冬馬君の夏

だかずお

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『大人のため息』

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夜みんなは眠りについていた。

夜中に目が覚めた冬馬君 
悩み事なんかを考える時がある
学校のクラスメイトなどに言われた、些細な一言 自分のことなどを考えたり、悩んだりするのだ。

些細なこと、自分でもたまに何に悩んでるのか分からなくなるようなことなのだが。

目をひらくと、そこはまだ、とけたみさんの家

少し不思議な気持ちになった。
見慣れない新鮮な所

トイレにでも行くか

みんなは眠っている

部屋を出て

トイレにあかりがついている

中から

ハァ~

小さな溜め息ひとつ

出てきたのは スーだった。

「うぎゃああっ」

いきなり目の前に人影を見たスーはビックリしてずっこけた。

「あっ、冬馬君か ビックリしたー」

苦笑いして、トイレに入った

とけたみさん 溜め息ついてたな
勝手に思ったことは、祭りの仕事中に言われたことなどを気にしたりしてるのかなぁ、と考えた。
気持ち分かるなぁ 冬馬君は思う。

トイレから出るとリビングの明かりがついている、テレビの音もきこえた。

ちょっとのぞいてみよう

ヒョイと部屋をのぞいた冬馬君

「うぎゃああっ」

いきなり、廊下から顔が出たのを見た、スーこと、とけたみさんは再びずっこけた。

「ビックリしたぁ、やるなぁ~もー」

別になにもしていないが

「まだ、起きてるの?」と冬馬君

「うん、少しだけね、こんな夜中に目覚めちゃったの?」

「うん」

「そうだ、これ一緒に食べようか」

それはチョコレートだった

「ありがとう」

二人はテレビを観ながらチョコレートを食べている

パリッ パリッ
夜中に静かな部屋で響き渡るチョコレートの割れる音とテレビから流れる音声

その時、すかさず言った
「さっき、溜め息ついてましたね」

「なんだぁ、きいてたの」と苦笑いのとけたみさん。

「やっぱり、仕事で怒られたり 人から、馬鹿にされたり、したらハァーってなっちゃって」

「分かります」

「自分はどうして、人並みに出来ないのか、なんてね それに恥ずかしいとこをみんなに見られちゃったしね」

なんだか冬馬君は自分を見てる気がした。

とけたみさんはチョコレートを口にほうりこんだ。

テレビを観ながらしゃべる とけたみさんだが、テレビは観ていないように見えた。

大人にも悩みはあるんだなぁ、子供ながらに思った。

「まっ、こんなこといつまでも考えていたってねしょうがないから、とけたみファイトって言って笑いとばすんだよ、いつも」

そんなとけたみさんを見て冬馬君は言った

「怒られても、バカにされても一生懸命にやってる とけたみさん 格好良かったですよ」

「えっ、 あっ ありがとう」
とけたみさんは心から嬉しそうな笑みを浮かべ ぺこりと頭を下げた。

「じゃ、おやすみなさい」

「うん、おやすみなさい」

とけたみさんは優しい人だった。

部屋を出た冬馬君
ふと、礼を言い忘れたと思い

「あっ、チョコレートありがとうございました」

「ぎゃああっ」

また、ずっこけた とけたみだった。

みんな、人それぞれ悩みを抱えてるんだなぁ、あはは そんな自分も笑いとばそう。

冬休みの爺ちゃんの言葉が頭に浮かんだ 泣いたり、笑ったり、悩んだり、怒ったり 生きてるんだ
それも、またよし。 

なんだか、気持ちが軽くなって部屋に戻った冬馬君だった。

リビングでは

「僕はかっこいいのか」

ひとりつぶやき笑うとけたみさんこと
スーがいた。


今日の祭りが楽しみだ。



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