みんなはどうする?」

子供達はテレビに夢中。

「じゃ、いってくるね」と大人達はさっそく温泉に向かった。
弟も一緒にテレビに夢中だ。

旅先の和室、夏の怪奇番組に夢中な子供達。

ミーン ミン ミン ミン ミチャー
たまに蝉も鳴き間違えるようだ。
それにしても、ミチャーとは。
一体なにをどう間違えたのだろうか?
実はこの旅館、部屋にトイレはなくトイレは共同で廊下にあるのだ。

コマーシャル中、多網はさっそくトイレに向かう。
その時であった、廊下の角にあのオカッパ少女を見た。

ハッ!!!
この怪奇番組を見てる最中のタイミングの遭遇に一瞬
ハヒュ 息を吸うのと吐くのを間違えてしまった。
ゴフッ

多網はトイレにもいかず、部屋に戻った。

「あっ、多網トイレ近かった?」と大喜

「オカッパ出た」

「えっ? 」
それにしてもオカッパ出たって・・・

「また?」

みんなは怖がる

「ぎゃああああ~」
突然きみ子が叫んだ。

「どうしたのっ?」慌てる清香とアミ

「ママーッ」と清香の弟

きみ子の指差す先はテレビ
なんとテレビの再現VTRににオカッパの少女が映っている。

ひぃーいーっ

多網はますます怖くなっていった。

「しかし、多網よく この状況一人でトイレに行けたね、さすが」冬馬君が褒める。

こくりと頷く多網

って、おいっ!
行ったっけか?多網よ

冬馬君は思った。
こりゃ、夜はあまり飲み物飲むのよそう、まさかの夜中一人便所は間違いなく行けないだろう。
同じく大喜も同じ事を考えていた。

みんなは部屋でくつろぎながら再びテレビに夢中。

和室の部屋に布団を敷いて
あー旅先のこんな過ごし方が好きさ。
みんなは怖がりながら楽しんで観ている。

大喜は布団の中に包まった。

多網もすぐさま真似をして、布団に包まった。
あの少女はお化けに違いない。
ガタガタガタ

「あー布団があるから安心して怖い番組観れる屋根もあるし、はははっ」
大喜は布団から顔を出しニッコリ笑った。

その時だった。
トントン
部屋のドアを叩く音。
子供達はギョッとし、静まりかえる。
「パパ達かな?鍵忘れたのかな?」
清香はドアのほうを見た。

トントン トンッ。

勇気を振り絞り冬馬君は立ち上がった。清香の前ではカッコつける勇気が湧くのだ。

「誰ですか?」
外を覗くとなんとっ、誰もいないではないか。

「ひぃー」
急いでみんなのところに行き布団にもぐった。

「えっ、どうしたの?」ときみ子

「そっ、そとに誰もいない」

その言葉にみんなはいっせいに布団にもぐりだす。

「こわいよー」

多網は言った「オカッパの祟り」

どんな祟りだとつっこみたくなるが、みんなはこわがっている

「えっ、てことはまさか多網の言うオカッパさんは本当に幽霊?」

「ひいいいいいっ」

「マッマー」ちなみにどうでもいいが弟の声は二たび裏返った。

トントンッ

「まっ、まただ」とアミ

実はこの時、外では隣の部屋のお客さんが部屋を間違えていた。
「あれーおかしいなここじゃなかったか、あっあっちだ」

もう誰も布団から出て確認するものはいなかった。

ブルブルブル

そんな中、「でもさ、そのオカッパさん幽霊でも仲良くなれるかも」と冬馬君

「そっ、そうか幽霊が怖いって思ってるのは私たちだけで、本当は優しいかも」ときみ子

「そうだね、出て来たら仲良くなればいい」大喜が言う。

「ねぇ、みんなあれ見て」清香が指差す

「えっ?」

視線の先、部屋の隅っこだったので気づかないでいたが。
なんと日本人形
しかも、オカッパ。

「オカッパの祟り」
多網は布団にもぐった。

「ひぃぃいいいぃっ」
みんなも一斉にもぐった。

日本人形もビックリである、そんなに怖がらなくたって。
ちょっと髪の毛のばすくらいいいじゃない、私も女よ。
それにオカッパ可愛らしいじゃない、もう最近の子は。

この時、きみ子に異変が。
やっ、やべーうんち漏れそう。
ダイレクトに下品なきみちゃん。
まっ、まじかこんな時に、まっまさか、トイレまで一緒に来てなんて言えない。
きみ子はこらえた。
あーくそしてぇ
ケツに力を入れ引き締めた。
「ぬおおぉぉぉっ」

しゃーきみファイ きみファイ
心の中、たたかうきみ子。
しかし、実は多網も、限界だった。

テレビは容赦なく怖い映像を映した。
「ぎゃーこりゃあ怖い」と大喜

ますますトイレに行けなくなる。
きみ子は思った。
いっそのことここでするか?
いや、いかん いかん いかん。
お漏らしはしない。
その時ハッと気づいた。
多網のあの歯を喰いしばる顔、まさかさっきトイレ行ってないんじゃないか?

その時アミが
「お手洗い行きたくなっちゃった」

すかさず立ち上がるきみ子
「私がついて行ってあげる」

「さすが、きみちゃん」と清香

まさか、自分がしたかっただけとは誰も思わず。

二人が部屋を出た時、何故か後ろにくっついて行く多網を見て、
冬馬君と大喜は思った。
ああ、多網さっき行かなかったんだと。

「きみちゃん怖くないの?」

「全然、おかっぱの幽霊なんて私にとってはコンニャクよ」

一体どういう例えだ。

女子トイレに着き、アミの後にきみ子はトイレを使う為、待っていた。
あー漏れそうや、と心の中唸っている

「ありがとうきみちゃん、もう大丈夫」とアミが出て来た。

「わっ、わたしもつかう」

「私、先帰ってて怖くない?」

えっ、まじかー待てや~待っててや~
しかし、きみ子のプライドが怖いから待っててなどと抜かすのを許すはずがない。

「あっ、あははうん」
バカーっきみのバカーっ
私一人じゃない、ヤバイやばいわ。
ええいっ、怖い事を考えるな、楽しい事を考えるんだ、きみちゃん。
ええいっ、面白い事、面白い事
自分のケツから飛び出した三匹の可愛いうんにょちゃんが手を繋いで踊っている映像、
きみ子はキャッキャ笑った。
だが、髪の毛は?と想像したらオカッパになってしまった。
ウンコのオカッパって~
そこから連想して出たのはオカッパの人形の顔。
「ひぎゃあ」
もはや、目をつむっていた。
こういう時に限って、さっきのテレビのお化けの顔を思い出してしまう。
「あわわわわ」
もはや糞どころではない。

隣の男子トイレでは、そっこう用をすませた多網が全速力で逃げるようにトイレから駆け出した。
目をつむっていたので、壁にぶつかった。

ドンッ ドドンッ パー

「ひょおおおおーっ」
あまりの驚きに身体がいったん浮いたきみ子

その声に驚いた多網が
「ひゃあああ、オカッパ出た~」

それを大便最中に耳にしたきみ子
「どひへぇー」
ケツ丸出しでトイレから駆け出した。

二匹の猿は廊下の端っこまで逃げたとさ。

部屋では
「さすがきみちゃんだね、全然怖くないみたい」とトイレから戻ったアミ

しかし、冬馬君は確かに聞いた。
隣に居た大喜もだった。

きみ子の悲鳴を。
ああ、きっと怖かったんだと思った
冬馬君と大喜であった。

ミーン ミン ミン

冷房の効いた部屋でくつろぐ子供達
「みんなで、旅行来れて良かったね」清香が言う。

「うん、本当に最高」
清香の笑顔に胸がドキドキした冬馬君
やっぱり、僕は清香が好きだ。
胸のドキドキは止まらなかった。
すべてが愛おしく見える。
ああ、いつまでもずっと一緒にいたい。

多網達はやっと戻って来た。
「ハァハァ」
どうやらずっと走っていたよう。

「どうしたの?」とアミ

「あはは、ちょ、ちょっと運動」とごまかした きみ子であった。

もう、怖い番組は終わっていた。

しばらくして、清香の両親が部屋に戻って来る
「あー、いいお湯だったよ」

「お庭に綺麗な花が沢山咲いていて綺麗よ」と清香の母

「わぁー見に行こう」清香は立ち上がった。

「僕らも行こう」と冬馬君

すぐさま、みんな廊下に出た。

多網が廊下を歩いていると袖を何ものかが引っ張った。
ビックリして振り返ると、きみ子であった。

「ねぇ、今こそチャンス名づけて二人っきり作戦、あの二組を良いムードにして盛り上げてあげよう」

多網はニンマリ笑い頷いた。

ここから、多網ときみ子の恋愛成就大作戦が始まった。
果たしてどうなることや。



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